映画レビュー1522 『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』

これも結構評判が良かったのでどこかのタイミングで観たいなと思ってました。
タイミング…そう、それは配信終了。

アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

I, Tonya
監督
脚本

スティーヴン・ロジャース

出演
音楽
公開

2018年1月19日 アメリカ

上映時間

121分

製作国

アメリカ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

ひどさを笑いに変えて。

8.5
ナンシー・ケリガン襲撃事件でおなじみのフィギュアスケート米五輪代表、トーニャ・ハーディングの半生
  • 毒親から毒夫、毒を渡り歩いた結果待っていた転落人生
  • 当事者みんなバカすぎる上に図抜けたバカがいたおかげでこうなった系
  • 「この通り」なら本人は気の毒と思うものの真に受けるのも危険な様子
  • 映画としての出来はお見事

あらすじ

評判通り、確かにかなり面白い映画でしたが、話を聞く限りあくまで創作として楽しむのがいいのかもしれません。

「本人の弁によると」との但し書きがついた上で、“当事者インタビュー”の形で振り返るトーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)の半生。
元々スケートの才能はあったらしく、母(アリソン・ジャネイ)によって受け入れ未満の年齢から強引にスケート教室にねじ込まれ順調に才能を開花させていったトーニャはフィギュアスケートの選手として様々な大会に出場しますが、家が裕福ではないために自作の衣装で臨んだりしていて評判は芳しくありません。
優しかった父は母との諍いによって出ていってしまい、残ったのは毒親の母のみ。
暴言に耐えられなくなったトーニャは人生初めてのデート相手であるジェフ(セバスチャン・スタン)と交際を重ね、そのままゴールインするも今度はジェフが毒夫と化して心休まるときがありません。
それでも成績を残していったトーニャ、やがてオリンピック代表選手に選ばれますが…あとはご覧ください。

笑っちゃ悪いと思いつつ

当時、ライバルだったナンシー・ケリガンを襲撃したこの事件、日本でも結構な騒ぎになっていたのは僕もおぼろげながら覚えています。
劇中で「ひどいことにトーニャ自身が襲撃したと勘違いしてる人間もいる」というセリフが出てくるシーンがあるんですが、僕はまさにそれでした。「えっ、違うんだ」みたいな。
その程度の認識だったので、事件そのものは知っていてもいろいろと新鮮(そもそもトーニャ・ハーディングがどういう人かも知らないから当たり前なんだけど)な点もあり、非常に面白かったです。
言葉は悪いですが「ダメな人の半生を面白おかしく描いた」感じの映画で、我ながら性格悪いなと思いつつも遠い人の話なので笑いながら観られましたが、しかし当事者としてはなかなかしんどい話ではありますね。トーニャにしても、ナンシーにしても。(ちなみにナンシーはほとんど出てきません)

オープニングはやさぐれたトーニャ(に扮するマーゴット・ロビー)がインタビュー形式で語り始めるんですが、あまりにもやさぐれているのでマーゴット・ロビーと気付かず「あ、本人のインタビューも織り交ぜて作っていく感じの映画か〜」と思いましたが全然違いました。
その後登場する夫役のセバスチャン・スタンもまったく印象と違う雰囲気なのでまるで気付きませんでしたが、そのせいか妙にリアルに見えたのが良かったのかもしれません。ちょび髭のセバスタ、完全にフレディ・マーキュリーだったし。
最初に書いた通り、一応「本人の証言に則った内容」として展開する話なので、事実はどうかわかりませんがだいぶトーニャが被害者寄りに描かれているのが印象的でした。
ただWikipediaによれば「リレハンメル五輪当時から現場でハーディングを取材してきたアメリカのベテラン記者たちの間では、本作で描かれているハーディングは彼女本人を知らない第三者が創り上げた虚像だという批判的な声が圧倒的である」とのことなので、まあやっぱり実際のところは起こるべくして起きた事件なんでしょう。きっと。
なのであくまで創作寄りの実話系として観るのがいいんでしょうが、そういうスタンスだからかなおさら描き方が軽快で面白く仕上げているので映画としては観やすいし、「コメディ不幸ドラマ」みたいな感じで楽しめます。他人の人生を笑っていいのか問題にも悩まされつつですが…。

問題の事件についての顛末は観てもらうとして、その事件のキーマンとも言える夫ジェフ(セバスタ)の親友であるショーン、彼のバカっぷりは創作でもなかなか見ないレベルのもので、これは正直一見の価値があるでしょう。
身近にいたら本当に迷惑極まりない人間ですが、こうして問題を起こした人間として見せられる分にはたまらないものがあります。
しかも「言うて彼も大げさに創作したキャラなんでしょ」と思うんですがところがどっこい、そうでもなさそうという“証拠”の映像も出てきてこれまたたまりません。めっちゃ笑った。
いやーほんと、友達選びって大事だよねと…。

人生は高難易度

正直大して頭を使うタイプの映画でもないので、気楽な映画が観たいときに選べる良質な一本って感じでしょうか。
事件そのものやトーニャ・ハーディングを知らない人でも十分に楽しめると思います。オリンピックも絡んでることだし。
毒親や毒夫の問題はいろいろ考えさせられる点もありますが、それはそれとしてやっぱり強烈なのは「よくつるむ友達」の方。
これがすべて事実ではないと前置きも考慮に入れつつ、それでもやっぱり「自分ではなくパートナーの友人」がこうもバカだとここまでひどい事態に陥るんだなというのはある意味で良い教訓です。
もちろん大体の人はパートナーの友人まで関与できるはずもないので「わかったところで」という話ではあるんですが、自分が(映画で描かれるままの)トーニャだったとしたら、どうしたら良かったのか考えちゃいますよね、これは…。
まーでもこれで夫が素晴らしい人であればそれこそ回避不能ですが、ダメな夫とわかっていた以上はさっぱり別れるべきだったんでしょう。
それができない辺り、(失礼ですが)アメリカの田舎の下層あるあるっぽい感じがしてそこも印象的でした。
難しいですね、人生。

このシーンがイイ!

ジェフを置いて家を出ていってそのまま道路に流れて引いていくカメラワークがすごく良かった。
あとはやっぱりラストシーンの対比。残酷すぎて見事でした。

ココが○

あんまり中だるみとか飽きる部分がなく、テンポよく見せてくれる点で地力のある映画だと思います。普通に面白いというか。

ココが×

果たして事実に近いのかと言うと、そこはもちろんわかりませんが「そうでもなさそう」なのも確かなので、あくまで娯楽として楽しむ程度に留めておいて「これが事件の真相だ!」みたいに思っちゃわない方が良さそうではあります。

MVA

観る前はマーゴット・ロビーもよくこんな人の役やるなーと思ってましたが、だいぶ無垢なキャラクターになっているのでなんか納得しました。これならやれる、みたいな。
あまりにもバカなショーン役のポール・ウォルター・ハウザーにしたいところですが、でも演技的にはこの人なのかなと思います。

アリソン・ジャネイ(ラヴォナ・ゴールデン役)

トーニャの母。毒親。
まーすごかったですね。強烈で。実際にいそうなリアリティもあって。
さぞや評価されたんだろう…と思って調べたらびっくり、アカデミー賞助演女優賞とってました。すごい。
納得ですね。本当に強烈でした。

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