映画レビュー1523 『ハゲタカ』
今回も配信終了系ですが、母親からドラマの「ハゲタカ」が面白かったのよぉ〜と何百回と聞かされてきた記憶があるので一度観たいと思ってました、こちらの映画。
ハゲタカ

ハゲタカなのに人情味盛り込んできて草、みたいな。
- ドラマの4年後が舞台、ドラマ未見でも概ね問題無し
- 金融業界から資本主義の危うさを眺めるシナリオは今観ても古さを感じないが…
- 後半無理くり現実と重ね合わせる強引さと、いかにもな人情味を盛り込んでくる感じがつくづく残念
- 今ひとつ詰めが足りない印象
あらすじ
この手の映画は好きなので結構期待していたんですが、かなりがっかり寄りの作りでがっかりしました。(がっかり)
日本の技術を盗もうと画策する中国政府の手先のファンド・CLICのさらに手先のファンド「ブルー・ウォール・パートナーズ」代表の劉一華(玉山鉄二)は、日本有数の自動車メーカー「アカマ自動車」のTOBを発表。
アカマ自動車社長の古谷(遠藤憲一)は、筆頭株主でもあるMGS銀行の頭取・飯島(中尾彬)とともにかつて外資系投資ファンドで日本の企業を次々と買い叩いた“ハゲタカ”こと天才ファンドマネージャー・鷲津(大森南朋)にホワイトナイトとしてアカマ自動車を守るよう要請。
引き受けた鷲津は限界までTOB価格を上げ対抗するも無尽蔵な資金力を持つ劉に対しなすすべもなく、アカマ自動車の敵対的買収は防ぎようがないように思われましたが…あとはご覧ください。
最後のがっかり感がなかなかのもの
ドラマ版「ハゲタカ」は未見です。
そもそもそのドラマ版がかなりの高い評価を受けたために映画化を、ということで作られた映画のようです。
ただ一部人間関係に不明な点はありましたが、物語を理解する上ではドラマ版未履修でもあまり問題はないように感じました。
かつて日本を(おそらく悪い印象とともに)席巻し、様々な企業を買い叩いてマネーゲームを繰り広げた天才ファンドマネージャーが「死んだ」と噂されるほどに突如として表舞台から姿を消したものの、かつての上司に請われて帰国、今度は救う側(ホワイトナイト)として表舞台に戻って来る…というお話。
全体通して決して難しい内容ではないですが、そんな感じで「ファンドマネージャー」やら「TOB」やら「ホワイトナイト」やらの用語が普通に飛び交うので、この辺りの言葉の意味がわからないと結構しんどいだろうなとは思います。
時代的にどう考えても「村上ファンド」のような「物言う株主」的な経済ニュースを下地に作られたことは間違いないと思われ、その辺りをリアルタイムで観ていた僕辺りの世代は懐かしさとともに内容を理解しやすい面があると思いますが、そこに触れていない層は意外と難しかったり興味を持てなかったりするのかもしれません。
あとライブドア事件とかね。良し悪しは別として、あの頃が国民の経済関係の知識を一気に引き上げた時期だったことは間違いないでしょう。
どことなく全体の雰囲気も“あの頃”のマネーゲーム的な雰囲気をまとっていて、初めて観るのになんだか懐かしさを覚えるような不思議な映画ではありました。
ドラマ版がどうだったのか観ていないだけになんとも言えないところではありますが、ことこの映画版に関して言えば、前半はいかにもな経済ゲームで興味深く観られたものの、後半になって取ってつけたように「経済映画らしく」サブプライムローン問題が急に物語に結びつけられひどく強引な展開に見えたのと、終盤これまた急にウェットになって人情味が爆発してくる感じがどうにも好きになれませんでした。劉の顛末なんて「なんだこれ」って言っちゃいましたからね。思わず。
経済映画だからこそもっとドライでサラッとしていていいと思うんですが、なーんか「最後は人間味を出したい」みたいなよくあるパターンで、おまけにかなり無理がある(ように見える)雑展開で短絡的に見えてしまい、非常にがっかりしました。
もっとも僕が好きな経済映画の筆頭である「マージン・コール」もなんだかんだ主人公が犬を埋葬するシーンでしんみり終わるだけに、単純に「その映画が好きか否か」で文句を言っている可能性も否めません。
にしてもなぁ…さすがにあの最後は「こうしちゃえばわかりやすいしいいでしょ」みたいな短絡的な流れに見えちゃってがっかりだったんですよねぇ…。
要は直接的にこの映画の問題ではないですが、数多の映画において「ヒールはこうしろ」みたいなフォーマットを散々見せられてきているので「この映画もこれか」みたいな飽き飽き感が出てしまったのも確かで、その枠に収まった内容の時点でもう一つ評価できないと感じてしまうのはありそうです。
その辺考慮してもなお少し人情に寄りすぎな印象もあるし、結局「イマイチ」というのが結論になります。
どうせ観るならアメリカ映画でいい
社会が「(うんざり的に)変わってねーなー」みたいな面も確認できるので、決して今観るのが悪い映画というわけでもないんですが、ただ正直わざわざ観るほど光るものがあるわけでもないかなとも思います。
せめて前半の流れでそのまま真摯に進んでくれればまだ良かったんですが、やっぱり無理やりサブプライムローンに絡ませていったのと余計な人情味のせいで興味を失っていったよ、という感じ。
邦画としてこういう映画が作られたことに意味があるのも重々承知はしていますが、それを踏まえた上でもどうしても“本場”のアメリカの方が質も量も上だと思うので、どうせ観るならそっちでいいんじゃないと元も子もないことを言って終了です。
このシーンがイイ!
お金拾うシーンはいろいろ考えさせられて良かったですね。
ココが○
不満は大きいんですがただ邦画でこの手の経済映画はなかなか貴重だし何なら“走り”ぐらいの感覚なので、その意味では功績は大きいのではないかと思います。(適当に言ってます)
ココが×
劉の扱いが一番。雑すぎる。
MVA
これまた邦画らしく大げさな演技を見せる人も多く、そこも結構微妙だなと思いつつ。
大森南朋はかつて友達に「似てない?」と言われたことがあるのでシンパシーを感じるんですが、それはさておきこの方にします。
柴田恭兵(芝野健夫役)
鷲津のかつての上司で、現アカマ自動車役員。
柴田恭兵と言えばあぶない刑事の印象しかなかったんですが、こんな抑えめのいい演技するんだ、って結構びっくりしました。とても良かった。
あと脇も脇ですが“怪優”のイメージが強い嶋田久作も非常に良かったです。自然で。
やっぱり自然な演技をしてくれる人がいいですね。日本の俳優はなかなかそういう人がいない気がする。俳優の問題なのか演出の問題なのかはわかりませんが…。


