映画レビュー1386 『ソルフェリーノの戦い』
JAIHO終了間際シリーズ。と思ったら終わった直後にまた配信始まりやがんの。最近こんなのばっかだな…!
ソルフェリーノの戦い
ジュスティーヌ・トリエ
ジュスティーヌ・トリエ
レティシア・ドッシュ
ヴァンサン・マケーニュ
アルチュール・アラリ
ビルジル・ベルニエ
マルク=アントワーヌ・ボージョワ
2013年9月18日 フランス
98分
フランス
JAIHO(Fire TV Stick・TV)

観てて疲れるぐらい映画のエネルギーがすごい。
- 娘2人をベビーシッターに預けて取材へ出かける母、しかし不在中に忍び寄る元夫の影…!
- 強引に入ってきた夫に困り果てたシッターはなんだかんだで母の元へ娘たちを連れて行くが…
- 国の一大事の裏で進行する家の一大事
- リアルでカオスな“らしい”フランス映画
あらすじ
一応ジャンルとしてはコメディなんですがゲラゲラ笑うようなシーンはまるでなく、笑うとしても大体苦笑、って感じで「面白い」と言いづらい面はあるんですが、でもなんだか妙にリアルでなかなか良かったです。
大統領選開票直前、それぞれの陣営の支持者たちが大挙して大通りを占拠し結果を見守る様を取材するため、現地へ向かうテレビジャーナリストのレティシア(レティシア・ドッシュ)は頼りないベビーシッターくんに2人の娘を預け、「絶対に父親と会わせないで」と言伝して現地へ。
しかしそれは当然フラグとなり、階下から電話をかけまくってくる娘たちの父親でレティシアの元夫・ヴァンサン(ヴァンサン・マケーニュ)。結局根負けしてしまったシッターくんは彼を家に招き入れてしまい、レティシアから「問題が起きたら連絡するように」言われていた下の階に住む住人を呼んですったもんだの末になんとかヴァンサンを撃退します。住人にとってはいい迷惑すぎる…!
その辺の顛末をレティシアに報告したところ「ここ(取材先)に娘たちを連れてきて」と言われたシッターくん、人でごった返す現地に向かいます。
しかしそこにはヴァンサンの姿もあり…! あとはご覧ください。
どっちもどっち
タイトルの「ソルフェリーノの戦い」とは、本来は1859年に行われた第二次イタリア独立戦争における戦いのことだそうです。その有名な戦いに大統領選挙、そして家のバトルをなぞらえて…仰々しさでちょっと呆れ感をまぶしたようなタイトルって感じですね。
劇中登場する国の一大事に熱狂する国民たち、ちょっと羨ましい気持ちもありますがそれはそれとして「もっと身近な問題」が同時進行していくカオスな状況を追っていくお話です。
やたらエキストラ多いな…! と驚いたんですがなんとこれは実際に大統領選開票当日にゲリラ撮影されたそうで、それ大丈夫なの? と思いつつその説得力には舌を巻きますね。日本もフランスのように国民がここまで政治に熱心ならもうちょっと(政治が)マシな国になっていると思うんですが…。
それはさておき、これだけの人でごった返す現地に幼い娘を連れてくるのはさすがにまずいのでは…? と思うわけですが、実際それを目撃した元夫・ヴァンサンからはその点を猛烈に責められることになります。
で、まあその一点からもわかる通り、最初は主人公のレティシア目線で「ヴァンサンきついわー」と同情的に観ていくんですが、徐々に「いやレティシアも大概やで」と“どっちもどっち”感が強まってきた頃から段々(いい意味で)うんざりしてきます。どいつもこいつもろくでもねぇなと。
さらにその後、ヴァンサンが助っ人として(弁護士ではないけど)弁護士事務所で働いている友だちを「弁護士」として同席させるんですが、彼も彼でまともなようで絶妙にポンコツ(そもそも弁護士じゃないのに弁護士のフリして来てる時点でヤバい)なので、もう本当にろくな人間が出てこない。
唯一シッターくんだけは頼りないものの人間的にはまだまともに見えました。まだ。
あとは本当に曲強我強(クセツヨガツヨ)の自分勝手人間ばっかり。で、そいつらが基本的にずっと言い争いを繰り返しているシーンが続くのでまー疲れる。こっちもなんだかカッカしてきちゃう。
それだけリアルで放射されるエネルギーが強い映画、ってことなんでしょうね。いかにもヨーロッパの映画らしくややドキュメンタリーっぽいあまり脚色感を感じさせない撮り方も多分に影響しているような気がします。
日本人はこういう我の強さを押し出しての喧嘩ってあんまりしない気がするので、この辺もお国柄が表れている気がして面白い。もしかしたら政治への興味と我の強さは比例するのかもしれません…。
創作とは言えそういう慣れていない「俺が俺が」のまったく話し合いにならない喧嘩を延々と観させられるのは本当に疲弊するんですが、まさに「夫婦喧嘩は犬も食わない」のことわざ通りなのか…ヴァンサンフレンズが老犬を連れてやってくるのもなにやら皮肉めいてますね。
最も関係がなく最も健気で最も被害者であるのが犬という構図。老犬だけにそっとしておいてあげてよ…と思うんですが、とは言え彼(彼女?)の存在が唯一の癒やしだったのも確かです。やっぱり犬っていいよね…。
人間の愚かさよ
ヴァンサンは過去に問題を起こしてはいるものの、娘への愛情は本物っぽいのが良かったですね。そうでないとまったく違う話になっちゃうけど。
それだけによりレティシアの立ち居振る舞いが気になりだすのも含め、2人の間で揺れ動く(やがて見放す)観客の操作が上手い映画だなと思います。
かと言ってヴァンサンが良いかと言えば当然そうはならず、やっぱり結局どっちもどっちでひどい。娘ちゃんたち(と完全に無関係な犬)かわいそうだ…。
でも喧嘩の仕方は別としてもこういう人たちは普通にいるし、それも考えるとすごく大きな目線で「ニンゲン…」と人間の愚かさに思いを至らせずにはいられません。
それだけ良く出来てる…のかな? なんとも評価が難しい話ではありますが、これはこれとして味のある映画だなと思います。
このシーンがイイ!
特にここ、っていうのは無かったんですが、どうでもいいポイントとして最初に着替えたレティシアがスクール水着みたいな服にズボンだけ履いて仕事に向かう姿は衝撃的でした。パッと見は別におかしくもないんだけど、中そんな格好なの…? って。しかもテレビ出る人なのに。
ココが○
やっぱりこういう一般人のありきたりでリアルな喧嘩を描かせたらすごく上手だなと思います。ヨーロッパの映画って。
アメリカ映画だともっと面白いだろうけどもっと創作っぽくなりそうな気がする。なんとなく。
ココが×
「すげー面白かった」みたいな映画にはならないと思うので、感想的には地味になりがち。きっとスルメ系ですね。
MVA
皆さんリアルでしたがこの人かなぁ。
ヴァンサン・マケーニュ(ヴァンサン役)
元夫。絶対ダメ人間だけど娘への愛は本物。
なかなか強烈な落ち武者フェイスなので「この人見たことあるな!」と思ったら「セラヴィ!」に出てた人でした。あの映画でもダメ人間でした。ダメ人間専門なんでしょうか。(ひどい)
本当にこういう人なんじゃないか感がすごかったですね。生々しくて。絶妙にイライラさせてくる。時折上から目線が入るのもすごくイライラするし上手い。まさに個性派、って感じですね。


