映画レビュー0589 『ライフ・イズ・ビューティフル』
タイトル的にはかなり有名な映画だと思いますが、ようやく初鑑賞。思っていたのとはまったく違う内容でしたが…。
ライフ・イズ・ビューティフル
前フリ長すぎ&ご都合主義的。
もっと人生讃歌でハッピーなヒューマンドラマを想像してたんですが、実際はかなり暗い状況の中で希望を失わずに家族を守る男のお話でした。一応ヒューマンドラマではあるんですが、実際のところは一般人が主役の戦争映画と言えます。「バティニョールおじさん」みたいな感じでしょうか。
主人公のユダヤ系イタリア人のグイドはまさに口から生まれてきたような男で、善良な市民ではあるものの、嘘で人を煙に巻いては自分のペースに引きずり込むような、詐欺師が最も似合いそうな軽い男。当然ながら口がうまいので、出会った女性・ドーラも彼の話術に次第に惹かれていき、婚約者がいたにもかかわらず、家柄も良くないと思しきグイドのもとに嫁ぎます。
やがて時は流れ、息子と3人で幸せに暮らしていたのも束の間、グイドファミリーはユダヤ人強制連行の対象とされ、一家全員強制収容所に送り込まれますが、そこで駄々をこねる息子に対し、グイドは「これはゲームだ」と言葉巧みに励まし、なんとか生きて帰ろうとがんばっていく…というお話です。
が、ここまで書いておいてなんですが、実はこの概要はだいぶ先の方まで書いているというか、まあとにかく序盤の「グイドがドーラと結婚するまで」がやたらと長い。本番は強制収容所に連れて来られてから、だと思いますが、そこに至るまで半分以上の時間を費やしていたと思います。
確かにグイドの人となりだったり、後々の伏線となる話だったりも含まれてはいるんですが、それにしてもちょっと長すぎて前半はかーなーりー退屈しました。
前半部分は言ってみれば恋愛映画のようなテイストが強く、また時代性とお国柄と主人公の性格とが混ざり合ってかなり軽く、正直に言えばややチープな映画に見えるので、この序盤のしんどさはだいぶきましたね。
僕はこの「前半退屈で後半見せる」タイプの映画を「ディア・ハンター方式」と勝手に呼んでいるんですが、ただあの映画ほど後半刺さるような部分もなく、正直期待はずれではありました。
第二次世界大戦という舞台なだけに、当然いろいろと考えさせられもするし、話としてはいい話だと素直に思う面もあるんですが、それでも実際のところ創作ではあるし、何より強制収容所内の展開がほぼご都合主義的で、まあそううまくいくかいな、というような話が続くので、「言いたいことはわかるけど映画としては説得力に欠けるよね」というような印象。
主演・監督・脚本とロベルト・ベニーニが多才っぷりを発揮している映画ですが、いかんせん演出としても安っぽく、コメディっぽさが裏目に出ている気がします。
家族愛の映画なので、とても好きな人がいるのも頷けるのですが、やっぱり映画としては正直言ってそこまで完成度が高いとも感じられずちょっとガッカリでした。
このシーンがイイ!
これはもう、初めてジョズエが登場したシーンしかないですね。それまで退屈しながら観てましたが、このシーンだけはすごくハッとして急に目が醒めたような感覚になった、めちゃくちゃ良いシーンでした。あれは上手い。
ココが○
やっぱり戦争についていろいろ考えさせられる映画なので、数ある戦争映画、第二次世界大戦についての映画の一つとして、観ておいて良いんじゃないかと思います。
ココが×
前半の退屈さ、後半の都合良すぎる展開。
結局、ラストまで行って「これが見せたかったんだよね」というシーンから逆算で作ってる感じが見えちゃうんですよね。受け手に素直さがないと言われればそれまでですが、いろいろチープさを感じました。
MVA
はっきり言ってロベルト・ベニーニの演技はあまり好きではありませんでした。いかにもコメディアンっぽい軽さでややオーバーだし、内容的にはもっと悲哀を感じる面が見たかったな…。奥さん役の人も、ベタ惚れするには妙におばさんだなぁ、と思ってたらリアルワイフだそうで、そういうコネ採用しちゃうとろくでもないんですよね…。まあ演技は良かったんですが。
となると主要人物もあまりおらず、消去法でこの人かな、と。
ホルスト・ブッフホルツ(レッシング医師役)
なぞなぞマニアのお医者さん。結局大した役じゃないんですが、存在感があったかな、と。