映画レビュー0588 『われらが背きし者』

ハズレ無しでおなじみ、ジョン・ル・カレ原作の地味系大人映画。珍しく近くで上映してくれていたので、早速観に行って来ました。

んでもって、えー、ここからちょっと個人的な言い訳になるんですが、今年はウダウダしすぎているために、レビュー自体は書いたもののジャケ絵を描くのがめんどくさすぎてアップが遅々として進まず、おかげでそれなりの本数が溜まっちゃっておりまして…。

その未公開分(と書くとなんとなく貴重な感じが出るというまやかし)に同じくジョン・ル・カレ原作の古い映画「寒い国から帰ったスパイ」が入っておりまして、一応その話は特にレビュー上に出ては来ないんですが、ジョン・ル・カレ原作映画としては「裏切りのサーカス」「誰よりも狙われた男」「寒い国から帰ったスパイ」に続いて4作目の鑑賞となったよ、という舞台背景だけは記しておこうと思います。

前にも書きましたが、劇場鑑賞映画に関してはジャケ絵を描く必要がないのと、できるだけ早いうちにアップして温かいうちに食べていただこうという気持ちから先にアップすることにしておりまして、でも食べに来るお客さんは1日二桁もいない、っていう予約限定の高級料亭かよみたいな感じになっておりまして、一筋の涙が頬を伝うのも無理はないよね、ということも記しておきたかったわけでございます。いや、いいんだけど。ほんと自分確認用で書いてるだけなので。

でもだったらジャケ絵描くのやめりゃあいいじゃん、という自分の中での葛藤もございまして、とてもアンビバレントなブログとなっておりますなんプロでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

そんでそんなわけで、おそらくこれから年末にかけて一気に更新頻度が増していくことが想像されます。アワードの都合上、今年の鑑賞分は今年のうちに吐き出さないといけないので…。

今年の汚れは今年のうちに、と。

毎度汚れを吐き出してお送りしておりますなんプロでございます。再度よろしくお願い申し上げます。

われらが背きし者

Our Kind of Traitor
監督
スザンナ・ホワイト
脚本
原作
『われらが背きし者』
音楽
公開
2016年5月13日 イギリス
上映時間
107分
製作国
アメリカ

紳士協定

休暇でモロッコにやってきた、大学教授のペリーと妻で弁護士のゲイル。ある夜、レストランでディマという男に一緒に酒を飲もうと誘われたペリーは、頼まれたら断れない性格のためか、その後も連日ズルズルとパーティにテニスの相手に、と彼に引っ張り回され、モロッコ滞在最終日にもまたパーティに呼ばれ、「実は俺はロシアン・マフィアで、そろそろ身が危ないから亡命したい」と、あるデータが入った一つのメモリをMI6に届けて欲しいと頼まれる。

ちょっと大仰な演出が気になる。

7.0

巻き込まれ系一般人を演じさせたら世界一、という噂が特に無いユアン・マクレガー主演のサスペンス。

ジョン・ル・カレ原作ということもありスパイ要素も含まれてはいるんですが、なにせ主人公が大学教授とロシアン・マフィアなので、僕が観た他の3作と比べるとだいぶスパイの色合いは薄い印象で、やっぱりジャンルとしては「一般人巻き込まれ系サスペンス」なのかなぁという気がします。

ジョン・ル・カレ原作映画は、派手さのないリアルスパイの世界が最高なのは間違いないわけですが、そういう部分を期待して観るとちょっと肩透かしを食らうかな、と。今回はスパイはあくまで脇役、メインは一般人が突如として巻き込まれる裏の世界、と言ったところでしょうか。

そんな一般人の大学教授・ペリーは、休暇で訪れたモロッコの夜、高級レストランで一人になった途端に近くにいた大柄の男・ディマに「一緒に飲もう」と誘われ、その上なぜか「うちでパーティやるから来い」と誘われて朝まで飲み、さらには「テニス出来るのか? じゃあ今日やろう」と徹夜じゃねーか的なハードスケジュールでテニスまで付き合わされ、さらに「娘の誕生パーティやるから来てくれ」と翌日またパーティに行き…といきなり引っ張り回されます。

ペリーはなぜにそんなに気に入られたのか…なんとなく小室哲哉っぽかったからヒット曲でも作って欲しかったのか…理由はまったく不明なんですが、連日ディマに引きずり回され、当然ながら奥さんのゲイルも訝しげな中、唐突に「俺はロシアン・マフィアで亡命したいから協力してくれ」と頼まれるペリー。

ふつーなら断るところですが、情が移った双子の両親が殺された顛末を聞かされ、彼の家族を不憫に思ったペリーは協力することに。空港でMI6にメモリを渡せばおしまい…と思っていたものの当然ながらそうは行かず、そこからロシアン・マフィア、MI6、そしてイギリス議会の大物議員と言った面々の蠢く世界に放り込まれることになります。

そんなわけで、終始ジリジリとした緊張感に引きずられつつの107分は、相変わらず地味ながら味のある展開で、退屈せずに楽しめたのは事実…なんですが、これはもう監督の問題でしょうねー、ちょっと全編通して「こいつ怪しいぞ」「ここで何かあるぞ」と思わせようとする演出がかなり色濃くてですね。結構鼻につきました。演出力不足を怪しさでカバーしている感じが見えちゃってて、段々とオオカミ少年的な感覚に。

たらればではありますが、「裏切りのサーカス」のトーマス・アルフレッドソン、「誰よりも狙われた男」のアントン・コービン両監督が撮っていたら…多分もっとレベルの高い映画になっていたと思います。非常に惜しい。面白かったものの、ちょっと残念感のある映画ではありました。

またストーリー自体も、僕が観た他のジョン・ル・カレ原作映画と比べると少し落ちる印象があり、この辺は原作未読なだけに、原作を映画の脚本にした時の問題なのか、はたまた原作そのものの問題なのかはわからないんですが、やっぱり映画そのものの印象としてはところどころもったいないなぁという展開はありました。

例のごとくネタバレ回避のために詳細は省きますが、ベタだったり浅はかな展開だったりがちょこちょこあって、その辺も「ジョン・ル・カレ原作ならもっと緻密なんじゃないのか!」と思った次第。

一つも原作を読んでない人間が偉そうに言うわけです。

とは言え、いつもの通り安っぽい不死身のスパイが登場してドーン! みたいなウンザリ展開は無いので、大人向けジリジリ系サスペンスとしては十分及第点なんじゃないかと思います。

ラストも僕が予想していた形とは少し違っていたので、その結末自体の良し悪しは別として、個人的には楽しめました。

ただ、掛け値なしに楽しめた「裏切りのサーカス」や「誰よりも狙われた男」のような味わい深さは無かったし、鑑賞後の余韻も物足りなかったのは否めません。これはやっぱり…監督の力量だと思うんだよなぁ…。惜しい。

結論としては「こういう地味系サスペンスが好きならそれなりに楽しめるものの、不満も出る」映画かな、と。

映画の出来不出来は別に、ジョン・ル・カレの映画は元々結構敷居が高い部分があるので、その敷居を越えた先に待つものとしては物足りない印象がありました。

まあ…料理するには難しいタイプの原作だと思うんですけどね。今回はちょっと監督が捌ききれなかったかな、と思います。

このシーンがイイ!

終盤、ディマがプリンスに語るシーンが良かったですねぇ。自分の状況を知りつつも挑発していくかっこよさ。

ココが○

ジョン・ル・カレ原作特有の、地味ながらジリジリと観るものを惹き付ける展開。MI6の人手不足な部分とか、ダメだなこいつらと思いつつもそこがまたリアル。

また、巷では結構「一般人がこうやって安請け合いして巻き込まれるのはリアルじゃない」みたいな意見が散見されますが、僕がペリーだったら多分同じように「まあメモリ渡すだけなら…」って受けちゃいそうな気もするし(ただし報酬はもらいます)、そこまで違和感は感じなかったですね。気が弱い人なら受けちゃってもおかしくない気がする。

そもそも頼んできてる相手がロシアン・マフィアなら、秘密を知っちゃった以上、その場で殺されるかも…みたいな恐怖で引き受けてもおかしくないだろうし。まあそういう描写は無かったんですけどね。

ココが×

上に書いた通り、ちょっと煽り過ぎな部分に監督の自信の無さが伺えた部分と、ストーリー上、少しお粗末な転換がいくつかあった点。あの辺、原作ではもっと納得がいくものになっているのか…気になります。読んでみようかなぁ。

MVA

いやほんとにね、ユアン・マクレガーが小室哲哉に瓜二つなんですよ。いや瓜二つは言いすぎだけど。でもホント小室感すごかった。最初から最後まで「小室じゃん」って。相も変わらず巻き込まれ一般人がお上手ですが、やっぱり僕は「ゴーストライター」の方が好きですね。

それとMI6のヘクター役のダミアン・ルイス、口が小さすぎ。

そんな中、MVAはこちらの方。

ステラン・スカルスガルド(ディマ役)

亡命したいロシアン・マフィアの大物。

最初は危ないやつなんじゃ…と思わせつつも、実際は豪快で明るく家族思いのイイおっさん。割と陰湿な役が多い印象のステランさんですが、こういう役もハマるのかー、とちょっとビックリ。とても良かったと思います。ペリーを親しげに「プロフェッサーーーー!」って呼ぶ感じがすごく良かった。

ちなみにどうでもいい話ですが、個人的にこの方とトム・ウィルキンソンは「二大すぐ脱ぐオッサン」として、彼らが出ている映画を観るときは密かに毎回脱衣シーンが無いか楽しみにしているんですが、今回もしっかり全裸になるシーンがあって思わず劇場で笑いました。またかよ、と。いや、話としても特に違和感のない、おかしくない裸なんですが、しかしまた脱いだかやっぱり、っていう。今後も注目していきたいと思います。

あとオッサンのチンコぐらいぼかし入れなくていいと思う。大人向けの映画なんだし。ああいうのってどうせ自主規制でしょ? エロシーンでも無かったし、むしろ逆に目を引いちゃうからああいうのはそのままでいいと思うんだけどなぁ…。R指定的な問題もあるだろうし難しい面もあるだろうとは思いますが…。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA