映画レビュー0122 『硫黄島からの手紙』
節電協力のために映画なんて観てる場合じゃないんですが、お休み最後の映画として誠に勝手ながら観賞しました。あとはもう大人しくしてます。
しかし…まさか現実で「2万5千年の荒野(ゴルゴ13)」の世界をかいま見るとは…。今は祈るしかないですね…。
硫黄島からの手紙
“面白い”と言えば嘘になる。
監督はクリント・イーストウッド、製作国もアメリカですが、イーストウッドが言っているように、これはもう邦画の領域でしょう。日本人俳優がほぼ全編日本語で演じる映画です。
相変わらずイーストウッドらしい、脚色の少ない真摯な映画で、言ってしまえばとにかく地味です。
特に他のイーストウッド映画と比べてもドラマ性や事件性がほぼ皆無に等しく、「家族への思い」という要素があるにはあるものの、基本的には一つの戦いをじっくり描いているだけの内容なので、惹き付けられて面白かったぜ、というような映画ではありませんでした。
日本人の精神性という部分ではしっかり描いているとは思いますが、人間ドラマを強調するのであれば、もっと人物描写に時間を割いてもよかったんじゃないかな、と思います。
リアルな戦闘場面に割と長めの時間を割いていた印象があるので、その辺りが(リアルなんだけど)散漫というか、ドラマ性という部分が希薄になってしまったかな、という気がします。
あとは割とリアルであるが故に、また今この大震災直後という観賞タイミングもあって、かもしれませんが、少し直視しづらい気持ちが表に出てきてしまったこともあって、あまり集中して観られなかったのも残念でした。おそらく「今日観よう」と思ってしまった僕のミスです。
ということで、作品としてまた観ようと思うようなものではなかったんですが、さすがクリント・イーストウッドらしい、映画に対しても、そして日本人に対しても真面目な作り、というのは、誤った日本人観の映画とは一線を画したものであって、その辺りは評価できる映画だと思います。
このシーンがイイ!
栗林中将が無線で「歌を聴く」シーン。いろんな意味がありましたね、あそこは…。
ココが○
上に書いた通り、当時の日本人の描き方としては割と真っ当な映画だと思います。
今観ると狂気に近い部分もあるんですが、当時はこういう思想や行動が普通だったのも事実だと思うので、その辺りの酷さや切なさみたいなものは感じられました。
ココが×
煽りというわけではないんでしょうが、割とグロいというか、目を背けたくなるようなシーンがありました。特に、手榴弾で集団自決を図るシーンなんかはもう…。小さい子には観せない方がいいでしょう。
あと一つ気になったのが、ファンも多いので言いにくいですが…二宮和也の演技。
役柄自体、監督がわざわざ彼に感銘を受けて作ったという話みたいですが(これも大人の事情的なウラがある気がしますが)、正直かなり興醒めしました。時代性を感じない若者言葉に、戦場とは思えないニヤニヤっぷり。戦場にいる兵士の緊張感がまるでない。
ただ、これは演出面での狙い(もしくは興業面での狙い)の可能性もあるので、一概に彼が悪いとも言えませんが。
MVA
伊原剛志もよかったけど、やっぱりこの人かな…。
渡辺謙(栗林忠道陸軍中将役)
正直、今まで観た渡辺謙の中では評価的には低い方です。消去法で…という感じ。でもあの存在感はやっぱりこの人しか出せないかな、という気もします。