映画レビュー1273 『あなたがいてこそ』
大絶賛しか聞こえてこない「RRR」観に行きたい! でも骨折してるしめんどくさい!
ということで同じS・S・ラージャマウリ監督の映画をJAIHOからチョイス。
あなたがいてこそ
S・S・ラージャマウリ
S・S・カンチ
『荒武者キートン』
スニール
サローニ・アスワーニー
ナジニードゥ
スプリート
プラバカール
ブラフマージ
S・S・カンチ
ラヴィ・テージャ
2010年7月23日 インド
125分
インド
JAIHO(Fire TV Stick・TV)
コントのようなわかりやすさと面白さ。
- 本人は知らぬまま、「仇の息子」として故郷の有力者の屋敷を訪問
- 旅程で出会った娘も絡んで恋と殺意渦巻く屋敷コント
- ほぼ屋敷内で進むものの手を変え品を変えで飽きさせず
- 時間も程々で観やすいインド映画としてオススメ
あらすじ
インド映画らしい衝撃は無いものの、そこそこぶっ飛んだ笑いも登場してとても楽しい映画でした。壮大な物語の印象が強いラージャマウリ師匠もこんなミニマムな作品も作ってたんだな〜と結構驚き。
かつてインドのどこかの州(アバウト)では血みどろの闘いが繰り広げられておりまして、とある親類関係にある2つの家での抗争により一騎打ちが発生し、双方が死亡。
死んだ男の弟・ラミニドゥ(ナジニードゥ)は「この恨みは貴様らの子孫にまで及ぶぞ」といきり立ち、まだ幼い息子兄弟に復讐心を植え付けます。
一方もう片方の男の妻はそんな土地柄に嫌気が差してお引っ越し、息子のラーム(スニール)はこの忌まわしき故郷の風習を知らないまま育ちます。
成長したラームは冴えない配達業で暮らしていましたがクビになり、日々の暮らしもままならないぞ…と厳しい状況になったところで故郷から手紙が届き、父が遺した膨大な土地を相続できることに。
一気に人生逆転だぜと意気込んで手続きのため故郷へ行くことにしたラームは、向かう列車で画家を目指す美しい女性・アパルナ(サローニ・アスワーニー)と知り合い仲良くなりつつ故郷に到着。
そこでは“地元の有力者”に協力を仰ぐべきとのことで探していたところ、偶然その有力者と知り合い「ぜひうちに来てくれ」と屋敷へ招待され、盛大なおもてなしを受けるラーム。
さらにその家はあのアパルナの家でもあった…ということで運命のお導きに気を良くするラームでしたが、しかしその“有力者”こそがあのラーム父に弟を殺され「仇として末代まで復讐してやる」と誓ったラミニドゥでしたとさ…!
しかしラミニドゥは自らの屋敷を神聖な場所と見なしており、そこを血で汚すことは許されないとの信念から「ラームが家を出たら殺す(=家を出るまでは手を出さない)」ことを息子や使用人たちに徹底させます。
一方彼らの思惑に気がついたラームは「家にいれば殺されない」ことを逆手に取ってなんとか滞在を延ばそうとあの手この手で理由をつけて居座り続けます。
かくして勃発した「さっさと追い出して殺したい」ラミニドゥ一家 vs 「なんとか家に留まって死にたくない」ラーム with 何も知らぬアパルナ…! この不毛な争い、どうなる…!
わかりやすいコント的物語
ということで広大な屋敷とは言えほぼ室内で話がまとまる、やたらとスケールがデカい映画だらけの中である意味では珍しいタイプのインド映画です。
話は至極単純で、あらすじに書いた通り「家から出したい攻撃側」と「家から出たくない防御側」のコントのようなやり取りをひたすら見守る2時間になりますが、ウダウダ「出たくない」を繰り返す割になかなかバラエティに富んだやり取りで見せてくれるので意外と飽きずに楽しめます。
「殺したい」側の親子はさておいて、事情を知らないアパルナとその従兄弟がなかなかいい味を出していて、攻防はっきりしている陣営(防御側はラーム一人だけど)とは別のファクターとして不安定要素をもたらしているとかいないとかいう噂。
ラームはキャラ的にモテそうなキャラではないだけに、アパルナが惚れちゃって云々みたいな恋愛が絡んできちゃうと嘘くさいなぁと思いつつ観ていましたが、そこに従兄弟の存在が加わることで絶妙に人間関係が回る辺り非常にお上手です。ラブコメのようでいてラブコメではない映画というか。
また油断していると急に「バーフバリ」を彷彿とさせるようなファンタジーアクションも登場したりして笑わせてくるのがズルい。ヤシの木の原型はこれだったのか、みたいな。いや多分違うと思うけどこういうの好きだなラージャマウリ。
気楽に観てね系
もう本当に単純な話ではあるのであんまり書くことも無くてですね。おそらく誰でも普通に楽しめる敷居の低い映画なんですが、それだけ別に深みもないので気楽に観てね系の映画でもあります。
もちろんそれが悪いわけではなく、そういう映画も必要なので気分によって選べばいいんじゃない系です。
個人的にインド映画は(基本的に長いのもあって)割と観るのに気合いが必要な方なんですが、この映画は今まで観た中では一番気合いがいらないタイプのインド映画だと思います。2時間ちょっとだし、内容もコントだし。
なのでインド映画初心者にも最適だしあとは特に言うことも無いよ、という薄い内容で今回はおしまいです。決して観てから結構時間が経っちゃってるからではありません。
このシーンがイイ!
何かで観た記憶があって「この映画だったのかー!」と喜んだんですが、序盤仕事をクビになった後に出てくる歌のシーンが最高です。なぜかバックで事故りまくる車たちの意味がまったくわかりません。ラームは何かの能力者なのかな、みたいな。
ココが○
単純でわかりやすく、(インド映画としては)短い。超気楽に観られる。
あと自転車が普通に喋りだすのもぶっ飛んでて好き。
ココが×
フィクションとは言え普通に殺しまくってもお咎めなしのインド怖すぎるね、っていう。その辺の思い切った設定もまた趣があるんですけどね。
MVA
ヒロインも当然かわいくてよかったんですが、この人に。
ブラフマージ(スリカント役)
アパルナの従兄弟。本人の意志とは別に両親からはアパルナと結婚するよう期待されていて、それがまた展開を面白くしてくれます。
まー本当に良いやつなんですよ。ものすごく。
彼がいなかったらだいぶ違った話になってそうだなーと思う面もあり。彼には幸せになってほしい。