映画レビュー1509 『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』

アマプラは「そろそろ配信終了」がピックアップされてるのでそこから選んじゃうよね、ということで今日はこちらの映画。

ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像

One Last Deal
監督
脚本

アナ・ヘイナマー

出演

ヘイッキ・ノウシアイネン
ピルヨ・ロンカ
アモス・ブロテルス
ステファン・サウク
ペルッティ・スベホルム
ヤコブ・オーマン
クリストファー・モラー
エーロ・リタラ

音楽
公開

2019年1月4日 フィンランド

上映時間

95分

製作国

フィンランド

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像

家族の形がもう少し違っていれば…。

7.5
困窮している美術商、“最後の賭け”で一目惚れした名もなき肖像画を競り落とすが…
  • そろそろ“店じまい”も視野に入った時期、最後の大勝負に出る老美術商
  • 署名のない名画に惚れ込み、落札しようとするもオーションではかなり高値になってしまう
  • 金策に奔走しつつ、過去に顧みてこなかった家族との関係にも変化が
  • ヨーロッパ映画らしく地味ながらじわじわと良さが感じられる一本

あらすじ

良い映画でなかなか楽しめたんですが、もう一歩詰めが甘い印象もあって惜しい作品、といったところ。

小さな画廊を営むオラヴィ(ヘイッキ・ノウシアイネン)は昔ながらの商売人で時代に乗り遅れている感も強く、諸々の支払いが滞っていたりとかなり厳しい状況。
ある日旧知のオークションハウスで近日出品される絵画を見に行ったところ、1枚の作者不明の肖像画に目を奪われます。
彼は長年の経験からそれがロシアの巨匠イリヤ・レーピンの作品だと見当をつけ、いわば「まだ世に知られていないお宝作品」として落札し、それを売りさばくことで自分の商売の“最後の花火”にしようと目論みます。
職業体験に来た問題児の孫・オットー(アモス・ブロテルス)とともに「レーピン作品」であることの証拠を探しつつオークションに臨みますが…果たして。

地味で真面目なのが良くもあり…

絵画がテーマで老美術商と来るとどうしてもあの映画を思い出してしまいますが、あそこまで意地の悪い話ではない分比較的安心して観られます…が、その分エッジが利いていないのでちょっと惜しい、みたいな映画です。
簡単に書いてしまうと、年齢的なものと金銭的なものとが重なったために長年続けてきた商売を続けていくのはもう難しいと考えた主人公が、とは言えフェードアウトは忍びない、最後にでかい仕事をしたい…と胸に秘めていたところそれに相応しい(と思われる)絵と出会い、そこに長年顧みてこなかった娘とその息子が関わってきて…的なお話です。ぶっちゃけオチも割と読めると思います。
物語の推進力となるのは間違いなく「作者不明の名画」で、そのミステリー的な要素はとても楽しめましたが、一方でそこに結びつく家族の話がどうにもベタなのでもう一つ盛り上がりに欠ける面があり、題材が面白いだけにちょっと惜しいな、と。
問題の「家族の話」は、主人公オラヴィの娘が一人息子のオットーを母子家庭(どこかのタイミングで離婚)で育ててきたという話がベースにあり、しかしその娘家族に対してもあまりコンタクトを取らず手を差し伸べて来なかったオラヴィが改めて家族の形を見つめ直す…的なアレです。
いわばよくある家族再生の物語に作者不明の名画が絡むという要素が珍しいので面白いわけですが、後半に進むにつれて家族の話がメインになっていくので徐々に「うーむいつものパターンっぽい…」となってしまってもう一つ、みたいな感じでした。
話の決着の仕方等は好きだし、全体的にも全然悪くないので本当に良い映画だと思いますが、ただやっぱり「家族関係のベタさ」は拭えないのでそこが本当に惜しい。
これハリウッドの映画だったら多分良くも悪くももっと劇的になっていたと思うんですよね。それがホームランになるか三振になるかはわかりませんが…。
こちらは北欧映画らしく地味ながら真面目に作られている印象で、ヒットではあるけどホームランにはならない、みたいな惜しさがどうしてもあります。
そこが良いとも言えるんですが、やっぱり家族関係がベタだとどうしても読めてしまうのでそこをもう一歩練ってほしかったなというのが贅沢ですが正直なところです。

全体的には良作

結末も悪くないんですが、絵の顛末は良いものの話(要は家族の方)の落とし所がこれまたありきたりだったのが残念。
ネタバレ故に書けないんですけどね。次項に譲ります。

ちょっと否定的な書き方になってしまいましたが、しかし地味ながら地に足のついた物語といった感じもあるし、最初に書いた通り良い映画だと思います。
それにしてもあの肖像画、実際に存在するんだろうか…ちょっと気になる。

ラスト・ネタバレール

やっぱりねー、途中から薄々感じていたことですが、主人公を死なせるのは悪手だと思うんですよ…。
老齢で仕事を手放したと来るともういよいよそれしかない、みたいに思えるしその通りになっちゃったので。
そもそも孫が出てきてちょっとコミュニケーションが取れるようになってきた辺りから「これ最後主人公死ぬでしょ」と思いながら観ていたので、そこの辺りのベタさはいかんともしがたいなと思います。
加えて上でも散々「ベタ」と書いたように、娘と不仲である、そしてその娘が離婚して一人息子を育てている…という“わかりやすい不遇”な環境がもう本当にもったいない。
ド素人故に果たしてどう展開すればいいのかはわかりませんが、娘もきちんと夫がいて、夫婦仲も悪くなく、でも人並みに苦労している…みたいな環境の方が雑音が少なかったと思うんですよね。
どうしても娘が母子家庭で困窮しているみたいな話を盛り込まれると、それはそれで主人公のやったこと(お金の無心)への印象は強まるものの、彼が死ぬと予想していたのと重ねると「最終的には価値のあるもの(要は絵)が孫に行く」のはわかってしまうので、その辺りの読みやすさを薄めるためにも娘の不幸環境はもっとマイルドにすればいいのにな、と思いました。
まあ素人の戯言ですけどね…。

このシーンがイイ!

回転椅子のシーンでしょうか。わざと回したのかなとか考えてたらいろいろ演出が伺えて印象的でした。

ココが○

一枚の絵にすべてを賭ける美術商、って設定はものすごく好きですね。自分の鑑定眼に自信を持って勝負する感じ。
それと画廊のセットもすごく良かった。いかにも昔からやってそうな実直さが伺える画廊で。

ココが×

ネタバレのところに書いた点諸々でしょうか。
もう少し家族の話をフラットにした方が良かったと思うんですよね。

MVA

ほぼ一択みたいな映画なのでこちらの方に。

ヘイッキ・ノウシアイネン(オラヴィ役)

主人公の老美術商。
ただショボショボなお爺さんではなく割と普通に孫に怒ったりするので意外とシャッキリしてました。
表情からして良い演技するなぁと思っていたんですが、調べたら「ヤコブの手紙」の神父さんでした。マジか…全然気付かなかった…。

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