映画レビュー1180 『ソニはご機嫌ななめ』
JAIHOです。JAIHOは韓国映画を推してる感があり、観る機会が増えました。
ソニはご機嫌ななめ
小悪魔女子ってこうだよね〜! 的なわかりみの深さ。
- 1人の女子と再会した男3人がそれぞれ彼女に引っ張られる
- 男3人はそれぞれ先輩後輩の間柄で、彼らの間にも物語が
- 無理のないソニの小悪魔っぷりが絶妙
- 謎のズームが終始謎
あらすじ
今回もまた地味と言うか、際立った見せ場がないもののなんとも言えない味のある物語でなかなか面白かったです。
しばらく界隈から姿を消し、失踪疑惑すらあった女子・ソニ(チョン・ユミ)が突然大学にやってきて、教授のドンヒョン(キム・サンジュン)にアメリカ留学のための推薦状を書いて欲しいと頼んできます。
最初は適当に書き上げたドンヒョンですが、内容に満足していないソニは彼が自分をかわいがっていたことを利用して書き直して欲しいと頼み、またちょっと思わせぶりな素振りを見せてドンヒョンを骨抜きに…!
一方大学の帰りに元カレのムンス(イ・ソンギュン)と再会したソニは、まだ彼に未練があるであろうことを知りつつも一人飲んでいたお店に呼び寄せ、一緒に飲んだ挙げ句言い争ってお別れ。残ったムンスはモヤモヤ。
映画製作に進みたいソニは映画監督となった先輩のジェハクとも再会し、これまた一緒にお酒を飲むことに。
かくして男3人とソニがそれぞれ再会し、それぞれ彼女に翻弄されるわけですが…あとは観てください。
ソニのキャラクターがすべて
補足すると、ムンス(元カレ)の先輩がジェハク(映画監督)、そしてジェハクの先輩がドンヒョン(教授)と言う構図になっていて、それぞれ先輩後輩として仲のいい間柄のようで、「それが誰とは伝えないまま」それぞれが彼女についての相談をするような、事情を知っている観客からすればなんとも気まずいもののニヤニヤしちゃうような意地の悪い物語でもあります。
全般的にソニ自身にはあまり作為的なものが無いように見える…んですが、まあ小悪魔的な女子と言うのはこういうものだよねとウンウン頷きながら観ました。きっと彼女は「ソニって小悪魔だよな!」と言われれば「えぇー!? どこが!?」となんなら不本意なんじゃないかと思えるぐらいのリアクションを取るんじゃないかと思いますが、それこそが小悪魔なんだよとこれまたひたすら(勝手な想像で)頷くわけです。いやーいいキャラしてる。ソニ。
例えば元カレについてはもう脈なしだよと告げてもいるし、「全然小悪魔じゃないでしょ(妄想のソニ談)」と言いたい気持ちもわかるんですが、ただそれでも追ってくるタイプなのをわかって接しているように見えるし、ドンヒョン(教授)の利用の仕方にしてもなかなかエグい。天然でやってるっぽいのがよりエグい。
でも一番エグいのはジェハクとの関わり方で、これ自分がジェハクだったらかなりしんどいなーと思いながら観ていました。もう全員ソニの手のひらで転がされている感がすごい。
ただソニ自信は「転がして楽しもう」なんて思ってもいなさそうで、なんならタイトル通りちょっとご機嫌ななめなんですよ。微妙に(男関係なく)人生うまく行ってない感覚を持ってるっぽい。そしてそこが面白い。
邦題については不評も目にしたんですが、僕はこのタイトルすごく好きですね。ここから「ソニに振り回される男たち」の滑稽さみたいなものも浮かんで来るし、何よりほんのりかわいらしいおかしさがあるタイトルじゃないですか。「ソニは不機嫌」だったら全然ダメですが、「ご機嫌ななめ」って言うのが絶妙で好きです。致命傷な感じがしない、でも本人の“不作為に振り回す小悪魔っぷり”がよく現れているタイトルだと思います。タイトルとしてかなり好き。
謎のズームが終始気になる
ただ、一つ大きく気になる点としては、演出がかなり素人っぽいんですよね。「素人っぽい」って言うと何様だって話ですが、もっとちゃんと言うなら「世間一般が共有する“素人が撮った映画のイメージ”に近い」映像に感じられると言うか。
最初の30分ぐらいは「これもしかして大学生が自主制作したら話題になっちゃった系の映画?」と思ったぐらい、とにかく撮り方がすごく鈍臭いと言うか…素人目にもわかるぐらいに違和感を感じる撮り方をしています。
僕は映像系の専門学校を出た経験上、当時こういう映像を山程観てきたんですよね。同級生の。だから余計にそう感じるんだと思います。懐かしの素人映像、って感じで。
基本的には固定カメラで写すだけで、時折謎のズームが入るんですよ。「えっ、なんで今寄ったの?」って言う。
どうも調べたらこの監督のこのズームは結構有名らしいんですが、とにかく意図のわからないズームが劇中そこそこ多用されていて、終始困惑。なんで寄ったのかとか、なんで今なのとか。
それが味なのかもしれませんが、その映像の作りの拙さ(=拙く見える作り)はかなり違和感を感じる人も多いはずで、そこは結構気になる人は気になると思います。
話自体は面白いだけにそこがもったいないなーとは思うんですが、これも好みの問題かもしれないし難しいところ。ただ普通は「えっ」と思うはずです。
裏を返せばその独特な映像表現を気にしなければ、こんなにもゆるくてある種意地の悪い「男手篭め映画」もなかなか無いと思うので、他にない面白さが味わえると思います。
なんと言うか、めちゃくちゃ面白かったわけではないけれど、何となく(素人っぽい映像の印象含め)他人のリアルを覗いているような妙なリアリティから導き出されるソニの小悪魔っぷりに、同じ男として「わかるなーでもだからダメなんだよなー」と苦笑しちゃうような「いいとこ突かれた」感があり、そこが魅力の映画だなと思います。
まあね、なんだかんだ言いながら、僕もこの映画の中に入ったらソニに振り回される自信がありますよ。かわいいんだもん。
このシーンがイイ!
ラスト近辺の気まずさったらない。作り物っぽい都合良さだなーと思いつつも実際にありそうなリアリティが良い。
ココが○
狭い世界であーだこーだやっているだけですが、それ故に一般人的にリアルに感じられる物語なのが良いですね。血生臭さゼロで観やすいし。
そして上に書いたように邦題が好きです。結構思い切っている気もするけど、すごくセンスがあるなーと思います。
ココが×
やっぱり謎のズームに見られるような画作りの部分でしょうか。監督のこだわりでもあるんだろうから仕方がないとは言え、違和感がすごかった。最終的には慣れたけど。
MVA
まあ一択ですね。
チョン・ユミ(ソニ役)
ヒロインの小悪魔ガール。ご機嫌ななめだったり上機嫌だったり。(普通)
絶妙に「手が届きそうなかわいさ」が良い。美人すぎず、かわいすぎず。でもかわいい。そして天然小悪魔と来ればそりゃーこうなるよという見事なキャラクターと、それを見事に演じた彼女。文句なしです。
男性陣ではジェハクを演じたチョン・ジェヨンが好きなタイプのちょっとくたびれたイケメンで良かったですね。
あとは元カレが「パラサイト」の金持ち実業家の人で全然イメージ違ってびっくり。余談です。