映画レビュー1157 『パラサイト 半地下の家族』

今さらですがようやく観ました。言わずとしれたアカデミー賞受賞作です。

パラサイト 半地下の家族

Parasite
監督
脚本

ポン・ジュノ
ハン・ジンウォン

出演

ソン・ガンホ
イ・ソンギュン
チョ・ヨジョン
チェ・ウシク
パク・ソダム
チャン・ヘジン
チョン・ジソ
イ・ジョンウン
パク・ミョンフン

音楽

チョン・ジェイル

公開

2019年5月30日 韓国

上映時間

132分

製作国

韓国

視聴環境

Netflix(Fire TV Stick・TV)

パラサイト 半地下の家族

思ったより普通に面白かった。

8.0
貧乏一家、金持ち一家に続々雇われ“パラサイト”
  • 半地下で暮らす貧乏一家がセレブ娘の家庭教師をきっかけに“全員同職場に就職”
  • しかし当然そのままうまくいくわけもなく…
  • 格差社会を描きつつ、笑いからサスペンスに流れる巧みな娯楽作
  • きっともっと深い何かがあるに違いない…

あらすじ

本当に率直な感想としては「普通におもしろい映画」と言う感じで、僕のような低レベルの人間からすると何をもってあそこまでアカデミー賞を席巻することになったのか、その凄みみたいなところはイマイチよくわからなかったなと言うのが正直なところです。なんかもっと深い話なんじゃねーのと思っていたものの、僕レベルではそこまで深いところに気付けず、思っていた以上に娯楽映画だったなと。もっともその分誰でも観やすい面もあります。

主人公のキム一家は狭く汚い半地下のアパートに住んでおります。父ギテク(ソン・ガンホ)は専業主夫、母チュンスク(チャン・ヘジン)は専業主婦、息子ギウ(チェ・ウシク)は浪人生、娘ギジョン(パク・ソダム)はニート(?)で全員失業中。近くのWi-Fiを“拾って”携帯を使っているようなセコセコ一家です。

ある日長男のギウの元に名門大学に通う友人ミニョクが訪ねてきて、留学に際し今担当している女子高生ダヘ(チョン・ジソ)の英語の家庭教師を代わって担当してくれないかと依頼。

なんでもダヘの卒業に合わせて真面目にお付き合いをしたいので、その辺の大学生に狙われたら困る…とのことで、最初は浪人生だからと断ったギウですが、なにせ報酬も良いので受けることに。美大に落ちた妹ギジョンの手を借りて名門大学の入学証書を偽造した上でダヘの暮らすパク家へ訪問すると、迎え入れたのは家政婦で家は大豪邸でしたとさ…!

とんでもない金持ちに雇われた形になったギウは、偶然見たダヘの弟ダソンの絵についてダヘの母・ヨンギョ(チョ・ヨジョン)に聞いたところ、ちょうど絵の家庭教師を探していると言う情報をゲットし、適当な経歴をでっち上げて妹のギジョンを“紹介”。めでたく2人がパク家に雇われることになりました。

こうして徐々にパク家に“パラサイト”していくキム家ですが、果たしてこの先どうなるんでしょうか。

わかりやすく奥深い?

韓国映画については以前から書いていますが、この映画もやっぱり「コメディとシリアス(サスペンス)のバランス」がすごく良くて、単純に娯楽映画としてよく出来ていると思いつつもそのダイナミズムとでも言うんですかね…後半になって物語の色合いがガラッと変わるのがすごいなーと思います。

その他の国でもこういうのはありますが、インド映画と韓国映画はこの「ジャンルが変わる」巧みさが(僕が観測する範囲においては)図抜けている気がしますね。アメリカ映画なんかはコメディからいい話に落とし込もうとしていって失速するものばっかりな印象だしそっちの方が観る機会が多くなるだけにとても新鮮に感じます。

この映画はタイトルの通り、「半地下の家族が富裕層にパラサイト(寄生)」するお話なんですが、ただ後半もう一段階ひねりがあるのがポイントで、「なるほどそう言う話かー!」となかなか気持ちのいい驚きがありました。

最初に散々「(思ったよりも)普通で面白い」と書いたものの、その辺りの構造の巧みさは確かに考えてみればあまり他では見られないもののような気もするし、そこにはきっと韓国社会特有の格差の象徴みたいなものが込められていたりもするんでしょう。

この辺はよそからではわからない部分もあるんだろうと思いますが、それでもアカデミー賞を取ったわけだし、やっぱり「わかりやすく面白い」上に「込められた社会性」が評価されたのかな、と。

多分深堀りすればするほど「良くできてるな〜」と思わされる仕掛けがあちこちにあるんだろうと思うんですが、僕のような特に韓国にも詳しくないただの一般人的には「普通に面白い」映画であり、その間口の広さと奥深さが両立している辺りにこの映画のすごさがあるんでしょうね、きっと。この辺の詳しいところは詳細な解説も聞きたいところです。

お金持ち一家が良い人たちなのがポイント

一つ思ったこの映画のうっすいポイントとしては、“寄生先”のパク家の面々がみんないい人、ってところでしょうか。

あるがちなパターンでは「奥さんはちょっと抜けてていい人なんだけど旦那が厳しくて監視の目が…」とか「夫婦仲が良くなくて自然とどっちに付くかの立ち回りが大事に…」とかそう言う方面が多いと思うんですが、この映画のセレブ一家はみな常識的な普通の人々で、特段いやらしさや嫌な面が無い。

大黒柱の旦那さんはIT企業の社長でいかにもやり手っぽいですが普通に家族を愛してるし、雇った人間に対しても過剰に尊大な振る舞いは見せず、極めて順当な上下関係のもとでコミュニケーションを取るタイプ。なんなら(給料も良いっぽいし)かなり良い雇い主と言えます。

奥さんは人を信じやすいがためにこの映画のような“パラサイト”を許してしまう、言わば元凶のような存在ですがそれだけいい人だし何よりむちゃくちゃかわいい。(かわいさにはすべてを許す効果があります)

娘はやや小悪魔感はあるものの、両親同様に身分の違いを鼻にかけるタイプではなくいい子だし、息子にはイラッとさせられることもあるものの、そこを含めてただの(普通の)キッズだし。

なので一家揃って本当に至って普通の「良い隣人」と言う感じが、この手の物語の担い手としてむしろ目新しく、そこで事件を描くポン・ジュノはやっぱりすごいんだなと言うお話です。

寄生される側もする側も、どちらも特段“変わった”家族ではないのにこれだけのドラマ性が生まれ、そこにリアリティがあるというのはやっぱり地力がある証拠なんでしょう。

いやもしかしたら寄生する側は「普通」とは言えないかもしれませんが…でもこれぐらいのことは倫理観の低めのハードルを越えさえすればそこまで変わっているわけでもない気もするし。

まあそんな感じで諸々考えていくと結構脳内で深堀りできそうなお話でもあるし、「実は隣人がこんな人だった」みたいな生々しさが面白くもあります。

あまり過激な表現はない(若干えっちなシーンはありますが)ので誰でも観やすく、娯楽性に飛んでいながら深い…なるほどアカデミー賞も納得だね、とよくよく考えて適当なことを言う次第です。

とは言えこれがアメリカ映画なら断然納得ですが、「アジアの映画として初めて」受賞するほどの“何か”はやっぱり僕程度のレベルではわかりません。きっと多分に昨今の“多様性を示す”流れに乗って受賞したような気もする…。

念のため書いておきますが、散々書いているように作品自体に問題は無く、面白かったです。ただ、くどいようですがいろいろなハードルを越えて「アジア圏の映画」としてアカデミー賞本線をバシバシ受賞していくほどの何かはどうしてもわからなかったので、そこにはやっぱり「アカデミー賞は多様性を大切にします」みたいな対外的なアピールもあったんじゃないかな…と邪推しますがどうなんでしょうか。

ま、面白いからいいか!

このシーンがイイ!

あんまり詳細は書けませんが、やっぱり物語が展開することになる「寄生先一家キャンプの夜」でしょうか。

こういう状況で羽目を外すと結果的に足を引っ張る可能性があると思うので自分だったら絶対大人しくしていると思うんですが、やはりそこもまた人間臭いと言うか…フラグ満載からの「そんな話になるの!?」って言うね。

ココが○

わかりやすく面白い、でも深い内容はさすがの一言。過激さで引っ張らないのもとても良い。

ココが×

特に悪い点は無い気がします。

ただどうしてもめちゃくちゃハードルが上がった状態で観る人がほとんどだと思うので、そのハードルを越えて突き刺さるまでのものは無かったかな、というのが少し残念。

MVA

当然皆さん良かったです。

フラットに評価するなら妹ちゃん(絵の家庭教師)かな〜と思うんですが、もう完全に見た目でやられちゃったのでこちらのお方に。

チョ・ヨジョン(パク・ダヘ役)

パク家の“奥様”。

ま―本当にかわいい。若かりし頃の黒木瞳がよりかわいくなった感じ。

役柄的にも人を信じやすい“人の良さ”がいかにも男ウケしそうで、我ながら単純だなーと思いますがめちゃくちゃ好きでした。

むしろこれで悪い人だったらこっちが完全に騙されそう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA