映画レビュー0437 『ロッキー』
もはや説明不要、言わずと知れた歴史的名作。お恥ずかしながら初鑑賞です。
観る前から「多分自分は好きじゃないタイプの映画だろうな」と思いつつ、一応この程度は観ておかないと「目指せシネフィル」なんて言ってられないだろうということで、言わば通過儀礼的に鑑賞しました。
ロッキー
ラストの高まりはさすが。
最初にお断りしておきますが、当ブログは「誰にも遠慮せず、知識の無さをバカにされることも恐れずに好きなことを書く」ことを信条としているので、ロッキーファンには許しがたいレビューになるかもしれませんがご容赦ください。
僕はスタローン本人が脚本を書いていたというのはまったく知らなかったんですが、はっきり言ってしまえばストーリーは凡庸です。
チンピラ男がなぜか急に世界戦に担ぎ出され、気持ちを入れ替えてトレーニングして世界王者と好勝負を演じる…というのは、さすがにいささか手垢のついた内容だし、いまさらこの筋を追って「おお」と思うはずもなく。ただし、この映画は40年近く前のものでもあり、この後に様々な模倣が作られたせいで新鮮味が薄れていったことは、純粋に評価する上では考慮に入れる必要があるでしょう。
基本的に「成り上がりのストーリー」なだけに、登場人物みんな底辺の人々で、もうとにかく「なんでそこで!」というぐらいしょっちゅうブチ切れては暴れる暴れる。
僕は「底辺でもがんばる」人たちの物語は好きですが、「底辺で暴れる」人たちは大嫌いなので、もう観ていていちいち「はぁ?」となる場面も多く、正直最後の試合までは全然気に入らなかったです。特にエイドリアンの兄貴。いきなりキレるし頭悪すぎ。
とは言え、思った以上にそこそこしっかり観られる内容で、事前の予想である「ボクシング一辺倒」とは違った内容だったのは良かったです。
驚いたのはエイドリアン。
さすがに名前も「ロッキーの愛する人」ということも知ってはいましたが、勝手にパツキンねーちゃんを想像していただけに、まさかこんな地味な、とうの立ったアラサー女子だったとは。ちなみに個人的に今最も熱いのはアラサー女子だと思ってはいますがそれは置いといて。日本語吹替担当が松金よね子っていうのが笑っちゃいましたね。すごいそれっぽい。若い人はわからなそうですが。
話を戻しますが、そんなベッタベタな展開ではあるものの、ラストの試合はリアルだし、何よりやっぱりあのテーマ曲が熱い。あのテーマ曲ありきの映画だなぁとしみじみ思いました。使い方もさすが。
ほんとに殴りあってんじゃねーのか、というぐらい顔もボッコボコですがこれは当然特殊メイクで、なんとお金がないから最終ラウンドから撮影し、段々とそのメイクをはがしながら逆順で撮っていったそうです。スゴイ。
いかにもアメリカ人が好みそうなアメリカン・ドリームの映画である上に、当時反体制的なアメリカン・ニューシネマに辟易していた人々の心に刺さる、安心できる成功物語というのも大きかったんでしょう。
そして何より、まさにロッキーが当時のシルヴェスター・スタローンと重なって、リアルでもアメリカン・ドリームを体現した、というドラマ性もこの映画自体の物語を高めた背景がありそうです。
そういった「時代の熱」みたいなものがあっての名作であり、後年こうしてフラットに観てみると、あくまで「それなり」なのかな、というのが正直なところですが、ただこれはまた観る人の年齢にもだいぶ左右されるような気もします。
自分としても、やっぱりもっと若い時に観たかったな、と思いましたね。とは言え、想像していたよりは面白かったです。
このシーンがイイ!
これはもう、ラストの試合でしょう。特にお互いがお互いにかけた言葉、これはモハメド・アリから流用した言葉のようですが、良かった。
ココが○
非常にわかりやすい話なので、あまり深く考えず、楽に観られるというのはいいことかな、と。
ココが×
「トレーニング始めた初日にゼーハーゼーハー」とかもう本当にベタなので、メジャーすぎる映画ということも相まって、予想を裏切る名作! みたいな展開は考えにくい点でしょうか。今あえて観る意味というのもあまり無いかもしれません。特にオッサンになってからだと。
MVA
今回はあんまり役者さんが惹かれなかったんですよねぇ。
シルヴェスター・スタローンはキャラ設定のせいなのかもしれませんが、もうほぼ全部のセリフの最後に「You know?」って言うのがうるさくてうるさくて。ポーリー(エイドリアンの兄)が「いちいち聞くんじゃねぇ!」とキレなかったのが不思議なぐらい。そんな中、この人かなぁ。
タリア・シャイア(エイドリアン役)
もうほんっとーに地味な登場から、最終的にはそれなりに綺麗に見えるのがさすが。まあ、僕自身地味な人が好きなのもありますが。
ヒロインをこういう女性にする、っていうのは良いチョイスですね。わかりやすいアメリカンな美女じゃない、っていうのが。
おバカさんだらけの物語にあって、唯一映画を落ち着かせる存在だった気がします。