映画レビュー1111 『ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ』
1111本目…! 次のゾロ目は2222…それまでやってるんでしょうか。生きてるかも怪しいぜ…!
さて、今回はネトフリ終了間際シリーズに戻ります。ですが公開当時から観たかった映画なので楽しみにしていました。
ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ
ステファノ・ソリマ
2018年6月29日 アメリカ
122分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)

不満もあれど、他にないリアルダーティビジネスっぷりはさすが。
- 「ボーダーライン」のスピンオフという扱いながら、実質続編のようなもの
- 前作と同様にリアルなアメリカの秘密工作の舞台を描く
- 相変わらず素晴らしい主演のおっさん二人を味わう映画
- 終盤の展開がやや不満
あらすじ
ちょっと前作が良すぎたので、それなりに良くても「少し落ちるな」と思ってしまうのはやむを得ないところ。
面白かったし監督交代の割に良い意味で変化を感じないシリーズ感も出てはいましたが、僕としては最後のほうが少し不満の残る展開だったためにやや点を落とした感じです。
アメリカの商業施設で自爆テロが発生。国土安全保障省はメキシコの麻薬カルテルが資金源としている不法入国を利用してテロ実行犯たちが入国したと見て、CIAのマット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)にカルテルの戦力を削ぐため「カルテル同士で争わせ、内乱状態にする」作戦を指示します。
その内容は、とあるカルテルのボスの娘・イザベル(イザベラ・モナー)を誘拐し、敵対する他のカルテルの仕業のように見せかけるというもの。
マットは前作でコンビを組んだコロンビアの殺し屋・アレハンドロ(ベネチオ・デル・トロ)を再度リクルートし、作戦を実行。
イザベルの誘拐及びテキサスからの偽装解放までは順調だった作戦も、メキシコに入国後事態は一変。汚職警官たちに襲われ反撃したマットたちはメキシコとの関係悪化を恐れた大統領から作戦の中止を命じられ、さらにイザベルも行方不明に。一方アレハンドロは、彼女を探すためチームを離れて単身メキシコに残ります。
ほころびの出始めた作戦、その結末やいかに。
生々しい裏工作の現場
スピンオフの定義がよくわからないんですが、これは前作の主人公であるエミリー・ブラント演じるケイトが出ていないから、なんですかね。でも彼女は役柄上再登場が難しそうな気もするんだけど…。
ちなみにこの次作も(スピンオフ扱いなのか正式な続編なのかは不明ですが)予定されていて、そちらではヴィルヌーヴの復帰も噂されていてこれもまた楽しみではあります。
今作については、ケイトは出ていないもののマットとアレハンドロは再登場。どちらもハマり役と言えるダーティな仕事師っぷりが相変わらず素晴らしいですね。しびれました。
前作は主人公(ケイト)が完全に“お客さん”であり、また利用される側だったことで男二人の汚れ仕事っぷりが際立ち、その“正義”の境界線(まさにボーダーライン)の描き方が素晴らしい映画でしたが、今作はその観客的立場のケイトがおらず、善悪の境界線云々みたいなところよりも単純に実行される計画について追っていくだけのお話なので、レイヤーとしては一層浅いかな、という気はしました。
とは言え物語開始早々に法的には完全アウトな計画を打診→実行するマットとアメリカ支配層のやり取りなんかはなかなか他にない“攻め”を感じる辺りがさすが。「実際こういうことあるんだろうなぁ」と想像させるリアルなアメリカの裏工作が伺える内容は大変好みでした。
当然ながら「実際のところ」はまったくわからないので想像でしかありませんが、綺麗事のミッションではない“いかにも”な裏工作感が、創作物の中で最もリアルなCIAを描いているような気がしないでもないというもっぱらの噂です。
銃撃戦にも強い辺りは主人公補正を感じる面もありますが、こと作戦内容や思惑と言った部分では(他と比べて)かなり現実に即した生々しさがあるように感じられるし、その生々しさが事実でなかったとしても「そう感じさせてくれる」ところにこのシリーズの良さ、作りの上手さを感じますね。
求めてるのはそっちじゃないのが…
また今作は誘拐されたイザベルと、メキシコ系アメリカ人少年のミゲルという二人の若者が物語に大きく絡んでくるのも前作との違い。
やっぱり若い子が出てくるとどうしても物語上非情になりきれない部分が出てきてしまう分、前作ほどのシビアさからは少し引いた人間味を感じさせる面がありました。これは良し悪しではなく好みの問題だと思いますが、僕としてはその辺の若い子たちを物語に絡ませてどうこうって言うのは他の映画に任せてこっちはシビアな大人の映画で行ってほしかったなと思います。そこもまた少し惜しかった点。
あとは終盤の展開に少々言いたいことがあるんですが…これは例によってネタバレになってくるのでここでは書きません。
まあなんだかんだ言いつつやっぱりベースのレベルが非常に高い映画(シリーズ)だと思うので、いわゆる「リアルスパイ映画」的な意味では唯一無二かもしれません。派手なスパイではない、しかし国家の内政に干渉していく現代的なスパイ像。
公開時に思いの外微妙な評価を多く目にしていて、「やっぱり監督変わったからイマイチだったのかな」と思ったんですがそうではなく、おそらく終盤の展開についていろいろ思うところがあったんだろうと想像すると同時に同じ気持ちになりました。
くどいようですがものすごくハイレベルでたまらないんですけどね。目指す着地点がこっち(観客)とちょっと違ったのかな、という気はします。
このシーンがイイ!
まあベタですが…ファンサ的に登場した、序盤のいわゆる「デル・トロ撃ち」のシーン(上の予告編のサムネイルになっているシーン)でしょう。端的に言って最高。強烈。
ココが○
非常に嫌な“汚れ仕事”の実際を描いていると思うので、そこがもうたまりません。アメリカ(のCIA)はこういうことばっかしてんだろうな、っていう。
ココが×
中盤までは完璧に近い良さでしたが、終盤はだいぶ落ちます。やっぱりネタバレ項に書いた展開の部分からエンディングまでが少々納得行かない。
MVA
これはねー、難しいですね…。ただ今回はこっちかなぁ。
ジョシュ・ブローリン(マット・グレイヴァー役)
CIAの裏工作担当。つよい。
この方は現役俳優の中でもかなり平均点が高い、どんな映画でも間違いのない演技をする方だと思いますが、今回も例によって素晴らしい。いつも通りなんだけど、そのいつも通りがスゴイと言うか。
今作はマットもアレハンドロも前作より人間臭くなってしまったんですが、その人間臭い感じがデル・トロよりも合っていたかなと言う感じでしょうか。まあどっちも最高でしたけどね、やっぱり。
それとイザベル役のイザベラ・モナー(ややこしい)も今後の活躍が期待されるオーラみたいなものがあってとても良かった。
序盤の高慢な雰囲気から物語が進むと一変して弱さを見せる辺りもお上手。なおショートカットの方が圧倒的にかわいいです。


