映画レビュー0404 『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』

いかにも良さげな匂いがプンプン漂っていたので観たかった作品。

高崎のミニシアターに行った時も宣伝していたんですが、なるほど確かにミニシアターでやりそうな感じの映画です。

マリーゴールド・ホテルで会いましょう

The Best Exotic Marigold Hotel
監督
ジョン・マッデン
脚本
オル・パーカー
音楽
公開
2012年2月24日 イギリス
上映時間
124分
製作国
イギリス・アメリカ・UAE
視聴環境
TSUTAYA DISCASレンタル(ブルーレイ・TV)

マリーゴールド・ホテルで会いましょう

人生も終わりにさしかかった男女が、それぞれの理由で国を出て、高級ホテル「マリーゴールド・ホテル」で余生を過ごそうとインドにやってくるが、写真で見たホテルはどこへやら、そこは意欲だけは人一倍ある若いオーナーが仕切るオンボロホテルだった。彼らは不満を感じつつもインドでの生活を始め、やがてそれぞれの人生に新しいページを紡いでいく。

味わい深い、優しい映画。

7.5

ジジババ俳優好きとしてはたまらないキャスティングのこの映画。

ご存知007の「M」役でおなじみのジュディ・デンチに、「ハリー・ポッター」シリーズの副校長マギー・スミス、あちこちで見かけるトム・ウィルキンソンに、最近個人的に気になる名優ビル・ナイと言った面々。

それぞれに問題や目的を抱えながらインドに集まった人たちが、そこでの人間関係を育みながら人生をリスタートしていく物語です。

最近こういうやや多目の主人公がそれぞれの人生を見つめる物語、って結構ある気がしますが、この映画は舞台がインドである点がちょっと変わっています。新しい環境で、最初は衛生面での心配だったり喧騒だったりを疎ましく感じていながらも、やがて順応して今までとは違う自分を作っていく様はまさにリスタートという感じで、正直こういう老後、憧れます。大変だけど楽しそう。

ホテルがオンボロでどうすんねん、みたいなのも実はあまり物語上大きな意味は無く、あくまでもそれぞれがインドで新たに自分の人生を見つけていくストーリーが中心ですが、そこに若手オーナー役である「スラムドッグ$ミリオネア」でおなじみのデーヴ・パテールが、同じく自分の人生を見つめつつも若さによる少し違う空気を入れているのがポイント。現地人の若者話が入っていることで、「老人連中の新しい国でのリスタート」だけよりも緩急が出ていいのではないかな、と。

その舞台となるインドはご存知の通り、人口も多い上にかなりの経済成長が見込まれる今まさに「熱い国」ですが、その上り調子な熱気が雑多な街から伝わってきて、リスタートのきっかけとしてすごく説得力のある環境である気がして、まさにこの映画の舞台としてふさわしい、なんとも言えない魅力がありました。

当たり前ですがやっぱりそのままイギリスでそれぞれが新しい人生を…と言ってもなかなか新鮮味が無いだけに、「歳を取って異国の地に集まった人たち」という設定がいいな、と。

時折流れる街の喧騒と対比するかのような優雅な風景も味わい深く、インドらしい喧騒とインドらしい優雅さを感じられる、自分も一緒にマリーゴールド・ホテルに滞在している気分を味わえるような異国感が好きでしたねぇ。

やっぱりひとつところに男女が集まれば、それなりにいろいろあるのは当然のことで、そういう人間関係も絡ませつつ、ゆっくりと地味にそれぞれの人生を描く映画になっています。

正直、ラストの方の展開をもっと丁寧にした方が良かったような、ややアッサリ展開させた感じがもったいない気がしたのと、某登場人物のはっきりしない流され方にストレスを感じたりもしましたが、ただそれはそれでリアルな人物像でもあると思うし、そのリアルさ故の地味さ、みたいなものは嫌いじゃないです。

スカッと面白かった! という映画ではないし、感動で涙と鼻水が一緒に流れるような映画でもないんですが、異国情緒と優しくて暖かい空気、そして自分自身の見つめ方を少し振り返りたくなるような、押し付けがましくない人生のドラマという点でなかなか良い映画だと思います。

ちょっと時代的に最近「あくせくするのはやめてゆっくりしようぜ」っていう価値観の提示をたまに見かける気がしますが、そういう雰囲気の映画というか。豊かさとはなんぞや、という問いかけが遠慮気味に散りばめられているので、ゆったりと日曜日の午後なんかに観て、想いをはせる時間を持つのもまたいいのではないかなと。

きっと「イマイチ」って人も多そうな気がしますが、人生経験が多ければ多いほど、歳を取れば取るほど味が出てくる、スルメみたいな映画なんじゃないかなと思います。

もっと歳を取ってからまた観たい。悩んでる時に背中を押してくれそうな雰囲気がある映画でした。

このシーンがイイ!

湖畔のシーンかな。ベタですが、あそこでいろいろ見つめ直す感じがあって。

それとバー(?)の出会いのシーンも良かった。

ココが○

インドの雰囲気と、名優たちの落ち着いた演技。心地良さはかなりのものです。

ココが×

やっぱり終盤はもう少し時間を割いて描いても良かったような気がするんですよねー。バタバタと急ぎ気味に感じてしまい。多分そこに至るまでが緩やかな流れだったから余計に、なんでしょうが。

MVA

これは…非常に悩ましいんですが…。それぞれが良かったんですが、一人選ぶならこの人かなぁ。

ビル・ナイ(ダグラス・エインズリー役)

夫婦でやってきた旦那さんの方。

最近イチオシの俳優さんだから、ってわけでもないですが、落ち着いててかつチャーミングな爺さん、って感じがいいですねぇ。何よりスラっと細くてかっこいいんですよね。こんなにかっこいい人っていう印象が無かったので、意外でした。

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