映画レビュー0483 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
もはやお馴染み、今さらご紹介シリーズ。ずっと観たかったんですが、結構長めなので尻込みしておりました。
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
とても残酷で切ないお話。
観る前までは設定が珍しいだけの「ありがち純愛映画」みたいな感じなのかなーと思っていたんですが、純愛映画の匂いはありつつも、当然ながらもっと深いものでしたゴメンナサイ。
最初は一応赤ちゃんですが、見た目がほぼ爺さんという恐怖の赤子、ベンジャミン・バトン。その見た目のせいで誕生直後にとある老人ホームに捨てられてしまい、拾ったそこの夫婦に子どもとして育てられます。ある日、入所している老人の孫娘・デイジーと出会い、次第と仲良くなっていくわけですが…という序盤。
まずこの「育てられた家が老人ホーム」という設定がすごくよくてですね。場所柄、別れが多いわけです。人の死を見送ってはまた新たな入居者がやってきて、また別れが来るという幼少期(でも見た目は老人)。どこか「グリーンマイル」を思い出させるような切ない序盤ですでに結構ウルウル来ておりました。
老人の姿でありつつも徐々に若くなっていったベンジャミンは、やがて引き船の乗組員として海へ出ていきます。(この時点でもまだ爺さん)そして老人の見た目でいろいろな“人生初”を経験し、成長しながら旅先でも出会いと別れを繰り返し、やがて美しく育ったデイジーと再開し…というお話。
大前提としてはファンタジーになるわけですが、「設定の現実味の無さ」を除けば、真っ当な恋愛系人間ドラマという内容。加えて序盤の展開は少しロードムービーのようなテイストもあって、そこがロードムービー好きにはたまらない部分がありました。
中盤以降は「(周りが)歳を取る」ことと「(自分が)若返る」ことの残酷さがダブルで押し寄せる、なんとも切ない物語でずっとオヨオヨしながら観ていましたね。
やっぱり全体通してちょっと「グリーンマイル」を感じる、人とまったく違う人生を歩む人間の、その特異性故の哀しさがすごく強い物語でした。
単純に考えると、「どんどん若返る」って少し羨ましい気もするじゃないですか。後に楽しみがある感じがいいなー、みたいな。でもやっぱり「共に歳を取る」という当たり前のことが当たり前にできない孤独感をすごくうまく描いた物語だったのが印象的で、これまた違った意味で“時間の大切さ”を考えさせられるような内容だった気がします。
これ、ブラピみたいなイケメンだったからまだ良かったような話で、ブサイク野郎だったら目も当てられない人生になったんじゃないか…と、また別の意味で涙が溢れますね。
こういう特殊な人間はとかく疎外される話になりそうな気もしますが、ベンジャミンの周りの人たちは優しくて理解してくれる人が多く、あまりその「変わった人間」という面に対してネガティブな反応をすることはありません。
ただ、それだけに「それでも自分は違う」という悩みがより深く、大きな悩みとなって彼の人生を動かしていたのがまた切なく、残酷で。
「変わった設定のあり得ない話」ではあるんですが、でも不思議と感情移入できる、丁寧でしっかりとしたドラマだったと思います。幼少期から達観しているような、優しいベンジャミンの性格も良かった。
3時間弱の長尺ですが、あまりそういう感覚もなかったし、割とどんな人にもオススメできる良作だと思います。
このシーンがイイ!
バレエ教室に戻ったシーン、でしょうか。あそこが一番なんかしみじみ泣いちゃったなぁ。取り戻せない感じ、弱いんですよね。
ココが○
チラッと上にも書きましたが、ベンジャミンがすごく優しくて、一度も怒鳴ったり怒ったりしないんですよね。その穏やかな感じがすごく良かった。それ故に、彼が傷ついていく感じがより強く伝わるのかな、と。
ココが×
特に無いんですが、結構グッと来た割にグサッと強く刺さるものがなかった気がします。なんでだろう。自分でもよくわからないんですが。
MVA
この役はブラピしかできないよなー、というお見事な内容で。
特に照明とメイクの功績大とは言え、劇中最後のブラピ登場シーンとかもうホント20代ぐらいにしか見えない、当然ながら見せ方がすごく上手い映画でした。
それは相手役となるケイト・ブランシェットについても同様で、すっげーかわいかったのが落ち着いたおばさんになっていたり、いやはややっぱり女優さんスゲーな、と。
そんな中、悩みつつもこちらの方に。
タラジ・P・ヘンソン(クイニー役)
ベンジャミンを育てたお母さん。
大らかでいかにもな黒人母! って感じが素敵でしたねぇ。
その他ティルダ・スウィントンも相変わらず良かった。
あと幼少期のデイジーがかわいいな、と思ってたらエル・ファニング。やっぱりファニング姉妹の幼少期はスゴイ。