映画レビュー0937 『ガール・オン・ザ・トレイン』
これ公開時に観に行こうか悩んだぐらいだったんですが案の定観に行かないまま時は過ぎ、気付けばもう3年が経っているという衝撃ですよ。
そしていつものごとく、ネトフリ終了が迫ってきたので満を持して観ました。
ガール・オン・ザ・トレイン
エリン・クレシダ・ウィルソン
『ガール・オン・ザ・トレイン』
ポーラ・ホーキンズ
2016年10月7日 アメリカ
105分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)
3女優が魅せる記憶喪失系サスペンス。
- 車窓からいつも見ていた夫婦の奥さんが行方不明に
- アルコール依存症の主人公が酔っ払って記憶をなくした夜に何があったのか
- 女優三人それぞれの演技で魅せる
- ツッコミどころも多少アリ
あらすじ
予告編からは「(車窓から覗いているだけで)まったく無関係の女性が事件に巻き込まれる」みたいな話を想像していたんですが、実際は主人公もモロ登場人物たちの関係者というか周辺に位置する人だったので、「無関係が巻き込まれ系」を期待して観ちゃうとちょっと違うな的な話ではあるんですが、まあじっくり見せてもらって面白かったので割と満足です。
ということで主人公はエミリー・ブラント演じるレイチェル。彼女は毎日往復する電車の中からある家を眺め、妄想するのが趣味の人。
その家にはいつも幸せそうな夫婦がいて、要はイチャコラしてるわけですよ。自分だったら毎日卵投げつけてやるね。もう。ただそんな危険人物が介在できないように最近の電車は窓が開きません。ようできてはるで。(そもそも投げて届く距離じゃないという話)
レイチェルは二人の姿に“理想の夫婦”を見出していて、「私とはまるで違う…」ということで失敗に終わった過去の自らの結婚を思い出しつつ、その二人の姿に癒やしや希望を見ているわけです。
ところがある日、彼女が別の男と抱き合っている姿を目撃してしまった彼女。
許せない…! 私の理想だったのに…!
といきり立って電車を降り、問題の家へ向かう途中で…なんらかの出来事があり、気付けば翌朝血まみれで自室に横たわっていましたとさ。
そしてその理想の夫婦の奥さんは失踪との報道が。果たしてあの日、何があったのか。レイチェルがやらかしちゃったんじゃないの!? どうなの!? というお話です。
皆さんそれぞれ問題アリ
若干あらすじの補足になりますが、実はレイチェルは彼女が毎日眺めている当該地区に“失敗に終わった過去の結婚”当時住んでいたという事実があります。ただし問題の“理想の夫婦”とは面識は無かった模様。
彼女が住んでいた家には別れた夫(ジャスティン・セロー)が再婚相手(レベッカ・ファーガソン)と暮らしていて、この辺の関係もまた物語にちょっと関わってくるんですが割愛。
物語の鍵を握る“理想の夫婦”も、傍から見ている分には幸せそうでもご多分に漏れず問題を抱えていて、特に失踪した奥さんであるメガン(ヘイリー・ベネット)は“裏主人公”的な存在。
彼女は失踪直前までカウンセリングを受けていたんですが、そのカウンセリングを通して過去が語られ、彼女の人生における問題が現在にどのような影を落としているのか、そしてその延長線上にあるのがこの映画で描かれる事件だよというキーマン。いやキーウーマン。
さらにこの辺の登場人物みんなそれぞれちょっとした問題を抱えていて、簡単に言っちゃうとダメ人間的な要素が色濃い。
レイチェルはアルコール依存症でお酒が手放せない上に飲みすぎて記憶を無くしがち。よって「問題の日」も覚えてない。おまけに過去もしばしば記憶を無くした経験があり、それがまた物語にも影響してくると。
メガンもカウンセリングを受けていることからもわかる通り問題を抱えていて、さらにレイチェル元夫であるトムと現妻のアナにもまたいろいろあり…まあ皆さんそれぞれ問題アリなわけです。
たまたま見たネットのレビューでは、「どいつもこいつもダメ人間ってどうなの」みたいな批判もあったんですが、ただ人間誰しもそれなりに生きていれば問題を抱えているのが当然だし、そういう批判はちょっと的外れな気はします。とは言え物語の重要な部分はその各人の問題から導き出されているだけに、その辺の個々人の問題をクローズアップしがちな面はあったような気もしますね。強調して伝わってきちゃうのでうんざりしちゃう、みたいな。
なので当然ですが決して明るい映画ではなく、個々人の経験値によっては過去の経験とオーバーラップして気が滅入るような人もいておかしくはない映画でしょう。
女優陣が見もの
基本は記憶喪失系サスペンスなので、謎めいた“問題の日”への興味(と予想)でグイグイ引っ張ってくれるし、現在と過去描写の程よいバランスから自分の頭の中のピースを組み合わせる作業も楽しめる、なかなか良質なサスペンスだったんですが、ただ最後まで観ると「あれなんだったんや」とか「あれおかしくない?」がそこそこ思い起こされるぐらいには作りの脆さもあり、ギチギチに組み合わさった完璧なパズルとは行かなかったのが悔やまれます。
世間的には「メロドラマの域を出ていない」評が多いようで評価自体もイマイチなんですが、僕は逆に「サスペンス(的な事件)を誘発したメロドラマ」としてはなかなか悪くないんじゃないのと思うんですよね。
特に3人の女優陣が大変素晴らしく、僕がどの人もご贔屓ということを差し引いても彼女たちの演技だけでも見ものじゃないかなと。なのでもしかしたらおっさん向きかもしれない。おっさんの方がガール好きなわけだし。ガールがオン・ザ・トレインしてるわけだし。ヘイリー・ベネットがエロいし。
際立った良さがある映画ではないので、後々何か残るものがあるかと言われると無いよねとも思うんですが、ただ漠然とした「なんか暗いサスペンス観たい」的な欲求には十分お応えできる映画ではないかと思います。という漠然としたまとめ。
このシーンがイイ!
うーん…ここが、っていうのはイマイチ思いつかないんですが…ラスト近くのレベッカ・ファーガソンの表情かなぁ。どの場面、って書いたらアレなんで書けないんですが、「やっぱりレベッカ・ファーガソンいいなぁ」と思ったことは記しておきたいと思います。
ココが○
全編通してなかなか緊張感もあり、先行きが見通せない面白さもあったと思います。
特にメガンの過去の現在への織り込み方が良いなと。
ココが×
最終的には結局アレじゃねーかとかアレ案件じゃねーかとかその辺の不満はあるでしょう。ネタバレになるから書けないんだけど。
まあ差し障りないところで言えば、とにかく警察がボンクラでいる意味がないというのは訴えておきたいですね。行動制限の置物にすらなってないし、マジでいる意味がわからない。
MVA
ということで女優3人の名演が光る映画だったと思います。
世間的にはエミリー・ブラントの演技だけは誰からも称賛されているそうで、確かにくたびれ感や気弱そうな雰囲気等相変わらず見事だし、今まで観てきた役柄とはまた違った雰囲気で素晴らしかったんですが、今回はこちらの方にしたいと思います。
ヘイリー・ベネット(メガン・ヒップウェル役)
失踪した“理想の夫婦”の妻。
もーね、本当にどの映画でも「なんかエロい」でおなじみの彼女ですが、今回は「なんか」どころか「ちゃんと」エロい。たまらん。
元々気になる存在ではありましたが、今作をもってめでたくヘイリー・ベネット教に入信が決定致しました。最高。世界一のエロかわいい女優でしょう。(独断と偏見)
で、彼女はエロいだけじゃなくて演技も素晴らしくお上手なのが良いんですよね。涙を流すシーンなんてものすごく響きましたよ。こちとら。他のシーンは下半身に響くし。最高じゃないヘイリー・ベネット。
今回の入信によって一刻も早い「ハードコア」の鑑賞が待たれます。近々観ないと…!