映画レビュー0662 『隠し砦の三悪人』

本日はBS録画より。

かねてより観てみたいと思っていた黒澤映画をダダっと放送していたタイミングがあったので、概ね録画しておきました。まずはこちらから。

ちなみに後年黒澤版ではないリメイク版も作られたようですが、こちらはオリジナルの方です。モノクロです。

隠し砦の三悪人

The Hidden Fortress
監督
脚本
菊島隆三
黒澤明
出演
藤田進
上原美佐
音楽
公開
1958年12月28日 日本
上映時間
139分
製作国
日本

隠し砦の三悪人

褒賞で一稼ぎしようと戦に参加した百姓の太平と又七だったが、何もできずに捕虜となった後、暴動に紛れて脱走する。逃走中、焚き火に使った薪から金の延べ棒を発見した二人は、大喜びで他の薪を探して歩いていたところ、一人の屈強な男と出会う。

フリも気持ちよさもバッチリ!

8.5

Wikipediaによると「黒澤映画の中でも特に娯楽性の強い作品」とのことで、ナルホド確かに時代劇ではあるものの今の時代に観てもしっかり“娯楽”している、素晴らしい内容に思わず唸りました。約60年前の映画ということでところどころ気になる点はあるものの、その辺は最後まで観るとスカッと忘れられる「仕舞いの良さ」があり、思いの外大満足致しましたでございますことよ。

物語は「一稼ぎしようと戦に参加したもののまったく振るわずに終わってしまった百姓コンビ」の姿からスタート。この戦は秋月家と山名家という二人の大名の戦いなんですが、結果山名家が勝って秋月家は滅ぼされてしまいます。ガメオベラ

秋月陣営についたこの百姓コンビは捕らえられ、埋蔵金探しの苦役に動員されられるも捕虜たちの暴動で逃げおおせ、逃げ途中にたまたま金の延べ棒を発見し「もっとあるに違いない」と欲張って探していたところ一人の屈強な男に遭遇、その彼がどうやらもっと金の延べ棒を持ってるいらしい、彼と一緒に隣国に逃げられれば大金持ちになれそうだ…ということで一緒に逃げることになった3人のお話なんですが、この“屈強な男”というのが、先の戦で敗れた秋月家の侍大将・真壁六郎太であり、彼の使命は先の戦で生き残った雪姫というお姫様を無事隣国の秋月家同盟国・早川領まで逃げさせる、というもの。そしてその金の延べ棒は秋月家再興のための軍資金なんですが、さすがに六郎太と姫の2人+馬ですべてを運ぶのは無理があることもあり、太平と又七を運び屋として利用しつつなんとか秋月家を再興しようぜ、という逃亡劇でございます。

んで、当然姫だとわかっちゃうと逃げる道中もいろいろ問題がある(そもそも山名に狙われている)ので、姫は「おし(唖)」、つまり口がきけない人のフリをして旅をする作戦で、六郎太以外、つまり百姓コンビも含めて彼女が姫であることは知らずに旅が進みます。この辺がまたなかなかイイスパイスになっていて面白いわけですが、まあ細かい部分は観て頂くとしましょう。

僕も観る前に「スターウォーズ(エピソード4)に影響を与えていたタイトル」だということだけは知っていたんですが、しかし悲しいかなスターウォーズのエピソード4は観たのがもう多分30年近く前の話なのですっかり覚えておらず、「ナルホドそうなのね」以外の感想が出てこないという悲しみ。何でもこの映画の百姓コンビ・太平と又七はそれぞれC-3POとR2-D2のモデルになったと言われ、また雪姫の男勝りな性格はレイア姫に受け継がれ、ラストシーン等にその影響が見て取れるとのこと。

さて、この映画をフラットに現代人的目線で観た場合、やはり見どころ=監督が力を入れていたであろうシーンの数々に関しては、今からすると結構尺が長めで冗長に感じられる気はしました。たっぷり時間を使ってたっぷり見せます、という感じで。

この辺はおそらく現代と当時における娯楽の多さの違い、娯楽に割ける可処分時間の違いが影響しているんじゃないかなと。今はやっぱり(娯楽に限らず)良くも悪くも飽きやすく、次から次へと目まぐるしく変化していく時代なので、どうしても長いな、もうちょいテンポ良くていいのにな、と思う面は多々ありました。上映時間は約2時間20分ですが、今の時代に作るなら間違いなく2時間には収まっていたでしょう。

また、これはもう致し方のないことではありますが、やはり録音環境の悪さなのかややセリフが聞き取りづらい部分がある点と、時代劇特有の耳慣れない言葉が多少なりともあるので、邦画とは言え言語的にやや理解しにくい面があったのも事実です。上に書いた「唖」も、耳で「“オシ”になっていただこうと思っております」と聞いたときは、「おし? お忍び? …シノビってこと? じゃあくノ一? 太ももでハァハァ?」と若干期待したこともここに告白しておきましょう。

この言葉と聞き取りづらい音声面での問題は「日本のいちばん長い日」と同じような問題点なので、古い邦画にはどうしてもそういう部分が出てくるものなのかもしれません。洋画に関しては字幕なので、逆に今と昔であまり理解のしやすさ・しにくさに違いがないことが観やすさにつながっている面もあるんでしょうね。

そんなこともあって、序盤はあまり乗れずにいた部分もあったんですが、中盤以降から最後までは先の気になる展開にグイグイと惹きつけられ、結果的には大満足。素直に「面白かったー!」と思えた映画でした。

さすが世界のクロサワだぜ、と(現状)たった2作しか観ていない分際でのたまっておきます。観てよかったー。

このシーンがイイ!

火祭のシーンは良かったですね〜。人の多さの迫力もあったし、姫を始めとした嬉しそうな主要人物たちもそうだし。あとは当然、ラスト直前も良かった。

それと六郎太の馬に乗りつつ切り伏せる殺陣もかっこよかったし、その後の一騎打ちもアツい。ちょっと長かったけど。

ココが○

伏線もいろいろ散りばめつつしっかり後々効いてくるストーリーの巧みさは今観ても素晴らしいですね。

あと太平と又七の絶妙なキャラクター。ダメ人間だしクズなんだけど憎めない感じがグッド。

それとマスゲームのような大量のエキストラを使った迫力あるシーンが随所にあった点も見逃せません。

ココが×

上に書いたように、やや聞き取りづらい音声と、理解しにくい一部の言葉。そしてちょーっと冗長な見せ場の数々、というところでしょうか。ただこれは全部時代故に仕方ないところだとは思います。

MVA

三船先生は相変わらずの迫力で文句なし、さすがでしたねー。この人のセリフだけはまったく聞き取りづらいことがなかったんだよな…やっぱり発声からしてモノが違うんでしょうか。スゲェ。太平と又七も本当にそれっぽくて見事でしたが、気になったのはこの人でした

上原美佐(雪姫役)

一本調子な演技ではあるものの、凛とした雰囲気と目力はまさに姫様感たっぷりで素晴らしかったです。実際にこんな姫いただろうな、いい国作りそうだな感がハンパない。

この映画がデビュー作で、さぞや大女優になったんだろう…と調べたら、「私には才能がない」と言ってたった2年で引退したとか。ううむ、もったいない…。

ただ、だからこそこの映画が貴重な出演作として今も光り続けるというような部分はあるんでしょう。

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