映画レビュー1331 『盗まれたカラヴァッジョ』

本日はJAIHOをポチポチ眺めて「面白そげだね」と思ったこちらの映画をチョイス。

盗まれたカラヴァッジョ

Una storia senza nome
監督
脚本

ロベルト・アンドー
アンジェロ・パスクイーニ
ジャコモ・ベンドッティ

出演

ミカエラ・ラマゾッティ
アレッサンドロ・ガスマン
レナート・カルペンティエリ
ラウラ・モランテ
イエジー・スコリモフスキ
アントニオ・カタニア
ガエターノ・ブルーノ
マルコ・フォスキ
レナート・スカルパ

音楽
公開

2018年9月20日 イタリア

上映時間

110分

製作国

イタリア・フランス

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

盗まれたカラヴァッジョ

途中までの期待を返してほしい消化不良感。

6.5
盗まれた絵画の顛末が映画化決定、直後に脚本家が襲撃される
  • 現在も未解決である「キリストの降誕盗難事件」の犯人についてタレコミを受け、映画化が進められる
  • しかし脚本家が襲撃され意識不明の重体、それでも映画製作は進むが…
  • 中盤までのミステリー感は上々で、先の気になる面白さ
  • しかし最後はウヤムヤになってオシャレに終わる不可解な映画

あらすじ

途中まではかなり好みで楽しく観ていたんですが、最後になって「は?」って感じでね。嫌になっちゃったわけですけども。

映画脚本家、アレッサンドロ(アレッサンドロ・ガスマン)は売れっ子の有名人でヒット作を連発していますが、実はここ何年も脚本はまったく書いておらず、実際に書いているのはとある映画製作会社の社長秘書を務めるヴァレリア(ミカエラ・ラマゾッティ)だったわけですよ。

この日もアレッサンドロに「まだか」とせっつかれるヴァレリアは彼を適当にあしらい、その帰りにちょっと謎めいた出会いを経てとある爺さんと知り合います。

爺さんは今も行方不明のカラヴァッジョの絵画「キリストの降誕」を盗んだのはマフィアで、その経緯について彼女に教える変わりに脚本にするように言います。

興味を惹かれたヴァレリアは言われた通りにプロット(要約)を書き上げ、アレッサンドロに提出。アレッサンドロはそれを製作会社の社長(つまりヴァレリアの上司)に見せたところ「最高傑作だ!」ってことでトントン拍子に映画化の話が進みますが、ある日「集中して脚本を書くため」と嘘こいてバカンスまっしぐらのアレッサンドロが誘拐され、意識不明の重体で見つかる事件が発生。

ヴァレリアはまだすべての脚本を書き終えておらず、しかし動き出した映画は止められない状況の中、どうなるんでしょうね…!

期待を膨らませる前半、放り投げる後半

ちょっと調べたところ、映画では「キリスト降誕」と言っていますが実際は「キリスト“の”降誕」のようです。細かいことですが一応。まあ字幕の問題ですね。

カラヴァッジョが描いたこの「キリストの降誕」は、1969年に盗難されて以来行方不明となっているそうで今も未解決事件のままらしいんですが、それを「実はマフィアが犯人で…」と着想して膨らませたのがこの映画、ということになります。

当然ながら見つかっていない以上その真偽は不明なんですが、なんとなく“ありそう”な真犯人説と映画製作を絡め、さらにそこに「ゴーストライター問題」と「謎の爺」もかぶさってきて多層的なミステリーが大層面白いぜ…! とワクワクしながら観ていたものの、最終的には「そこで終わるのかよ」というなかなかのガッカリっぷりでひどく消化不良に鑑賞を終えました。

ちらっと見たフィルマークスのとあるレビューには「監督が死んで別の人に代わったのかと思うくらい」とあってわかり味が深い。それぐらい後半…というか終わらせ方がひどい。ウヤムヤにも程があります。

いろいろ話を膨らませたものの収拾するには力量不足な感があり、なかなかここまで「サーセン力尽きました」みたいな映画も珍しいなと感心するぐらい、観客の期待…つまり前半で力を入れていたミステリーに対する後半の噛み合わなさがやるせない。

散々「土にこだわりました、水にこだわりました、機械も使わず手で収穫しています」と最高級小麦粉を使用してるぞアピールしつつ、さぞかし美味しいうどんが出てくるんだろうと思って待ってたら寿司が出てきてえー、みたいな。小麦どこ行ったのっていう。グルテンフリーでしたね(苦笑)みたいな。(お得意のうどん例)

途中までは…というか終盤までは本当に楽しめていただけに、余計に期待外れ感が増してしまい悲しみが増幅される不幸。

やっぱり映画は落とし方、オチが大事だなと改めて思いますね…ほんとにね…。

ちなみにカラヴァッジョは殺人を犯した人としても有名で、昨今の「犯罪を犯した人物の関わった作品を今まで通りに扱って良いのか」的な話が出てくるときにも引っ張り出されることでもおなじみです。「それを言うならカラヴァッジョの絵を飾っててもいいのか」みたいな。

つまり仮にこの映画で扱われているカラヴァッジョの「キリストの降誕」が見つかったとして、それを飾ろうとすると「人殺しの絵なのにおたくの博物館で飾っていいんですか」みたいな異論が出てきかねない、という…。

めんどくさいですね。

おすすめするのも難しい

男女間の価値観みたいなものもやっぱりちょっと日本とは違ってヨーロッパ的で、そこが面白くもあるんですがその扱いを大きく持ってきすぎちゃったがために期待と違う方向に着地してしまった感もあり、「フランス(イタリア)人さぁ〜」みたいな感覚もありました。

正直フランスもイタリアも変わんねーよ、って感覚で言ってますがこれはきっと「日本も中国も変わんねーよ」って言われるのと同じぐらい失礼なんでしょうね。申し訳ない。

まーでも本当に良いところを思い出せないぐらいにガッカリしちゃったので他に書くことも特に無く、おすすめするにも難しい微妙な映画という感想です。

110分中80分ぐらいは楽しかったので悪くはないんですが、でもやっぱり観終わったあとのガッカリ感を考えれば「観てね」とも言えない悲しみ。

反動で椅子からずり落ちるようなミステリー・サスペンス系の映画が観たいですね…。「インセプション」でしかずり落ちたことないけどさ…。

このシーンがイイ!

全体的にやや暗めの映像はとても良かったんですが、シーンで言うとヴァレリアが誘惑するシーンですかね。

わかりやすいなぁと思いつつもそれでも乗っちゃうのが男だよね、となんだか悲しい笑みを浮かべながら納得してました。

ココが○

抽象的で申し訳ないですが、劇伴がヨーロッパの映画っぽい雰囲気があって好きでした。

ココが×

やっぱりオチ…というか終わらせ方というか。結局雰囲気映画なのかな…。

MVA

これはやっぱりこの人かなぁ。

レナート・カルペンティエリ(アルベルト・ラック役)

事件の真相を知っていると思しき謎の爺さん。宮崎駿似。

万能すぎて笑っちゃうんですが、それでも爺さんの存在感があるのは良いことです。

あとヴァレリアのお母さん(ラウラ・モランテ)も綺麗ですごく良かった。

最初ヴァレリアと二人のシーンで「ああ、同性カップルかな?」と思ったぐらい歳の差を感じさせない綺麗さでした。

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