映画レビュー1029 『ワールド・ウォーZ』
これもまた配信終了が迫ってきていて、ゾンビものは好きではないので悩んだんですが…映画つながりの友人に「観ろ!」と言われたのでそれじゃあ、と観ることにしました。
ワールド・ウォーZ
マシュー・マイケル・カーナハン
J・マイケル・ストラジンスキー
『WORLD WAR Z』
マックス・ブルックス
ブラッド・ピット
ミレイユ・イーノス
ダニエラ・ケルテス
ジェームズ・バッジ・デール
ファナ・モコエナ
ルディ・ボーケン
デヴィッド・モース
エリス・ガベル
ピーター・カパルディ
ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ
ルース・ネッガ
モーリッツ・ブライプトロイ
2013年6月21日 アメリカ
116分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)
いろいろ中途半端。
- “ゾンビウイルス”を根絶するべく奔走する国連職員の話
- 世界的に流行し、心休まる場所がない大変な状況
- ゾンビパニックというよりは家族愛メインっぽいもののどっちも中途半端
- 主人公のチート感強めでそこも残念
あらすじ
公開当時にゾンビがワラワラ壁を乗り越えようとする予告編を観て「なんかすごそう」と興味を持ったものの…そんな見せ場はあの程度だったので内容以前に結構がっかりさせられました。
同時に内容も…いろいろ中途半端で早い話が「イマイチ」感が強い映画だなというのが正直なところ。
主人公は我らがブラピ演じるジェリー・レイン。彼は国連職員として各国の危険地帯を飛び回るお仕事をしていたようですが、そんな生活に嫌気が差したらしく現在は転職しております。
ある日妻と二人の娘を連れて車に乗っていたところ大渋滞にハマり、どうも様子がおかしいぞ…と外に出ると大量の人々が逃げ惑ってパニック状態に。これはまずい、ってことで家族を連れてその場から逃げ出した彼のもとに、友人であり今も国連に所属するティエリーから「マジ大変でお前の助けがいるから迎えよこすわ」と連絡が。
なんとか逃げ延びたレイン一家、国連が管理する船に保護された後、「ウイルスの原因究明のため、調査に赴いてくれ」とオファーを受けるジェリー。「もうやめたんデー」と一度は断るジェリーですが、「断ったら家族はここにいられないんじゃないですかね」と半強制的に協力を余儀なくされることに。
かくして“元職”に復帰したジェリー、若きウイルス学者や護衛の精鋭部隊たちとともに、最初に「これゾンビやわ」と報告してきた韓国の米軍基地へ向かいますが…あとはご覧ください。
設定の割にリアリティを求めたおかげで中途半端に
オープニングで件のウイルスが流行していく様を簡単に流してくれるんですが、その広がりっぷりや初期楽観視からの深刻化等が結構今の世界と似たものがあり、公開から数年後になって「創作ゾンビものだね」なんて笑っていられないリアリティをまとっているのがなかなか面白いところです。
また予告編からもわかる通り、よくある“遅すぎて逃げるのがたやすい”ゾンビとは違ってかなり俊敏で走り回るので、ホラー的要素よりはパニック映画のような感覚が強い映画だと思います。大量に走り回るゾンビはどことなく津波っぽくもあり、観た感じ「ゾンビに襲われて大変」というよりはものすごい天災に襲われて大変、的なスケール感があり、その辺りは他にないこの映画の特色のような気もします。
ただ…そのスケール感で圧倒してくれるのも序〜中盤ぐらいのもので、中盤以降は「解決のための行動」のフェーズに移行するために比較的静かでややスリラーっぽい流れに。
それはそれでいいものの、しかしさしてそのフェーズの見せ方に特徴があるわけでもないし、ストーリー展開が秀逸なわけでもないしで…「なんかフツーの映画になっちゃったね」という印象が拭えません。
予告編を観て僕が勝手に期待しちゃったのも悪いんですが、この映画は「今までにない規模のゾンビが圧倒的な人(ゾンビ)海戦術とスピードで攻め込んできて大変そうだぜ」的な、どちらかと言うとアクション寄りのコエーコエー系を期待していたんですが、思いの外しっとりしっぽりと「世界を救うぜ」的に奔走する主人公の姿がいろいろ既視感のある内容で、せっかくの特色を活かさない方向に持っていっちゃったね感がとても残念ではありました。
同時にその我らがブラピ演じる主人公なんですけどね…。
「元国連職員」という肩書からは想像もつかないようなチートキャラで、まあ普通に考えればとっくにゾンビになってるでしょ的な場面でもギリギリ生き延びては最終的に(なぜか)世界を背負う最重要人物になっているという…なかなか設定込みで強引なキャラのような気がしないでもなかったんですよね。
ああいうキャラならそれこそ元特殊部隊とか、それかもう「ランペイジ」みたいにウイルス学者兼特殊部隊員みたいな強引な背景を用意しちゃえばいいのに、普通の(とは言え紛争地専門の特殊な職員だったようですが)国連職員としては結構違和感のあるキャラだったので、最初の設定からして少し違うんじゃないのかなと。
もっともこういう国連職員もたくさんいるかもしれず、単純に僕がイメージする(おそらく一般的な)“国連職員”のイメージと乖離しているだけの可能性はあります。それでも無理やり生き残って人類の命運を握り過ぎだとは思うんだけど。
ゾンビ映画の割に「ウイルスで発症」だったり最終的な帰結の仕方だったり、基本的にはリアリティに重きを置いている映画だと思うんですが、それにしては「一介の元国連職員がすべてを左右する」のは嘘くさいし、おまけにリアリティを重視したせいで「ゾンビらしからぬ」特性を活かせいないアンマッチ感みたいなものもあるし、さらに家族愛をベースにした物語なので途中いきなり出てきたヒロイン的な存在の女性兵士も微妙な存在でさして活かせないしで、いろいろ中途半端というか分裂しちゃってる映画のように見えましたね。そこがとてももったいないなと。
予告編がピーク系
結論としては「予告編で感じた面白そう感に届かない」ガッカリ映画という回答をご用意しておりますが、ただそこまで言うほど残念な映画というわけでもなく、物語自体はそれなりにしっかり破綻せずにまとまってはいるので、あくまで観る人次第なのかもしれません。
ただ「家族愛映画」であれば当然もっと良い映画は山ほどあるし、ゾンビ映画にしてももっと良い映画はあるだろう(詳しくない)し、中途半端に合体させちゃってうっすら残念感をまとってしまった映画なのも事実だと思うので、もうちょっと尖った映画にしても良かったんじゃないのかなーと思いました。
多少は描かれていたものの、身近な人が被害に遭うといった悲しい展開もあまりなく、危機感もそこまで感じられないので、やっぱりいろいろ微妙なんですよね。なんとも残念…。
このシーンがイイ!
序盤、ゾンビの血を浴びたジェリーが屋上の縁に立ってカウントするところ、いいですね。「ゾンビになったらすぐ飛び降りる、家族は犠牲にしないぞ」っていう献身性が垣間見えて。
ココが○
やっぱりワラワラ大量に走り回るゾンビ、っていうのはなかなか新鮮だし脅威で良かったんですよ。ただそこが活かしきれてないなというのが気になったところで。
ココが×
さすがに主人公がチート過ぎ。ゾンビ回避はまだしも、途中のアレは絶対死んでるでしょ。死なない上にその後動き回って「ジャック・バウアーかよ!」っておなじみのツッコミ出ましたよ。
MVA
こう言っちゃーなんですが、ブラピ以外は小粒な印象のメンバーの中、この人にしましょうか。
ダニエラ・ケルテス(セガン役)
イスラエル国防軍女性兵士。坊主。
“中途半端なヒロイン”としてジェリーと行動をともにすることになった人ですが、まあ意思の強そうな雰囲気その他なかなか良かったと思います。
坊主だったけどすごく整った顔してそうだったし、本人はとても美人そうな予感。他の役でちゃんと観てみたいですね。