映画レビュー1424 『用心棒』

アマプラはちょっと映画が探しづらいというか選びづらいというか、観たい映画を探すのが面倒なのでこの日は録画の消化しようってことでこちらの映画。

用心棒

Yojimbo
監督
脚本

黒澤明
菊島隆三

出演
音楽
公開

1961年4月25日 日本

上映時間

110分

製作国

日本

視聴環境

BSプレミアム録画(TV)

用心棒

若干ゲスい主人公像が逆に良い。

8.0
街を二分する勢力双方に自らを売り込んで価値を高める用心棒
  • 実力は折り紙付き、ついた方が勝つっぽい用心棒が双方に自分を売り込む
  • なかなかどっちにつくと言わず、策を弄して対立を煽って価値を釣り上げるゲスっぷり
  • 娯楽に徹した観やすい時代劇
  • ただやっぱりセリフの聞き取りづらさがストレス

あらすじ

久々の黒澤映画。何も考えずにこっちから観ましたが他にも鑑賞候補にしていた「椿三十郎」は続編的作品らしいので危なかったナイアブ。

とある宿場町。そこでは清兵衛一家と丑寅一家が年がら年中抗争を繰り広げ、一番儲かっているのは棺桶屋という始末でございます。
そこへやってきた一人の浪人、桑畑三十郎(三船敏郎)。彼は飲み食いするお金もなく、身一つ刀一つの浪人ってことで用心棒でもやって稼ぐか…と丑寅一家の子分を挑発し、あっという間に3人を切り倒します。
その様子を見た清兵衛一家は「あいつがいれば勝てる」とばかりに彼を自陣営に引き込もうと交渉し、三十郎も承諾。
しかしその裏で「金を払ったあとに殺せばいい」と密談していたところを三十郎に聞かれてしまい、結局決裂。
その足で丑寅一家に行った三十郎は売り込みつつ態度を保留、こうして「三十郎はどっちにつくのか」でやきもきする宿場町。
その間いろいろあって双方の不信感を募らせ、より激しい抗争を誘発しようと画策する三十郎。果たして勝利の女神はどちらに!?

主人公のキャラの良さ

ほぼ宿場町のワンセットで展開する時代劇。登場人物がややこしいこともなく、規模も小ぢんまりとしてるし関係性も明瞭だしで非常にわかりやすい内容の娯楽映画になっております。
なんでもWikipediaによると黒澤プロダクションが前作「悪い奴ほどよく眠る」の興行的な失敗を受け、わかりやすくヒットが見込めそうな娯楽作、的な感じで作ったそうです。なのでこの言を採用するのであれば「狙って作った大衆映画」みたいなものなので、まあ面白くて当然だけど深みはないよね、みたいな感じでしょうか。
時代劇の割に時代考証等も脇においてとにかく娯楽優先らしいんですが、時代劇にはまったく詳しくないので特段違和感もなく普通に「ほーん」と観ていました。細かいところが気になる人には気になるところがあるのかもしれません。
三船敏郎演じる主人公の“用心棒”は、とにかく腕には自信があって実際強いようですが、性格的には意外とゲスいというか、両方に「俺は強いぞ」と売り込みつつ両方を焚き付けて「(自らの)需要を喚起する」ようなこともやっていて、その辺の小狡い立ち回りが新鮮で面白かったですね。あんまり主人公っぽくないと言うか。
さらにその後、終盤近くでもなかなか見ようによってはいい感じのゲスさを発揮してくれるので、もうそういう人っていうキャラクターなんでしょう。いわゆる“侍”っぽくない。
もちろんロジックとして「それが得」だったり本人にとっての正解だったりというのはわかるんですが、あんまり後先や周辺事情考えずにやってしまう辺り若干「脇の甘い策士」っぽさも感じられ、それが娯楽としてよく出来ているという面白いお話だと思います。

ということで話としては面白かったんですが、やっぱりというか…例によってセリフの聞き取りづらさもかなりのもので、こればっかりは仕方がないにせよどうにかしてほしいところ。
母国語で字幕が欲しくなるってどういうことやねんとも思うわけですが、ブルスカつながりの映画垢友人から黒澤映画は「臨場感優先で同時録音していたために公開当時からセリフが聞き取りづらいと不満が出ていた」という話を聞き、なるほどと納得した次第です。
じゃあ当時の他の映画は全部のセリフがアフレコだったのか? とか疑問も湧いたんですが細かいところはわかりません。ただ当然この頃の録音環境は今ほど良い訳がないのは当然(ピンマイクもないでしょう)なだけに、現場で同時録音は音響的に相当厳しかったのも事実でしょう。
まあそれはそれとして監督の意向は尊重して然るべきで良いんですが、要は何度か書いているように今どき音関係の編集技術も向上しているのは間違いないだけに、配信元は映像ばかりでなく音響面での改善にもう少し力を入れてほしいんですよね。
映像面と比べてお金にならないのもよくわかるんですが、特に名作と言われているこういった映画は後世に残す責務としてもそういう作業もやってほしいなと思うんですが、ただアメリカの映画でも特段そういう作業をしていると聞いたこともないのでやっぱり音響面は軽んじられているのかな…と悲しくなるところです。

マジでセリフを聞きやすくしてほしい

あとは例によって観てチョーダイ系です。
本当に申し訳ないんですが最近忙しくて鑑賞からレビューを書くまで時間が空いてしまうことが多く、語るべきことがあんまり出てこないという悲しみに包まれております。
まあ所詮どこまで行っても自分用のメモの延長線上でしかないのでコレでいいかと甘えておりますけども。
とにかく一番言いたいことは「音なんとかしろ」です。よろしくどうぞ。

このシーンがイイ!

ベタですがラストが好きでした。

ココが○

語弊があるかもしれませんが「普通に面白い」ところ。なかなかこれだけ観やすい時代劇も珍しい。

ココが×

やっぱりセリフの聞き取りづらさ。モブが何言ってるかわからねーよ!(モブ呼ばわり)

MVA

おなじみの面々が珍しく悪役をやっていたりと配役も面白いところですが、この人にします。

東野英治郎(居酒屋の権爺役)

三十郎が町に来て最初に世話になる爺さんで、結局最後までなんだかんだ出てくる重要キャラ。実はある意味でヒロインです。
東野英治郎はいつもいいなと思うんですが、今回も相変わらず素晴らしい。この役はこの人だな、と納得感溢れるキャスティングでした。
三船敏郎も当然良かったんですが、結局この人いないと何も出来なかったのでは? という重要な役回りということもあってこちらに。

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