映画レビュー1174 『ゼロ・モティベーション』

今回はJAIHOより、イスラエルの映画です。記憶にある限りではイスラエル映画って初めてかもしれない。

ゼロ・モティベーション

Zero Motivation
監督

タリア・ラヴィ

脚本

タリア・ラヴィ

出演

ダナ・イヴギ
ネリー・タガー
シャニ・クレイン
ヘリ・トゥイト
Meytal Gal
Tamara Klingon

音楽

ラン・バーニョ

公開

2014年6月26日 イスラエル

上映時間

97分

製作国

イスラエル

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

ゼロ・モティベーション

クセ無く観やすく、意外と深い。

8.5
やる気の無い事務担当女性兵士たちの日常
  • 2人の親友コンビ他数人の事務担当女性兵士たちの日常と恋愛とその他いろいろ
  • 3部構成で彼女たちの日常と変遷を描く
  • やや青春映画っぽさもありつつ、良い意味で意外なほど欧米映画っぽい観やすさ
  • イスラエルの国防的に問題がないのか心配になるぐらいにゆるい

あらすじ

初のイスラエル映画と言うことで少し身構えてはいたんですが、これが思いの外「普通に観やすい」映画だったのでビックリ。なかなか面白く、いい映画でしたね。

砂漠にある基地の管理部門で働く女性兵士・ダフィ(ネリー・タガー)はとにかく今の基地が嫌で嫌で仕方がなく、都会のテルアビブ基地に勤務したいと異動願いを提出。やがてテイラと名乗る女性兵士が新たに管理部門に配属されたとやってきて、自分の異動が叶ったんだとウキウキで引き継ぎします。

が、実はテイラはかつて“遊ばれた”男兵士にマジボレしたために偽の身分証でやってきたただの民間人であり、ダフィの異動は叶わなかったことが判明。

かくして砂漠の基地で“シュレッダー係”としてろくに仕事もせず、昼寝したり同僚で親友のゾアール(ダナ・イヴギ)とマインスイーパーの記録更新に躍起になったりしながら日々を浪費するダフィ。

一方ゾアールの方はいまだに“未経験”であることに焦りを募らせていて、初めての相手を探すべくいい男を探しますが…あとはご覧ください。

観やすくて面白い、でも珍しい

最初に書いた通り、この映画は時系列順に3部構成になっていて、第1部はダフィの「異動未遂騒動」を皮切りに彼女たちの基地の生活や同僚たちをご紹介するフェーズ、第2部はゾアールを主人公に彼女の「処女喪失作戦」を描き、第3部はダフィとゾアール2人を中心にやや立ち位置の変わった彼女たちを描くような形になっています。

この映画の中心メンバーが所属する「管理部門」は、字面通りいわゆる一般企業で言えば総務のような部署で、書類関係を管理していたりお偉いさんの会議にお茶を出したり廃棄書類をシュレッダーにかけたり、もう本当に兵士っぽくない普通の総務っぽい雰囲気。一部では「ショムニっぽい」と言われているようですが僕は未見なのでようわかりません。ですが多分そんな感じです。

そりゃ基地だろうがこういうお仕事はあるんでしょうが、映画で描かれる基地と言えば戦争の前線だし、兵士と言えば武装兵士が当たり前だったのでまずこの設定がすごく新鮮。

そういう部署のお話なので、ぶっちゃけ基地である必要性も無いっちゃ無いんですが…ただやっぱり基地特有の事情もいろいろ絡んでくるし、兵役だからこその閉塞感みたいなものも物語に影響を与えているので、かなりゆるいお仕事コメディっぽくはありつつも他で観ないニッチなところをいい感じに突いている映画のような気もします。

しかし「お仕事コメディ」っぽい一方で、同時に青春映画の雰囲気もあって、特にエンディングなんかは青春映画のそれっぽい終わり方でなかなかこれが良かったり。ほとんど観る機会のない国の映画なのであまり期待していませんでしたが、全体的によくまとまっていて非常に観やすく、きっと監督は非常に優秀な方ではないかなと思います。

正直最初に言われなければ、そして使われている言語が慣れていないものでなければ、普通に欧米の映画と言われても疑問を抱かないんじゃないかと思うぐらいに違和感のない、見慣れたテンポの映画なので敷居も低く、なるほどこれはなかなか良い映画を持ってくるねとまたもJAIHOのセンスにしてやられました。こういう触れる機会の少ない国の映画が観られるのは本当にJAIHOサマサマですね。

上司もまた良い

また主人公の2人以外にも、ロシア人のクールな同僚イレーナ(ちょっとレベッカ・ファーガソン似)や、彼女たちに翻弄されつつも威厳を保とうと腐心する上司ラマなど、脇役陣のキャラも良い。

特に上司のラマは彼女視点で進行する時間もそこそこあり、部下の不甲斐なさから「そうなっちゃうのもわかるわー」と同情的に見える一方で、「そりゃ上司としてそれじゃダメでしょ」と思ってしまう人間臭さ(小物感とも言う)がとても良くて、果たして上司がダメだからこうなってしまったのか、はたまた部下がダメだからこんな部署なのか…とニワトリタマゴ的な管理部門のダメさに観ている方も頭を抱える楽しさがありました。他人事だとマジ楽しいぜ。

そんなわけで非常にオススメな戦争コメディ、ジャンル的にほんのり「M★A★S★H」っぽさも感じるとか感じないとか…。

観られる機会があったら、ぜひ。

このシーンがイイ!

これはやっぱり“銃撃戦”のシーンですね。あんなゆるくてバカバカしい銃撃戦初めて見たしめっちゃ笑った。最高。

ココが○

観やすくて面白く、最後は余韻のある終わり方。お見事です。

ココが×

ちょっとうるさいことを言えば、処女喪失云々の話は時代的に少し遅れてるかなと思います。ネタにするのが古いと言うか。ただそれも「基地」と言う閉鎖された環境故に問題が肥大化していく部分はあるのかもしれないですね。

まあそこが少しだけ引っかかったぐらいで、難点としてはそれぐらい。

MVA

演技的にもマイナー感はまるでなく、皆さんとても良かったです。

イレーナにしたい気持ちもありつつ、この人かな。

ネリー・タガー(ダフィ役)

主人公の「異動したい女子」。

演技的にはゾアール役のダナ・イヴギのような気もするんですが、ダフィの世間をなめた(でも本人はそのことに気付いていない)考え方がすごくリアルで等身大感を感じさせてくれたのが良かったなと。かわいいし。

ゾアールの方は処女云々もそうですが、一番の大問題を引き起こしたアレについてもやや誇張されたキャラのような気がして、リアリティではダフィかなと。

まあでもどっちも良かったです。

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