映画レビュー1473 『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』
この日は特に終わるぞ映画もなかったんですが、なんとなく気分的にあんまり気合いがいる映画もしんどいなと思ったところで目についたこの映画、最近前作も観てるしちょうどいいかなということで。
名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊
『ハロウィーン・パーティ』
アガサ・クリスティ
ケネス・ブラナー
カイル・アレン
カミーユ・コッタン
ジェイミー・ドーナン
ティナ・フェイ
ジュード・ヒル
アリ・カーン
エマ・レアード
ケリー・ライリー
リッカルド・スカマルチョ
ミシェル・ヨー
2023年9月15日 アメリカ
103分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

回を重ねるごとに良くなる印象。
- 隠居生活を送るポアロの元に友人の小説家がやってきて「本物の霊能力者がいる」と降霊会へお誘い
- ヒゲ行くところに殺しあり、当然またも殺人事件に居合わせるヒゲ
- 舞台が洋館での降霊会だけあってだいぶオカルトホラーっぽさが強い
- 物語も特に違和感がなく、ヒゲの主張も強すぎずでいい塩梅
あらすじ
結局2025年2月現在(観てからアップまで2か月かかってるのはショナイでお願いします)公開済みの3作で言えば、1→2→3と順番で良くなった気がしますね。結構こなれてきて良いシリーズになってきている印象なので今後も続けてほしいところ。
今は探偵業を引退し、ヴェネツィアで暮らす世界一の名探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)。
それでも彼の名声故ひっきりなしに依頼を持ち込んでくる人々が毎日列をなしていますが、ヒゲは一切聞く耳を持たず悠々自適の毎日です。
そこに現れたのが旧友でミステリー作家のアリアドニ(ティナ・フェイ)。
最近ヒット作に恵まれていない彼女は、なんとかポアロを事件に引き合わせてその様子を“ネタ”に小説を書き上げたいと思っており、とりあえず外に連れ出そうと彼女が目の当たりにした“本物の霊能力者(ミシェル・ヨー)”が行う降霊会に彼を招待します。
おそらくはその霊能力者が本物か偽物かを見極めさせ、同時にその家で起きた過去の悲しい事件の謎解きを通して探偵の復帰も促そう(&それによってネタ作りも捗る)的な感じで招待したものと思われますが、しかしヒゲ行くところに殺しあり…悲しいかな、降霊会最中に殺人事件が発生してしまいます。
当然現場は封鎖。例によって電話も通じないというおなじみの環境に閉じ込められた面々それぞれが容疑者として並べられ、かくしてヒゲの復活祭が執り行われる運びとなりましたとさ…!
安定感ある作り
ということで「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」に続くケネス・ブラナーのポアロシリーズ第3弾。
えっ、3作目なのにもう引退(隠居)したの!? とびっくりしましたが、それだけご存知感が出ていることもあり、過去2作にあったようなポアロの過去描写(=ケネス・ブラナーの自己アピールタイム)もゼロになりました。確かゼロ。
なので3作目にしてようやく「目の前の事件を全力描写」する映画になったかな、と。それ故に過去2作と比べても上々の出来だと思います。
今作は洋館での降霊会に始まり、さらにその降霊会を催すことになった発端の悲しい過去も含めての物語となっていて、「降霊会」というシチュエーションからもお察しの通りだいぶオカルトホラーみが強くなっております。ちょっとしたジャンプスケアっぽい演出等もあり。
なので結構好き嫌いが分かれる映画になっているような気もするんですが、ただその「オカルト」面については最終的にきちんと理由付けがなされてもいるので、僕としては事件の内容も納得できたし全体の雰囲気も3作中で一番好みでよく出来ていたように感じました。
この辺は原作の出来にもよると思うので、全作未読の不勉強野郎としてはあんまり断定的に言えない部分もありますが、やっぱり好みの上でも「無駄にポアロアピールの時間がない」のが非常に大きかったように思います。
事件そのものについてはこれまた例に漏れずチラホラと引っかかる点もないわけではないんですが、これまた原作の問題かもしれないしこの手のミステリーは多少なりとも気になる点が出てくるのが当たり前なのでその辺は目を瞑るとして、映画として観れば3作の中では一番良かったかなと。
今回だいぶ安定感のある作りに感じられ、シリーズものとして結構定着してきた感じが作りの面でも見えたように思うので、今のところ特に発表はされていませんが今後もまたシリーズを重ねていくのも全然アリだなと思います。
んで、実は今作を観てもう一つ思ったのが「豪華キャスト売りが薄らいできたな」という点。
これは別に悪いわけでもなんでもなく、単純に(想像でしかないですが)ギャラが高そうなメンバーが多かった「オリエント急行殺人事件」に始まり、ちょっと落ちるもののやっぱりスターが目立った「ナイル殺人事件」と来て今作はあまりそういった面々が出ていない(ミシェル・ヨー姉さん好きだけど)ので、「これはもしや今後のシリーズ続行を見込んで予算削減を進めた一環では…?」と穿った見方をしてしまったわけですよ。もちろん個々の演者に不満があるわけではありません。ネームバリューとして徐々に落ち着いてきたな、と思っただけで。
これはその予算削減的な「続けやすい環境作り」の狙いもありそうだなと思いつつ、同時にもうだいぶおなじみのシリーズになってきたからそんなにキャストで引っ張る必要もないよね、みたいなケネス・ブラナー(を始めとした製作陣)の自信の現れなのではないかと思い、それはそれで良いことだなと。
それぐらいどっしりとした安定感を感じたので、シリーズものとしてはなかなか良い進行具合ではないかなと思った次第です。はい。
目指せマンネリ
この手の探偵ものは昔からある定番ものではありますが、最近はちょっと手の込んだものが多くてそれこそアガサ・クリスティ的な王道ものは減ってきているような印象があるだけに、むしろ今の時代こういう作品が改めてシリーズ化されるのはいい方向な気がしますね。一周回って新しい系というか。
もちろんその分しっかり期待に応えてもらわなければならないわけですが、今作に至っていよいよフォーマットが定まった感もあり、変に色気を出さずにこのまま(マンネリと言われるぐらい)作っていってもらいたいところです。期待しています。
このシーンがイイ!
特にこのシーンというのはあんまり覚えてないんですが、ロケーションの洋館がとにかくいい感じで好きでしたね。雰囲気があって。
ココが○
余計なものがない点。ストレートに事件に向き合う感じが良かったです。
ココが×
ちょっと「その死に方おかしくない?」みたいなのはあったんですが、まあ許容範囲でしょう。原作準拠の可能性もあるし。
MVA
特に不満も無ければ目立って良かった人もいなかったような気がする無難な作品だったので悩ましいところですが、この人にします。
ケリー・ライリー(ロウィーナ・ドレイク役)
屋敷の主人で降霊会の依頼主。
物語のキーマンでもあるので、順当にいい演技でしっかり見せてくれたと思います。