映画レビュー1433 『オリエント急行殺人事件』
例によってアマプラ配信終了近い系。一応観ておかないとかな、ということで。
オリエント急行殺人事件
『オリエント急行の殺人』
アガサ・クリスティ
ケネス・ブラナー
ペネロペ・クルス
ウィレム・デフォー
ジュディ・デンチ
ジョニー・デップ
ジョシュ・ギャッド
デレク・ジャコビ
レスリー・オドム・Jr
ミシェル・ファイファー
デイジー・リドリー
オリヴィア・コールマン
マヌエル・ガルシア=ルルフォ
マーワン・ケンザリ
セルゲイ・ポルーニン
ルーシー・ボイントン
トム・ベイトマン
2017年11月10日 アメリカ
114分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)
監督主演、兼任ではなくどっちかだったら(多分)もっと良かった。
- ご存知アガサ・クリスティ原作「オリエント急行の殺人」の再映画化版
- 前回の映画版同様に豪華キャスト
- 大枠は(当然)同じ、こちらのほうがより豪華で現実味があるような気はする
- ケネス・ブラナーの「俺を見ろ」感が邪魔
あらすじ
ほぼ覚えていませんがルメット版にあんまり良い記憶がなかったので、思っていたよりも面白かったなという印象。やっぱり現代に合った作りになっているんでしょうね。
世界一有名な探偵、エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)はエルサレムで事件を解決したあと、休暇のためイスタンブールへ行こうとしたところ急遽ロンドンに戻らなければならなくなったため、オリエント急行の重役で旧友のブーク(トム・ベイトマン)の計らいで一席取ってもらい、乗車。
個性豊かな面々と一時の旅路をともにすることになったポアロですが、前日護衛を依頼してきたアメリカ人美術商のエドワード・ラチェット(ジョニー・デップ)が殺害される事件が起き、渋々捜査に乗り出します。
評判の悪いラチェットは様々な人たちから恨みを買っていたこともあって捜査は難航しますが…果たして。
出しゃばりポワロ
ということでオリエント急行殺人事件の映画化第2弾。前回映画化されたものは監督シドニー・ルメット、主演アルバート・フィニーという激渋コンビの1974年版です。
鑑賞済みなのでレビューも書いていますが、アルバート・フィニーが全然アルバート・フィニーに見えなかったこと以外まったく記憶にないのである意味新鮮に観られました。ただし事件の真相については当然覚えています。ありえねーだろと思ったのも覚えているので。
真相は当然同じなのでどちらも原作に忠実な作りなんでしょうが、いまだ原作未読なのではっきりしたことは言えません。いい加減読むべきか…?
その真相部分についてはやっぱりちょっとなぁと思うところはあるんですが、そこの不満についてはルメット版のレビューにも書いたので今回は置いといて、その他の話を。
まずオープニングで当該事件とはまったく関係のない事件をポワロが解決するシーンが描かれるんですが、その辺りからして「オリエント急行の殺人そのもの」よりも「名探偵ポワロのご紹介」的な側面もあり、シリーズ化するぞという意気込みが感じられますね。
急行に乗り込む前の描写も前座的にきっちり描かれているので、ルメット版よりも“見せ方”にこだわっている印象が強かったです。
一方で小説の映画化には避けられない宿命ではありますが、原作未読でも「だいぶ端折ってるな」と感じるぐらいにはいろいろと描写が足りていない感はあり、事件の背景についての情報も急にバタバタ出てくるので「いつそれ知ったんだよお前」みたいなポイントが多々あるのも事実なので、やはり単体の映画の物語としては手放しで褒めたくなるようなものでもないのは確か。
言ってみれば「これだけ有名な原作なんだから大枠は知ってるでしょ?」というようなニュアンスがにじみ出ているというか、映画オリジナルミステリー(比較対象としては「ナイブズ・アウト」辺りがちょうど良さげ)でこういう作りはしないよね? と感じるような、事件周辺の核となる情報の出し方に稚拙さが伺える気がしたんですが、かと言って特段その辺に詳しいわけでもないのでいい加減な感想ではあります。
でもやっぱりこの辺の話は、裏を返せば「みんなどうせどういう事件か知ってるだろうし、だったら本筋以外の部分で見せ方を変えないと」と思ったとしても責められないのもよくわかるので、超有名ミステリーだからこその難しさを消化しきれていないのかなというのは思いました。
キャスティングはルメット版同様に豪華キャストで、映画好き的には「いろんな人が出てるな〜」と観ているだけでワクワクするようなメンバーなのはさすが。
だが…!
肝心の主人公、ポワロを演じるのが監督兼任のケネス・ブラナーなんですよね。
ケネス・ブラナーその人の俳優としての能力についてはまったく文句はないんですが(ノーラン2作とかすごく良かったし)、監督兼任だからなのか…端々に感じられる「俺を見ろ」感。
もしかしたら「兼任だから自分の見せ場用意してんでしょ?」と穿った見方をしているだけなのかもしれませんが、違う役者さんだったらまだしも監督自身が主役を張る以上、もうちょっと見せ場は控え目にしても良かったんじゃないのと思うんですよ。
なーんかポワロの「ポワロ見ろ」シーンが多い気がしたんですよ。ドヤドヤと。
昔の奥さんだかなんだかの話、丸々いらないと思うんですよね。写真見ながら悲しんでたりとか全然事件に関係ないし、ポワロの過去含め人物描写に力を入れる意味があんまり感じられなくて。(それこそシリーズ化を睨んで…なのかもしれませんが)
そこももしかしたらルメット版と差別化するために入れただけなのかもしれないんですが、どうしても監督兼任となると「自分が出たいだけちゃいますのん」と思ってしまうという…。
ご本人は決してそうは言わないでしょうが、観ている方はそう感じてしまうという悲しいお話です。
もう一度観て比べたい
とは言えクライマックスの見せ場もなかなか見ごたえがあって良かったので、全体的には悪くないかなと思います。
続編の「ナイル殺人事件」もアマプラにあるのでそのうち観ようかなと思いつつ、またポワロが出しゃばるのは勘弁してねとお祈りを捧げて終わりにしましょう。
今回こっちを観たことで、さして良い印象のないルメット版も改めて観たい気がしますが…こちらはなかなかチャンスが無いのが難しいところですね。またBSでやってくれないかな…。
このシーンがイイ!
やっぱりクライマックスの見せ場でしょうか。「ああ、これがやりたかったんだな」という感じもありましたが、それでもいいシーンだったと思います。
ココが○
キャスティングの良さ。
ミシェル・ファイファーなんてすっかり年取っちゃったなと思いますが、それでもお綺麗だし良いキャスティング。ペネロペ・クルスも久しぶりに観ましたが良かったですね。
ココが×
繰り返しになりますがやっぱりだいぶ端折ってる感があるところと、ポワロの自己主張が強めなところ。監督頼むぜ。
MVA
実は名優揃い故かそれぞれの出番は少なめで、かと言ってケネス・ブラナーはドヤってるので選び難く、なかなか難しいチョイスなんですが…この人にします。
ミシェル・ファイファー(キャロライン・ハバード夫人役)
陽気でちょっとセクシーなご婦人。
ミシェル・ファイファーと言えば(少し前に再鑑賞したこともあり)やっぱり「スカーフェイス」のイケ情婦の印象が強いんですが、あれから時間も経ってさすがにお年を召されているのは事実なものの、それでもなお品のある佇まいがとても良かったですね。しっかり見せ場もあったし。