映画レビュー1432 『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』
これもキラートマト推しの方が好きと言っていたので観てみることにした系です。
レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ
サッケ・ヤルヴェンパー
マト・ヴァルトネン
アキ・カウリスマキ
マッティ・ペロンパー
カリ・ヴァーナネン
サッケ・ヤルヴェンパー
ジム・ジャームッシュ
レニングラード・カウボーイズ
マウリ・スメン
1989年3月24日 フィンランド
78分
フィンランド・スウェーデン
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)
シュールなブルース・ブラザース。
- 古臭いアマチュアバンドが売れるためにアメリカへ行く
- しかし古臭いのでたらい回しされ、結果アメリカ各地を旅しつつの興行に
- すぐに新しいスタイルを習得する割に評価も低い、でもそれなりに儲かってそうなのもシュール
- なぜか全体的に漂うほのかな悲しさが良い
あらすじ
ロードムービーの時点で好きなので結構期待しちゃったんですが、徹頭徹尾ゆるくてシュールなので面白さという意味では今ひとつ。でも嫌いじゃないです。
全員がリーゼントのシベリアで活動しているバンド「レニングラード・カウボーイズ」は、エージェントらしき人物に自分たちの演奏を聞かせますがリアクションは芳しく無く、「アメリカに行くといい」と適当にあしらわれますが、それを本気にして一行はアメリカへ。
今度はアメリカのエージェントに聞かせるとこれまたリアクションは芳しく無く、「メキシコでやるいとこの結婚式で演奏してくれ」と頼まれ、メキシコへ向かうことにした一行は全財産をはたいてカーディーラーで中古車を買い、セダン1台に全員乗り込んでの興行旅に繰り出します。
行く先々で「今の流行りはロックだ」とか一夜漬けで技術を習得しそれなりに演奏するんですがイマイチ受けず、マネージャーのウラジミール(マッティ・ペロンパー)一人贅沢な食事にありつきながらメンバーは玉ねぎ1個とかひどい扱い。
いよいよ我慢の限界に達したメンバーはマネージャーに対して決起しますが…! あとはご覧ください。
アキ・カウリスマキ版ブルース・ブラザース
「レニングラード・カウボーイズ」は架空のバンドなんですが、この映画で有名になってそのままバンドとしての活動を今も継続中とのことです。成り立ち的には「スパイナル・タップ」っぽい。
ただ映画の内容的にはブルース・ブラザースっぽさの方が強かった…んですがどちらにしてもこの2作ほど笑わせに行くエネルギーは強くなく、ひたすら淡々とシュールな展開が続くゆるいコメディロードムービーです。
評価を見ればおわかりの通り、僕は上記2作が大好きなんですが(奇しくもどちらも満点)こっちはそこまででもなく、その意味ではあんまり合わなかったとは思いますが、でもなんか妙に心に残る部分もあって意外と悪くなかったというか。
すごく刺さってくる感じはないもののしみじみ好きな感覚も結構あり、これはこれでアリという感じ。
ただ割と途中のエピソードは同じように感じられるものも多く、抑揚がないのも手伝ってどうしても平坦な感じはありました。
上映時間が短いので飽きることもなかったんですが、裏を返せば「これ以上やることもないから」短いのかなという気もするし、その辺の構成含めてやっぱり全体的にゆるいですね。作品自体が。そこが良いんだろうとも思います。
基本的にはコメディなんですがそんな感じでゆるいので、ゲラゲラ笑うというよりかはニヤニヤクスクスって感じで笑い的にも物足りなさはあるものの、その雰囲気を楽しむ映画ということでしょう。
メンバーは結構多い(総勢10人ぐらい?)ので、個々にスポットライトが当たる感じもなく、構図としてはマネージャー vs その他のメンバー、という感じであれこれ進んでいきます。
まーとにかくこのマネージャーが徹頭徹尾クソ野郎なのが笑いますね。よくこんなのに付いていくな、っていう。
一方でその他の面々はどうも社会不適合者的な雰囲気もあり、要は「1人じゃ何もできない(からマネージャーにお任せ)」っぽいからそうなるんやで、みたいなキャラクター像はなんならちょっと童話っぽくもあって、そこも少し興味深いところがありました。すごく簡素化して描いているから教訓めいた何かがあるような。考えすぎか?
それと妙に心に残ったのが、終始ゆるコメの割にどこか悲しみが通底しているような雰囲気もあるんですよね。もう物語としては全然そんな感じではないんですが。
これはもしかしたら曲のチョイスのせいなのかもなぁ…と思ったんですが真相はわかりません。
映像もちょっと彩度が低めでうっすら暗い、古く見える映像のせいもあったかもしれませんが…。
いずれにしてもそのどこか遠くに見える物悲しさみたいなものが結構好きで、コメディ部分も含めて独特の雰囲気を持った映画だなと思います。それ故に好きになる人は徹底的にハマりそう。
ある意味雰囲気映画かもしれない
まあそんな感じでね。レビューもフワッとしてますけども。
空気感みたいなものはすごく心に残ってるんですが、話自体はあんまり残らないというか…内容が薄いのは確かです。
なので結局これも大きな意味で「雰囲気映画」なのかもしれないですね。気取らない雰囲気映画。
どこか「さよなら、人類」的な雰囲気もあったので、やっぱり北欧ってこういうちょっと暗い雰囲気の画作りの文化があるのかもしれませんね。
このシーンがイイ!
生の玉ねぎを支給するシーンはさすがに笑いましたね。ひどすぎる。
ココが○
ひたすらゆるいので脱力して観られるのはいいところ。週末の夜にダラダラお酒飲みながら、とかいいんじゃないでしょうか。
ココが×
まあそうだろうなと思いつつ終わり方もあっけなかったし、やっぱりちょっとピークがない感じはします。
MVA
ジム・ジャームッシュが出ててびっくりしたんですが、それはさておきこの人…しかいない気がする。
マッティ・ペロンパー(ウラジミール役)
マネージャー。なんなら独裁者。
数々の“悪行”もまったく悪びれない辺り、もしかしたらサイコパスなのかもしれません。
いいキャラしてました。