映画レビュー1263 『私の頭の中の消しゴム』

引き続きBS録画より。

あーそう言えば前にオススメされてたから録っておくかなーと録画したんですが確認したら「猟奇的な彼女」の方でした。草。

私の頭の中の消しゴム

A Moment to remember
監督

イ・ジェハン

脚本

イ・ジェハン

原作

『Pure Soul~君が僕を忘れても~』
江頭美智留
松田裕子

出演

チョン・ウソン
ソン・イェジン
ペク・チョンハク
イ・ソンジン
パク・サンギュ
キム・ヒリョン
ソン・ジヒョン
キム・ブソン
チャン・イナン
クォン・ビョンギル

音楽

キム・テウォン

公開

2004年11月5日 韓国

上映時間

117分

製作国

韓国

視聴環境

BSプレミアム録画(TV)

私の頭の中の消しゴム

ひたすら考えさせられる純愛。

7.5
徐々に記憶障害が進行する若年性アルツハイマー病に冒されてしまった妻
  • “身分違いの恋”を乗り越えて結ばれた二人だが、妻の病気という試練が訪れる
  • 前半は普通の恋愛物語、後半は悲壮感漂う純愛物語
  • 「自分だったら」と考えざるを得ないつらい話
  • 原作は日本のドラマ

あらすじ

とてもいい映画でしたが、この手の“泣ける(と思われる)”映画はこっちも泣き上戸としてさぁ泣くぞ泣くぞとティアウェルカム状態で観てしまうので、結果そこまで泣けなかったので少々物足りなさはありました。

建設工事現場で働くチョルス(チョン・ウソン)は、上司にも臆せずはっきりとダメなことはダメと言う“技術バカ”っぽさのあるイケメンさんでございます。ちょっと福山雅治っぽい。

そんな彼と偶然の出会いで知り合ったスジン(ソン・イェジン)は彼に惹かれ、やがて交際スタート。

しかし実はスジンは社長令嬢であり、チョルスの雇い主の娘という“格差恋愛”。当然然るべきタイミングで父親(社長)からの反対があったりもしますが「障害があるほど燃える」のが恋愛の常だよね的に二人の結束は強まり、やがて結婚となりました。

幸せに暮らす二人、チョルスも新たに建築士としての展望が見え始めていたその矢先、スジンに記憶障害の傾向が現れます。

診てもらったお医者さんに「肉体的な死よりも精神的な死が先に訪れる」若年性アルツハイマー病だと無情な宣告を受け、チョルスは動揺しながらもそれでもスジンを愛し、守ると決意しますが…この先の二人の人生はどうなるのでしょうか。

ド恋愛

上記あらすじは中盤ぐらいまでは書いちゃってる感じなんですが、まあ若年性アルツハイマー病のところまで触れなければ何の話なんだよとお叱りを受けてしまうような物語なのであしからずということでね。一つよろしくお願い申し上げますよ。

僕はまったく知りませんでしたが、元は2001年に放送された永作博美主演の日本のテレビドラマ「Pure Soul〜君が僕を忘れても〜」だそうです。タイトルの「私の頭の中の消しゴム」もそのドラマの中でヒロインが言うセリフから取られているそうで、監督がこのドラマに感銘を受けて映画化した、というような流れだったんでしょう。

「愛する夫のことすら徐々に忘れていってしまう」若年性アルツハイマー病という過酷な病に直面した夫婦の姿を描く映画なんですが、ぶっちゃけ物語としては良くも悪くもそれ以上でもそれ以下でもなく、ただただどうしようもない不可逆的かつ残酷な病に当事者として、そして配偶者としてどう立ち向かっていくのかがすべての話になっています。

観る前は「消しゴム」という単語の切迫感のなさみたいなものから、もうちょっと気楽でコメディよりの(でありつつも泣ける)映画なのかなと思っていたんですが、実際は火の玉ストレートなド恋愛なのでそれなりに人を選ぶ気はします。僕もどちらかと言うとここまでストレートな恋愛映画はあまり好きではありません。

ただ問題の病気が非常に深刻かつ身近に感じられるものなので、自分に置き換えて強く感情移入する内容でもありました。

奥さんいないけどね。交際相手もいないけど。と毎度のことながら我が身を振り返った方が泣ける、みたいな。

余計な話は置いといてですね、劇中でも語られる「精神的な死が先に来る」という表現が非常にショッキングで、そしてその意味をしっかり理解させてくれる脇役の使い方(あえて詳細は書きません)がすごく上手いなぁと。

自分の身に置き換えて云々は少々ネタバレに抵触してしまう面があるのでここには書きませんが、それぞれ観た人がどう思うかは考えやすいものでもあるし、この物語を観てまったく何も感じないのはちょっと寂しいかなと思います。普通にあり得る話だとは思うので。

人物像が微妙に古い気も

話としてはシンプルなので、特にあーだこーだ書くこともありません。

純愛物語が好きであればかなり刺さるような気がしますが、僕はそうでもないので「良い映画だけど期待以上の良さを感じるほどではなかったかな」といったところでしょうか。

ちょっと主人公(夫)のキャラがベタすぎるというか、不器用で一本気な、“いかにも”なキャラクターだったのが微妙に古さを感じさせる気はしました。今だったらもうちょっと複雑な男性像だったんじゃないかなと思います。

この辺り、ジャンルは違えど同じ韓国映画の「82年生まれ、キム・ジヨン」だとかなり人物像の描写が豊かになってきているなぁと思いますね。比べるものでもないんですが。

とは言えくどいようですが良い映画であることは間違いないので、一度観てみることをオススメします。

私の頭の中のネタバレ

「何としてでも共に生きる」と力強く訴えるチョルスの価値観は羨ましいなぁと思いつつも、正直若いときは良いけど歳取ったらしんどいで…と余計な心配をしてました。我ながら最低だなとも思うんですが…。

若いときは体力もあるし、ある種勢いでそう言っちゃうのもわかるんですよ。そういう自分で有りたいとも思うし、何より愛してるわけだし。

でも言葉通りに長年連れ添ったとして、自分に対して常に「初めまして」の人の対応を死ぬまで続けるのは現実的にかなりキツイと思うんですよね…。有り体に言ってしまえば、歳を取って美しさも失ってただのおばちゃんになり、お婆ちゃんになっていくスジンと毎日「初めまして」を繰り返しながら、食事もトイレも全部世話をするのは相当消耗すると思うんですよ。

果たしてそれも含めて「面倒見ます!」と言い切れる自信が自分にあるのかと言われると、きっと無いだろうなと観ていて思いました。裏を返せばそれほどまで愛せる人に出会っていないだけなのかもしれませんが…。

老老介護に疲れてしまった悲しい殺人事件もたまに耳にしますが、それと同じような状況がこの先ずーっと続くとなると…やはり一時(かどうかはわかりませんが)の思いだけで突っ走るには無理があるのではないかなと思ったんですよね。

それは二人の関係性が熟成した夫婦というより、まだ恋愛の延長線上にあるように見えたから余計にそう思えたのかもしれません。早い話がまだ“アツアツ”の時期に起こった出来事だからこそ、冷静に判断できてない面があるんじゃないかなと。スジンはやたら綺麗だし。

なのでその辺も考慮して、もっと年老いた二人をエンディングに持ってきてくれたら…きっともっとすごい感動があったような気がするんですよね。綺麗事だったとしても。

まだ若い時期に発症したからこそ悲しいのも事実ですが、それを本当に乗り越えたと思わせるには年老いてからの話もどうしても必要だと思うし、そこまで踏み込んでいない分、不安と不満が残っちゃう話だなと思いました。

まあ冷静すぎてかなり冷たい意見だなとも思いますけどね…。でも創作なんだしだったらそこまで描いても良いと思うんだよな…。

なお、この後に書いている「いいシーン」は終盤のコンビニでのシーンのことです。

このシーンがイイ!

もう完璧乗せられてますけどやっぱり終盤のとあるシーンはズルいなぁと思いました。ネタバレになるので書けないのが残念ですが。

ただちょっとファンタジックすぎるかなとも思います。それ故あざとくなりすぎているような気もする。

ココが○

「自分だったら」を考えさせるにはすごく良いテーマというか、それだけ生々しいお話でもあると思います。

それとなんだか後半に行くにつれてスジンがどんどん綺麗になっていくように見えるのがすごく残酷で、そこが逆に良いというか…。

ココが×

主だった気になる点はネタバレ項に書いたのでここでは割愛します。それだけ根幹に関わる部分が気になった面はありました。

MVA

どちらも素敵でしたが、上に書いた通り少々古い人物像だったチョルスと比べるとこちらの方が役としての難しさも素敵さも上だったと思うので、こちらの方に。

ソン・イェジン(キム・スジン役)

忘れていく側。妻。

序盤の溌剌とした姿ももちろんかわいいんですが、上に書いた通り後半行くにつれてどんどん儚く美しくなっていくようでそれがまた残酷さを際立たせているように思えてよかったですね…。

ルッキズムだなんだと言いつつも、結局この人が美人だからこそひどく悩ませる側面ってどうしてもあると思うので、その残酷さがまたなんとも言えず刺さりました。

それも含めて己の低俗さが悲しくもあった鑑賞ですね…。

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