映画レビュー1161 『アルプス』

今回はJAIHOから、日本初公開のヨルゴス・ランティモス監督作品です。

ロブスター」が結構面白かったのでこれ幸いと観てみましたが…。

アルプス

Alps
監督
脚本
出演

アンゲリキ・パプーリァ
アリアン・ラベド
アリス・セルヴェタリス
ジョニー・ヴェクリス
スタブロス・シラキス

公開

2011年10月27日 ギリシャ

上映時間

93分

製作国

ギリシャ・フランス・カナダ・アメリカ

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

アルプス

シュールの極み。

7.0
愛する人を亡くした人たちの依頼を受け“故人を演じる”団体
  • 4人のメンバーからなる“故人成り代わりサービス”団体「アルプス」
  • 全体的にツッコミ不在で淡々と進み、良い意味で気持ちが悪い
  • 言いたいテーマはおぼろげに伝わるものの、とにかくシュール
  • ほんのり自己満足感が漂っている気も

あらすじ

相変わらず物議を醸すヨルゴス・ランティモス監督らしい作品ですねと鑑賞2作目のくせにしたり顔で言っちゃうわけですよ。ちなみに彼の手掛けた作品の中では初期にあたるものなので、それ故やや“うまさ”が足りないような気もします。とは言えオンリーワンな雰囲気はこの頃から健在。

救命士、看護師、新体操選手とそのコーチの4人からなる「アルプス」。彼らは愛する人が亡くなった悲しみを癒やすため、故人に成り代わってその人物を“演じ”、過去の出来事を忠実に再現しながらメンタル回復のお手伝いをする団体です。

彼らには厳しい掟があり、リーダーの救命士を中心に「確かなサービス」を提供していましたが、あるとき看護師がその掟を破ったことでいろいろと物語が動き出します。

説明が非常に難しい映画なのでこの辺で終わりにしまして、あとは観てくださいまし。

シュール過ぎて脳が考えることも拒否

これまためんどくさい映画と言うか…何を書いたらいいのか…。厄介な映画ですね。

サービス自体は(もう少し形を変えたもので)なんかありそう…な気もするんですが、まあ最初から最後までずっと違和感しか無い異常な世界。高校生の“代役”をそれなりに歳のいった女性が演じ、それを良しとするご両親はさながらパラレルワールドですよ。異常の上に異常が重なる異常な話。

過去にあった出来事を代役として再現しながら、果たしてそれで傷が癒えるんかいなと思うんですが、このシュールな世界にいわゆるその手の“マジレス”はかっこ悪いんだよ、みたいな独特の世界観が癖になりそうな気がしないでもないところです。

各人の関係性も描いているようで謎めいたものになっていて、そこに想像の余地がありつつも実は思わせぶりなだけで何も考えていないような気もしてくるし、なんとも捉えどころのないお話でした。

ちゃんと考えて観ていれば、いろいろと底意地の悪い人間関係が見えてきそうな気もするんですが、まあなんともノリにくい映画なだけにそこまで興味を持つこともできず、ずっと居心地の悪い場所で共感性羞恥テストを受けているかのような時間でしたね…。なんなんだろう、この居心地の悪さは…。

決してつまらないわけでもなく、まったく先が読めないだけに気になる部分もあるんですが、それ以上にシュールすぎるので「これ絶対気持ちよく終わる映画じゃないでしょ」という不信感に支配されてしまい、案の定「うーむ…」と言った感じで終了。

これ好きな人は好きなんだろうなぁ…。明確な答えとかスッキリ感が欲しい人にはまず向いていないと思いますが、考えさせられる映画が好きだと思っている自分としても、そもそもの「考え」の立脚点が揺らいでいる世界観である以上は考えようにも正しいかもわからないし、映像も物語もそうであったように頭の中まで気持ちが悪い。それぐらいにシュールな映画でした。

ただその気持ち悪さも良かったりするだけに…いや本当にどう評価すればいいのかわからない、いろんな意味でややこしい映画ですね。

1勝1敗

ロブスター」はもっと明確に言いたいことが感じられたので、そこは監督の成長なのか、はたまたこの路線ではメジャーになりきれないともう少しソフト(?)路線に転向したのかはわかりません。

僕が「言いたいことが感じられた」のは、そのこと自体が当たっているのか見当違いなのかはあまり関係がなく、そう感じさせてくれる時点でこっちとしては面白いと思えるからそれで良いと思っているんですが、この映画はそこに到達することもできず、「理解できない自分が悪いんだろうか」とちょっと自己嫌悪になるような、「映画的意地の悪さ」を感じてあまり好きになれなかったのも事実です。

ほんの少し…「変わった映画だろ」と監督の自慰感が漂っているような気もするし、やっぱり根本的にこういう映画は好きではないなと改めて思いました。とは言え好みの話なので好きな人にはたまらない世界なのも事実でしょう。

今のところ僕にとってのヨルゴス・ランティモス監督は1勝1敗、これはやっぱり他の映画も観ておきたいところです。ただ間違いなくこの人にしかない世界感があるのはよーくわかりました。

ネタバレ

4文字のタイトルはそのままひねりのないネタバレタイトルになります。

この話の中心は「成り代わる仕事のはずがそこに自分自身のレーゾンデートルを見出してしまい現実と虚構の主従が逆転する」看護師、と言うものだと思うんですが…ただそう解釈するにしてもその他のノイズが多すぎるし、他に言いたいことがいろいろありそうな気がしてモヤモヤしました。それメインであれば余計な話が多すぎる。

それにその解釈が合っていたとしてもそれだけでは入口も入口すぎてまったくこの映画を理解していないような気がしてつらいんですよね。多分もっと深く広い話なんじゃないか…と言う気がして。そう思わせるいやらしさが気に入らなかったりもするんですが、ただそれもまたこっちの勝手な思い込みかもしれないし…アアーッ!

もう最終的には何も信じられない話に見えてきちゃって、果たして看護師のお父さんも「本物のお父さん」なのか疑わしい気がしてそこもまた考えてると気持ち悪い。

まあ“ビンタ”したことを考えれば本物なんでしょうが…でも本物のお父さんなのにあんな若い男子連れてきて「セックスしました」的に無防備な状態晒すのかなー…。まあそれも家族のカタチにもよるのか…。

考えてもきっと答えはないし、もしかしたらそういう全体的な整合性もあまり気にせずその時その時で違和感のある状況をつないでいっているだけなのかも知れません。だとしたら余計に気に入らねーぜ。

まあ天才の考えることはわかりませんね…こちとら凡人なのでね…。

このシーンがイイ!

これはやっぱり…「ジェスチャークイズ」のシーンでしょう。ひどすぎてもう。

「プリンス死んでるよww」と思いながら観ていましたが、この映画が作られた当時はご存命でした…。

あと「テスト」のシーンもさすが。あそこだけはビビットなシーンと言うか。

ココが○

まあなんなんでしょね、この世界観。間違いなく唯一無二でしょう。妙な胸騒ぎを覚えたかったら観るべき。

ココが×

それにしてもシュールすぎる。もうちょっと優しくして欲しい。

確固たる答えを持ってこれをやっているならいいんですが、なんかあんまりそういうのもなさそうな気がするんだよな…。勝手な想像ですが。

MVA

「アルプス」のメンバーは皆さん個性的で気になりましたが、まあ順当にこの人でしょう。

アンゲリキ・パプーリァ(看護師役)

主人公と思しきそれなりにいいお歳の看護師さん。

お綺麗ではあるんですが、いろいろと無理のある役柄に従事し、そしていろいろと病んでいそう。優秀そうだけど狂ってそうだし、どことなく不思議な雰囲気。

この人の演技の妙な居心地の悪さがそのままこの映画の居心地の悪さでもあるんでしょう。本業のときもいろいろおかしいし、近くにいたらすごく嫌なタイプな気がする…。

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