映画レビュー1452 『ARGYLLE/アーガイル』
AppleTV+の数少ない新作の中にあったこちらの映画、マシュー・ヴォーン監督と聞いて急いで観たぜと。
ARGYLLE/アーガイル
ヘンリー・カヴィル
ブライス・ダラス・ハワード
サム・ロックウェル
ブライアン・クランストン
キャサリン・オハラ
デュア・リパ
アリアナ・デボーズ
ジョン・シナ
サミュエル・L・ジャクソン
2024年2月2日 アメリカ
139分
イギリス・アメリカ
AppleTV+(Fire TV Stick・TV)

これよこれ!このバカバカしさよ!
- 大人気スパイ小説の作者、「未来を予見しすぎている」ために悪の組織に狙われる
- 初対面で救ってくれた男は本物のスパイだった…!
- 物語は荒唐無稽、リアリティもまったくない
- しかし完全に人をバカにした悪ノリっぷりが最高
あらすじ
いやー最高でしたね。話はまったく現実味のない内容ですが、徹底的に人をバカにしたマシュー・ヴォーンらしい映画で大喜びしました。
大人気スパイ小説「アーガイル」シリーズの著者、エリー(ブライス・ダラス・ハワード)は最新巻をほぼ完成させるも“助言役”の母から最後の展開が良くないとダメ出しを受け、詰めの作業のため母に会おうと列車に乗ったところ謎の怪しい男・エイダン(サム・ロックウェル)が登場、「君は狙われている」と言った直後に何人もの男たちから攻撃を受け、エイダン一人ですべて対処した後に一緒に逃走、気を失ったエリーは彼の家でお目覚めです。
なんでもエイダン曰く、「アーガイル」は現実をトレースするかのように未来を予見した内容になっていて、そのため「アーガイル」に登場する悪の組織とそっくりな現実の悪の組織が(小説中に登場する)鍵となるマスターファイルを探していて、その行方を予見するであろうエリーを狙っている…という胡散臭いお話。
しかし実際襲われただけに彼の言うことに従わざるを得ず、ひとまず手がかりを探しに一緒に行動しつつ追手から逃げ続けますが…あとはご覧くださいませ。
ひどすぎて爆笑
マシュー・ヴォーンと言えばやっぱり「キングスマン」だよねと思うわけですが、まさに「キングスマン(の1)」が帰ってきたとウヒョウヒョ言ってしまうぐらいにあんな感じの、一歩間違えば(間違わなくても)悪ノリ感が強いスパイコメディアクション映画です。めちゃくちゃ面白かったです。
本筋の話は「いややりすぎでしょ」と思う個所がたくさんあり、ぶっちゃけ話自体はひどいです。あり得ないにも程がある。
でもそのあり得なさと悪ノリがものすごく相性が良くて、ここまで人をバカにしたような内容ならもうなんでもいいしむしろ思い切ってやってくれと期待までしてしまうぐらいにひどい。褒める意味でひどい。
めちゃくちゃ笑いましたよ。もう。
特に終盤のとある場面はもうコメディを超えてファンタジーになっているようなバカにしっぷりで、演者もノリノリでひどすぎて爆笑しました。まさに「キングスマン」の最大の見せ場よもう一度、という感じ。
「キングスマン」は売れすぎちゃって守りに入った…わけではないのかもしれませんが、やっぱりちょっと大きくなりすぎたせいで1でやっていたような好き放題が少し難しくなってきたのかなと思った矢先のコレ、ですよ。
新規タイトルならまだまだやったるでぇー! みたいな。ちょっとした枷が外れたおかげで好き放題やれました、的な匂いがプンプンしますね。
またそれを演じるのがサム・ロックウェルっていうのがね。好き放題感を助長してますよね。
多分監督のビジョン通りにやっているんだと思いますが、彼の上手さ故に「勝手に好き放題やってます」感が出ちゃうような感覚がある気がします。
一応キャスト順で言えばヘンリー・カヴィルが最初なのでヘンリー・カヴィル主演、サム・ロックウェル助演なのかなと思ったんですが、ヘンリー・カヴィルは架空のスパイ「アーガイル」を演じるためにたまに出てくるぐらいで実際の主人公はサム・ロックウェルです。ヒロインがブライス・ダラス・ハワード。
サム・ロックウェルは奇しくもこの前観た「バッド・バディ!」の主人公に近いキャラ&立ち回りで美味しさ2倍です。多分。
荒唐無稽だからこそバカバカしくても許せる
正直特にアレコレ言う映画でもないので、ぜひくだらない映画を観たいときに観ていただきたいですね、という適当なまとめ。
一応それなりに二転三転する楽しさもあります。ただ全体的に荒唐無稽なので二転三転しようが驚きはないというか、「そりゃあこんな話なら設定も自由自在だよね」ぐらいの感じ。
それ故におそらく「雑すぎる」と思う人もいそうですが、一番の見せ場でこれだけ(観客含め)人をバカにした展開なんだから真面目に突っ込むのも野暮でしょ、って話ですよ。
下手すると怒る人がいてもおかしくないぐらいリアリティを無視したバカバカしいシーンなんですが、それが許せてしまうのはやっぱり荒唐無稽だから、なんだと思います。緻密に作られた話だったら「急になんだよ」って思っちゃいそう。
ただそもそも荒唐無稽だからバカバカしいのか、バカバカしいから荒唐無稽なのか…ニワトリたまご的な難しさがありますね。難しいのか??
この辺の“色”はマシュー・ヴォーンならではだな〜と思います。唯一無二ですよ。
例によって他の映画同様「AppleTV+限定」なのが非常に残念なところですが、入会する機会があったらぜひ観ていただきたいですね。
このシーンがイイ!
これはもう散々書いた、一番の見せ場と思しき「人をバカにしたような」銃撃シーンです。ぜひ観てほしい。
次点でスケート。あそこもめっちゃバカにしてる。
ココが○
くだらなすぎて最高です。これぞ何も考えずに観るのに最適な映画かも。
ココが×
いわゆる「スパイ映画」を期待すると期待外れなのは間違いないでしょう。作風が作風なので好みが分かれる面もありそう。
あとニャンズの扱いが結構ひどい。あれ許せない人多いと思うな…。
MVA
ヘンリー・カヴィルの髪型がダサすぎたんですがかっこよすぎるとそれはそれでまた違う気もするしこれで良かったのかもしれない。
ということで今回も結局こちらの方。
サム・ロックウェル(エイダン・ワイルド役)
エリーを助けるスパイ。チャラそうに見えて実力は本物。
例によってサム・ロックウェルらしいお上手さで文句なし。この役はこの人だな〜って感じで満足です。