映画レビュー1312 『アンドリューNDR114』

今回はお友達に「これめちゃくちゃ好きそう」とオススメされた作品。

無料で観られなかったのでアマプラで初めて有料レンタルしました。400円で3日間なんですが…まあDVDを借りに行って返しに行っての手間を考えれば妥当な金額かもしれないですね。

アンドリューNDR114

Bicentennial Man
監督
脚本
原作

『バイセンテニアル・マン』
アイザック・アシモフ
『アンドリューNDR114』
アイザック・アシモフ
ロバート・シルヴァーバーグ

出演
音楽
主題歌

『ゼン・ユー・ルック・アット・ミー』
セリーヌ・ディオン

公開

1999年12月17日 アメリカ

上映時間

132分

製作国

アメリカ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

アンドリューNDR114

作られた時代の良さと、今観る良さ。

8.5
人型の家事ロボットが事故によって自我に目覚め…
  • 家事ロボットが自我に目覚め、やがて自立していく
  • ダイナミックに時間が飛ぶSFらしい大胆な物語
  • 未来を予見した内容は時代を超えてよりリアルに伝わってくる
  • ロビン・ウィリアムズの時点でもう感極まっちゃってダメ

あらすじ

「めちゃくちゃ好きそう」と言われて観たので、正直言うほどでは…とは思いましたがそれでも良い映画だったのは間違いありません。

ギリギリ2000年代に入る前らしい人情味を感じさせるSFなので、そういう意味では確かに好きな世界ではありました。

近未来…と言っても劇中ではもう2023年よりは過去の設定でしたが、なかなか裕福そうなマーティン家に一台の家事ロボット「NDR114」が搬入されるところから物語は始まります。

「アンドロイド」を「アンドリュー」と聞き間違えた次女アマンダの発言によってロボットはアンドリューと名付けられ、マーティン家の家事を担っていきますが、そもそもロボット嫌いだったのかわかりませんが長女のグレースはお気に召さないようでアンドリューを呼びつけ、窓から飛び降りるように命令。

当然素直に言うことを聞いたアンドリューは落下の衝撃であちこちおかしくなってしまい、一応自己修復機能でパッと見はわからない程度に回復はしたものの、どこか他のロボットとは違った“人格”のようなものが備わってしまいます。

アンドリューはその影響で創造性を発揮するようになり、壊してしまったアマンダの宝物のガラスの馬を木彫りの馬にしてお返し。それを知った一家の長・リチャード(サム・ニール)は興味を持ち、ジョークを教えたり技術を教えたりと教育を始めます。

やがて時が経ち、アンドリューは自由に憧れを抱き始め、リチャードに「自らを買い取りたい」と打診。それに反発したリチャードはお金はいらないから自由にしろ、と彼を家から出しますが…これはまだアンドリューの“人生”の始まりでしか無いのでした。

古き良き世界と身近に感じられるようになったAIのいいとこ取り

今話題のChatGPT、僕もちょこっといじりましたが面白いんですよねこれが。言ってみれば予測変換の強化版みたいなもののようですが、巧妙すぎて本当にAIと会話しているように感じられるのには本当にびっくりしました。

そんなAIがより身近に感じられる今こそ余計にリアルに感じられるロボット・AI系映画の一本ですよと。言うてますけども。

この映画の主人公であるロボット、アンドリューは「せめてもうちょっとかわいいか無機質にしろよ」と思わずつっこみたくなるようなずんぐりとした風貌のロボットで、のっけから結構違和感はありました。こんなロボット売れるか!? みたいな。

まあでもそこはやっぱり演じているのがロビン・ウィリアムズだから彼に少し寄せるような感じに作ったんでしょうね、きっと。

あの風貌からしてちょっと前時代的なロボット像っぽさがあり、物語自体も今と比べるとややウェットと言うか、いい意味でチープで優しい物語だと思います。今はもっと世知辛いし、救いのない世界になっちゃったよな…となんだか妙なしんどさを覚えたり。

ロボロボ然とした見た目のアンドリューですが、しかし動きはあまりロボ感もなく「人間が中に入って動いてます」的な雰囲気がアリアリと感じられるのも今となってはかわいさすら感じます。

自分が歳を取ったからこの手の“アラ”に優しくなったのか、はたまた世間がこの頃よりギチギチになってきたからこのゆるさにシンパシーを感じてしまうのか、どっちかはわかりません。多分どっちもな気がする。

そういう意味では今描くAIやアンドロイドといったものとはだいぶ違う、「昔の人が想像する人間味あふれるロボット」という感じでそこが懐かしくもあるんですが、ただご存知の通りAI自体が身近になってきたが故に「意外とこういう問題ってそろそろ起きるのでは」みたいなリアリティをまとってくるのも面白いところです。

なので今観てみると「昔らしいおおらかな良さ」と「身近になってより感情移入しやすくなった存在」とが両立していて、もしかしたら当時観るよりもいろいろと受け取るものがあるのかもしれない、と思ったりしましたね。

当時は完全に“ファンタジー”として見えていた未来の姿が、今はちゃんと“SF”として観られる感じというか。現実とは別の完全に架空の世界の話に見えていたものが、現実から地続きのどこかで発生し得る物語に見えてくる、とでも言いましょうか。

その上「ちょっとゆるいSF」ぐらいに思って観ていたものの、意外と「ブレードランナー 2049」とか他の映画に繋がるような部分も見えてきたりして、ゆるいようでバカにできないと言うか、やっぱり核にある部分はしっかりリアリティが感じられるように作られている物語なのもポイント。あのアイザック・アシモフが原作だし当たり前と言えば当たり前なんですけどね。

それとこの映画、びっくりするぐらい時間が飛びます。平気で「18年後」とかポンポン飛ぶんですよ。

その大胆さも面白いんですが、そのおかげで観客も割と俯瞰して物語を観ることができるのもポイントで、全体を通して「アンドリューとは何者なのか」、人とロボットの関係性についてじっくり見つめやすくなるのもよくできているなぁと思います。これが一世代だったら対個人の話で終わっちゃいそうだし。

そうやって時間が飛んでいくことで「寿命がないロボット」だけが生き残り、縁ある人たちを見送っていく形になるのがもう…切ないしまた考えちゃうわけですよ。

いくら機械でも部品も消耗するでしょとかそういうこと言ったらダメですよ? ロボットは死なないんです。そういう決まりなんです。少なくともこの世界では。

だから切ないんですよ。ましてやどんどん人間に近付いていく知能を持ったアンドリューであればなおさら。

僕はこの辺の部分はどうしても「グリーンマイル」を思い出さずにはいられませんでした。明るくゆるいSFながら、あの映画の持っていた悲しみの一部も持ち合わせた映画だと思います。

ちなみに僕は新しく知り合う人間誰もが恋人できて別れてまた恋人できてを繰り返していくのを見守る中、自分だけはずっと独り身で変わらない様を「俺は…俺は恋愛グリーンマイルなんだ!」と涙ながらに訴えているんですが誰もピンときてくれません。おかしいね?

あとこれは完全に愚痴なんですけどね、ちょうどホットな話題があったんで書きますけども。

僕が一番嫌いな「恋愛グリーンマイル」エピソードとしては「仲の良かった女子のLINEに表示されている名字がある日気付いたら変わってた」っていうやつなんですが、この前久しぶりにそれを喰らいましてものすごく嫌な気持ちになりました。

一言「結婚する(した)んだ〜」とか報告あってもよくない? しんどい時だけ助け求めてきて自分が幸せになったら黙って蜘蛛の糸切ってお先に、って芥川龍之介かよ。(文豪つっこみ)

ロビン・ウィリアムズというチート

本当に普通の愚痴を書いちゃいましたサーセン。まあ自分のブログだしいいじゃない。

あとはもう…毎度のことで申し訳ないですが、ロビン・ウィリアムズが出ている時点でしんみりしちゃってダメですよ…。

生前から替えの利かない最高の役者さんだったのに、ああいう去り方をしてしまったせいで意図せず物語に別の意味も生んでしまう、ある意味では罪深いしある意味では物語の価値を(その内容以上に)高める人になってしまいました。

おすすめされて選んだ映画なので誰が出ているのかも確認せずに観始めたんですが、オープニングにロビン・ウィリアムズの名前が出てきた時点で「ああ…ロビン・ウィリアムズなのかぁ…」ともうしんみりしてしまい、もういつ泣いてもいいぞ腹になったような。(今日は焼肉腹とか寿司腹とかの腹)

なので必然的に採点も甘めになっちゃうんですが、まあでもそれを抜いても良い映画だと思います。

やっぱりね、1999年ですよ。ギリギリ1990年代、世紀が変わる少し前というタイミングは、未来に対して思いを馳せることも今以上に多い時期だろうと想像されるし、企画としても未来をテーマにした企画がいっぱい立ち上がっていたことだろうと思うんですよ。すごい適当な予想ですけども。

そんな中でこの映画が作られ、そして紡がれた結末にはやっぱり現実と重ね合わせて余計に考えちゃうわけです。

果たして現実は同じ問題が起こったときにどう対処するのか。

僕は元々ネガティブ思考なのでかなり悲観的に考えていますが、他の方々はどう考えるんでしょうね。そこも気になるところです。

このシーンがイイ!

ラストシーンがねぇ…。

そのシーン自体の良さもさることながら、ちょっとした“仕掛け”があって、そこが余計にグッと来ちゃいましたね…。考えれば当たり前のような気もしたんですが、全然予想していなくて「ウワーそう来るかー!」って。

ココが○

上に書いていない点としては、アンドリューは早々に収入を得るんですよね。お父さんがちゃんとアンドリュー用の口座を用意して。

それの意味が後々効いてくる作りはとても上手いなと思いました。

あとセックスの話がきちんと出てくるのもすごく良い。それこそが人間でしょうと。

ココが×

特にこれと言って良くないぞ、という点は無かった気がします。この時代の映画に弱いせいかもしれないけど。

ただ「すごく好きそう」と言われてかなりハードルが上がっていたので、普通に出会っていたらもっとグッと来ていたかもしれない残念さみたいなものはありました。

とは言えオススメされていなかったらおそらく永遠に観なかったような気もするし、それは一長一短ですね。

MVA

そんなわけでロビン・ウィリアムズ…と言いたいところなんですが、彼の良さはもうあからさまにわかりきっていることでもあるし今回はこちらの方に。

サム・ニール(リチャード・マーティン役)

アンドリューを購入したマーティン家のお父さん。

サム・ニールと言えばあんまり良い役はやっていない印象なんですが、まー良かったですね。父親らしい人格者かつ若干の狭量さもそれっぽくて。

名実ともにアンドリューの生みの親と言って良い人だし、それも含めて準主役だったと思います。

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