映画レビュー0593 『ブラックホーク・ダウン』

録画しておいたものの、ちょっと長めなのと戦争映画で重い、ってことでしばらく気後れして手を出していなかった一本。ようやく観てみました。

ブラックホーク・ダウン

Black Hawk Down
監督
脚本
ケン・ノーラン
音楽
リサ・ジェラード
公開
2001年12月18日 アメリカ
上映時間
145分
製作国
アメリカ

ブラックホーク・ダウン

米軍は泥沼化したソマリア内戦を終結させるべく、最も強大な民兵組織のリーダー・アイディード将軍の副官2名を捕らえる「アイリーン作戦」を決行する。当初は1時間もかからないとされていた作戦だったが、民兵の抵抗により米軍ヘリ「ブラックホーク」が撃墜されたことで戦況が悪化、長時間の地上戦に突入する。

凄惨で壮絶、立体的で圧倒的なリアル戦争映画。

8.5

少し前の「ライフ・イズ・ビューティフル」は、一般人が影響を受ける、言わば末端の戦争映画という形でしたが、こちらはモロ最前線、ド直球の戦争映画ですね。

僕はそこまで戦争映画は好きではないので、そんなに数も観てきてはいないんですが、その数少ない中でも最もリアリティのある、綺麗事を抜きにした“戦争現場”を描いた大作だと感じました。いやー、すごいですねリドリー・スコット。さすがです。

もはや15年も前の映画になりますが、技術的には今とさして変わらない気もするので、今観ても十分すぎるほどに強烈な内容でした。はい。

描かれる戦闘は、1993年に実際に行われた「モガディシュの戦闘」というもの。その戦闘中にブラックホークというヘリがダウン(墜落)したもんでブラックホーク・ダウンだよ、とそのままのご説明を差し上げる次第です。

実際に起きた戦闘(原作)を元にした映画なので、当然ながら映画に合った形での脚色であったり、主要人物を合体させたり等のドーピングはなされているものの、概ね事実に則った内容であるようです。

この手の戦争映画はどうしてもプロパガンダとセットになってしまうので、すべてを額面通り受け取るわけにもいかず、かと言って「どうせプロパガンダでしょ」とプロパガンダメガネで観てしまうと、「アメリカ万歳」→「自国賛美かよめでてーやつらだな」/「アメリカのせいでこんなになった…!」→「自国批判も辞さないご清潔アピールですか」とどう見せても穿って取られてしまう業を背負っている面倒なジャンルなので、なかなかフラットに評価するのが難しいわけですが。

でも、その辺を考慮しても「出来る限り忠実に、リアルさを前面に出して後は皆さんが判断してね」という形の作りは戦争映画としては潔くて良いのではないかと思います。

ただ、その分…なのかはわかりませんが、あまりにも「米軍の戦争・戦闘を前面に押し出した作り」だからか、舞台背景や登場人物の説明は最小限に留まっているので、理解しにくさもまた一級品です。特に兵士については、当たり前ですが皆同じ格好でヘルメットもしているので、誰が誰だかサッパリ。各人の名前すら把握しにくい状況の中、さらに軍特有のコードネーム的な名称で無線のやり取りがあったりするので、「誰がどこで戦っているのか」「誰と誰がどういう上下関係か」とかを完璧に理解しつつ観るのは無理、と割り切りましょう。

さらに個人的な話ですが、主人公と言えるエヴァーズマン二等軍曹(理想家)に関しては、「うーん、どっかで観た顔だな…。ちょっとコリン・ファレルっぽいけどこんな役やらないだろうしなぁ」とモヤモヤ観てたらエンドロールでジョシュ・ハートネットと知る、という節穴っぷりを露呈したわけです。さすがにユアン・マクレガーは最初からわかっていましたが、他にも出ていたオーランド・ブルームにトム・ハーディに至っては「どっかで観た顔」すら感じずに完全スルーしていたという体たらくで、節穴キラーとしても大変な作品だと思われます。

それと、もう完全に「泥沼地上戦に向き合う米軍」視点でしか描かれない映画なので、敵役となるソマリア住民や民兵に関しては無限に湧いてくるそれこそクリボーバリの雑魚キャラ扱いでしかなく、ソマリア内戦そのものに対する知識や感情を確立してくれるような映画ではありません。昨今流行りの「どっちが悪でどっちが正義とかそんな単純な話じゃないんだぜボウズ」というようなテーマはなく、もう潔いまでに米軍視点で「この戦闘マジ辛かったんだわ」という映画でしかないので、もっと視野の広い、戦争とはなんぞやを考えたい向きには合わないと思われます。

ですが、その「完全に割り切った米軍主体の戦争映画」であり、「誰が誰やらわからないたくさんの兵士が出てくる映画」であるために、主人公を絞った普通の戦争映画よりも戦闘そのものが多方面(部隊)からかなり立体的に描かれているため、陳腐な言い回しですが「あたかも自分もその場で戦闘に参加しているかのようなリアリティ」があり、これは本当に他にない凄さだったように思います。一つの戦闘を、一つの軍隊に絞り、その軍隊内の複数の動きを追うことで「どんな戦闘だったのか」を浮き彫りにする、という描き方。

これだけの規模で上映時間ほぼ全部、たった1つの戦闘に費やすという割り切った作りをやられたら、そりゃーなかなかこれを超える戦争映画って難しいんじゃないの、という気がします。

あとは個々人のキャラクターであったり、わかりやすい死亡フラグであったり、胡散臭い正義キャラだったりを膨らませる以外にない気がするので、もしかしたらこの映画は戦争映画における1つの到達点なのかもしれません。

何分、戦争映画なだけに誰にもオススメとはいきませんが、名作であることは間違いないと思います。すごかった。

このシーンがイイ!

「腕を拾う」シーンかなぁ。突然出てきてそのリアルな描写にハッとしました。こういうことが起こるのが戦場なんやで、と。

ココが○

上にもツラツラと書きましたが、結局大抵の戦争映画は、敵対する双方の主となる人物が描かれていたり、ある部隊の一人の兵士に焦点を当てたりして、それがまあわかりやすいし無難ではあるんですが、この映画はそれをやめて、あらゆる部隊のあらゆる役割の人達が主役級で登場するわけです。初めて戦場に行く新米兵士であったり、初めて班をまとめるリーダーであったり、パイロットであったり、デルタの精鋭であったり、車輌部隊であったり。

そうやって1つの戦闘を多面的に描くのは、個々の人間については理解し辛い反面、戦闘そのものに対しては理解度が飛躍的に増すんですよね。そしてその結果、戦闘自体がよりリアルに伝わってくるわけです。これはすごいな、と思います。

ココが×

ということでこれまた上に書いた通り、ある種確信犯的にそういう構造になっているんでしょうが、なんといっても「誰が誰だかわからない」点でしょう。おまけに我々日本人は米軍についての知識も普通のアメリカ人より不足していると思われるので、レンジャーだのデルタだのハンヴィーだの言われても違いがよくわからん、というのが普通では無いでしょうか。

誰が誰やらわからない人たちが違いのわからない部隊に割り振られている、というわかりにくさ。さらにその部隊は数字で細分化されたりするので、無線のやり取りなんてちんぷんかんぷん。おそらくこれだけで戦争映画に耐性のない人は眠っちゃってもおかしくない気がします。

それと、お決まりですが結構きつい場面は出てきます。がっさり下半身無くなっちゃった兵士とか。僕はこういうのは戦争映画なら(嫌だけど)ある程度許容できるので問題なかったですが、ダメな人はダメだと思います。ご注意。

僕もこれがホラーになるとまったくダメです。シチュエーションって大事ですね。エロにも同じことが言えます

MVA

調べると、主役級からマニア受けする名脇役までいろんな人が出ているオールスター気味の贅沢な映画ですが、僕はもうこの人しかいないな、と思って観ていました。

トム・サイズモア(ダニー・マクナイト中佐)

車輌部隊を率いるおっさん。いわゆる職業軍人って言うんでしょうか。強面で怒鳴り散らしつつも、修羅場でも落ち着いているおっさん。

もーね、かっこいいんですよこの人。外見は全然かっこよくないんだけど、佇まいがむちゃくちゃかっこよくて。中佐っていうのは出てくる兵士の中でも階級的には相当上の方だと思いますが、いつ死んでもおかしくないぐらいの苛酷な最前線で部隊を率いる様はまさに壮絶。素晴らしい演技でした。

ちなみに同じ中佐のハゲオッサン(24のピアースでお馴染み)は空の上からのほほんと指示出してましたからね。その差たるや。

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