映画レビュー0829 『ボヘミアン・ラプソディ』

そのうち観ようかなぐらいで観に行くつもりはまったくなかったんですが、聞こえてくる評判がことごとく賞賛の嵐だったため、IMAX公開が終わる前に…と急いで仕事終わりに最寄りの劇場のIMAX最終回、レイトショーで鑑賞してきましたよー。

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ちょっと今回から予告編がある映画については貼り付けていこうかなと思っています。ビジュアルがなくて寂しすぎるのでYoutubeさんのお世話になっちゃうぞと。

過去のレビューについても修正していきたいと思っていますが、時間がかかるのでそのうちです。やらない可能性も高いです。ダメ人間なので。

ボヘミアン・ラプソディ

Bohemian Rhapsody
監督
デクスター・フレッチャー
脚本
アンソニー・マクカーテン
原案
アンソニー・マクカーテン
ピーター・モーガン
出演
ラミ・マレック
ルーシー・ボイントン
グウィリム・リー
ベン・ハーディ
ジョゼフ・マゼロ
エイダン・ギレン
トム・ホランダー
アレン・リーチ
マイク・マイヤーズ
音楽
公開
2018年10月24日 イギリス
上映時間
134分
製作国
イギリス・アメリカ
視聴環境
劇場(IMAX 2D)

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1970年代初頭、インド系移民一家で暮らす青年ファルーク・バルサラ。ある夜ファンだったバンド「スマイル」のリードボーカルがやめたことで運良くボーカルとしてバンドに入った彼は、バンド名を「クイーン」と改名し、徐々にスターへの道を登り始めるのだった。

スキャンダルに走りすぎず、バランスが良い作りな上に音楽最高。

9.0
ご存知「クイーン」とそのボーカル、フレディ・マーキュリーの一生
  • 伝説のバンド「クイーン」の伝記
  • フレディ中心ながらフレディに寄りすぎず、バンドメンバーの個性もしっかり見える
  • 伝記モノとしてはオーソドックスながら、全体的なバランスの良さで誰でも観やすい
  • 曲最高、特にラストのバンドエイドは圧巻
ご存知の通り僕は洋楽を(邦楽もだけど)通らずに生きてきた人間なので、「クイーン」もごくごく一般的な知識しか持ち合わせていませんでした。曲も聞けば知っている曲も多いものの「この曲もクイーンなんだよ」と言われて初めて彼らの曲だと知るようなものも多く、おそらく「クイーンなんて大して知らない」層の代表的なポジションかと思われます。

なので特に観に行くつもりもなかったわけですが、この映画はそんな「クイーン知らないよ」層でも十分楽しめる素晴らしい伝記モノに仕上がっていると思います。

この手のミュージシャン系伝記映画は当然ながら曲が良いのでほっといても良作になりやすいと僕は思っているんですが、その中でもこの映画は特にバランスよく、またフレディ・マーキュリーというある意味で伝記に向いた稀有な人生を歩んできた人が中心に据えられていることもあって素晴らしい映画になっていましたね…。

なにせ「知ってる人にはわかりきっている」ストーリーになる映画なんですが、一応説明。

主人公はインド系移民一家長男、ファルーク・バルサラ。彼はそんなインド系の出自であることを嫌い、自らを「フレディ・マーキュリー」と名乗り始めます。

彼は音楽にハマっていて、夜な夜な家を抜け出してはバー的なところで演奏しているバンドを見るのがお好きなご様子。

彼のお目当ては「スマイル」というバンドで、その日の演奏もいやーよかったなーってことで感想を伝えるぜと彼らの元へ行くと「たった今リードボーカルがやめてね…」と。

「じゃあ新しいボーカルを入れるチャンスだね」と自らをアピール、彼はめでたく「スマイル」の新ボーカルとして採用されます。

その後フレディの提案でバンド名を「クイーン」に変えた彼らは、アマチュア界隈ではそこそこ人気になりつつも「上を目指さないと」ってことで自費でレコーディングに臨み、それを見たレコード会社「EMI」のスタッフにスカウトされ…とトントン拍子で登っていくわけですが…あとは観てどうぞと。

まず最初に補足しておくと、一応この映画の名義上の監督はブライアン・シンガーなんですが、なんでも撮影終了直前になって揉めたそうで解雇され、その後元々監督として決まっていたものの降板したデクスター・フレッチャーが引き継いで完成させたそうです。(なので一応当サイトでは両名併記にしています)

撮影に関してはブライアン・シンガーが3分の2まで終えていたそうなので、撮影の割合から言えばブライアン・シンガーの映画と言えそうですが、その後の編集やらなんやらはきっとデクスター・フレッチャーの方が中心だと思うので…「さすがブライアン・シンガーだぜ!」とも言えないなんともモヤモヤしたバックグラウンドのある映画ですねぇ…。

大抵この手の大きな揉め事が発生した映画って言うのはあんまり期待できないものだと思うんですが、いやどうしてしかし…よくぞここまでしっかり作り上げたなぁと感心&感動。

僕は「ワルキューレ」が好きなのでブライアン・シンガーは良い監督だと思っているんですが、しかしこういったドタバタを引き継いでここまでのものを作り上げたという意味ではデクスター・フレッチャーの功績もまた偉大なものなんでしょう。ちょっとその辺の裏話も詳しく知りたいところですね。

さて、肝心の内容について。

やっぱりこの手の歴史上の人物、しかもミュージシャンの話となると、どうしてもモノマネ感が気になることが多いと思うんですよね。「ジェームス・ブラウン 〜最高の魂を持つ男〜」なんてその最たるものだったんですが。

この映画に関しては、主演のラミ・マレックにその辺の違和感がまったくなかったのがまずすごく良かったです。僕がベースとなるフレディ・マーキュリーの話し方とか日常的な動作を知らないせいもあるんでしょうが、それにしてもすごく自然で。

若干出っ歯を強調し過ぎな気はしましたが、それはまあ彼のせいではないし良いでしょう。

クイーンの他のメンバーに関しても(見た目)かなり違和感がなく、鑑賞後に本物のライブ映像を観ながら「ああこのときは髪の毛切ってたのね」とか普通に同一人物として見ちゃったぐらいにハマってました。特にネットでも話題のブライアン・メイを演じるグウィリム・リーなんて似すぎてて笑うレベル。

歌に関しては、基本フレディ・マーキュリー本人のもので、不足しているものは彼の歌声にそっくりなマーク・マーテルという方の歌を(加工しつつ)使用しているそうで、無理にラミ・マレックに歌わせなかったのも良かったんでしょう。

もう一つ書いておきたいのが、フレディ・マーキュリーはご存知の通り(ゲイに近い)バイセクシュアルで、HIVが原因による肺炎で亡くなったわけですが、この経緯からするといろいろスキャンダラスに下世話な話を盛り込みやすい面があると思うんですよね。

途中でそんな世間の目を反映させたような記者会見のシーンも出てきますが、しかし殊更そう言ったゴシップ系の話に寄りすぎず、匂わせる程度の味付けとして盛り込むぐらいにとどめているそのバランス感覚がとても良い映画だと思いました。

セックス・ドラッグ・ロックンロール、どれも話に出てきますが、それに“溺れる”描写がない。リアリティの面では物足りなさがあるのかもしれませんが、そんな下世話なところまで見たくないよという映画の観客としては非常にバランスの取れたエピソードの描き方だったように思います。

またそのおかげでフレディ・マーキュリーその人の印象が悪くなりすぎないのも、観客の感情移入を助ける作りとして良い選択だったんじゃないでしょうか。

きっと本当はもっと嫌なヤツだったりしたのかもしれないと思うんですよ。ただあんまりそういう描写もなく、むしろ最後までどこかかわいげのある「染まりきらない」スーパースターだった感じがして、そこが感情的にとてもグッと来た面がありました。

最初に結婚したメアリーとの仲であったり、彼が知り合うある人とのエピソードであったり、いわゆる「ビッグになって人付き合いが変わる」タイプとは違う人間像が見えてくる感じが愛おしく、フレディを知らない観客がしっかりフレディを好きになって応援したくなる物語になっているのがとても良かったですね。

中盤以降は次第に孤立を深めていくフレディの姿を通し、ラストのカタルシスにつなげていくおなじみの展開ではあるんですが、しかしそのラストが今もって「伝説のライブ」と称される1985年のバンドエイドなので、そりゃあもう観客の高まりっぷりは推して知るべしですよ。

「完全再現」と言われるこのバンドエイドシーンの良さはもうとにかく観ろとしか言いようがないわけですが、このバンドエイドの開催目的自体がチャリティって言うのがまた…HIVに冒されたフレディの姿とシンクロするものがあり、得も言われぬ感動を呼ぶわけです。

またこのライブシーン自体も劇中の様々な伏線を回収する場になっているのがとても上手い。細かい部分でフレディの心境の変化や成長を感じ取り、クイーンというバンドの価値を噛みしめるライブになるというのが…最高でした。

だからもう出来すぎなんですよね。フレディの人生自体が。

歌もうまく曲作りの才能もあり、観客を巻き込むパフォーマンスは圧巻。しかしHIVに感染し若くして亡くなったバイセクシュアルというキャラクター。おまけにインド出身というマイナリティでもある。そんな彼率いるクイーンがチャリティのライブで最高のパフォーマンスを見せるわけです。泣くなって言う方が無理でしょうが!!(逆ギレ)

一説によるとクイーンのCDは全世界で2億枚以上売れているそうです。2億枚ですよ!?

「LGBTの人たちには生産性がない」とか言ったどっかの国のバカな国会議員はこの数字をどう捉えるんでしょうか。

そんなLGBTについての感情的分断が進む現在だからこそ、フレディ・マーキュリーという天才がより輝くタイミングでこの映画が作られたことは、やっぱりちょっと歴史的な何かを感じざるを得ません。死してなお世の中に影響を与える、偉大なんて陳腐な表現では言い表せない大スター、それがフレディ・マーキュリーという人なんでしょう。

観る前から「ボヘミアン・ラプソディを観てCD買ったりファンになるミーハー嫌だわ」とかいろいろ聞いていたんですが、僕はもう堂々とサントラ買いますね。超買う。改めてクイーンの曲の良さ、歌のうまさに感動しました。ここ数日はYoutubeで彼らの映像を観てばっかりです。

物語としてのバランスの良さ、時代的な背景から来るフレディの偉大さ、そしてまったく古くならない楽曲の価値、すべてにおいて観る価値のある映画と言えるでしょう。できれば劇場のような充実した音響設備の元でぜひ!!

このシーンがイイ!

ライブエイドの良さは言うまでもないんですが、映画としては僕はオープニングを推したいですね。

ロックアレンジの20世紀フォックスファンファーレから始まり、ライブエイド当日家から会場入りしてライブが始まるまでのフレディを追った一連のシークエンス、もうテンションの上げっぷりがハンパじゃない。いきなり血がたぎるのがわかります。最高。ご飯食べてるニャーンたちも最高。

ちなみにファンファーレはなんとクイーンのブライアン・メイとロジャー・テイラーの二人が演奏しているそうです。こういう遊び心がある映画、これまた最高。

ココが○

ベースにあるのはやっぱり曲の良さなんだと思いますが、ただ映画として取り上げられる以上はそんなの当たり前の話でもあるので、それ以外となると…一番はバランスの良さかなぁ。

フレディが主役なのは間違いないですが、しかしメンバーたちの性格の違いもしっかりわかる程度に彼らの描写も適度になされ、それぞれ4人に感情移入できる作りなのがとても良いと思います。

ココが×

最初に書いた通り、まあ言っても話の流れとしては普通ではあるんですよね。どうしてもそうなっちゃうのは当然なんですが。

素人からプロになり、駆け上がるも壁にぶつかり、軌道修正して終わる流れ。なのでありきたりと言えばありきたりです。

ただそんなのどうでもいいじゃん、ってぐらいに真面目に丁寧に、しっかり全力で「クイーン」を描こうとしているので、そこに不満を言うのは野暮じゃないかなとも思いますね。

あとはヒット曲の誕生秘話みたいなものは本当にサラッとしか出てこないので、その辺の裏話を期待しちゃうとガッカリするかもしれません。あくまで「フレディ・マーキュリーという人物と、彼にとってのクイーンとメアリー」が中心の映画になります。

MVA

メアリー役のルーシー・ボイントンがねー。初めて観たけどすごくかわいくて好きでした。

メンバーはそれぞれそっくりなんですが、ジョン・ディーコンを演じたジョゼフ・マゼロが若干三又又三似だったことも見逃せません。

そんな中、結局はやっぱりこの人にするべきかなという気が。

ラミ・マレック(フレディ・マーキュリー役)

見た目で言えば一番似てないし、フレディと比べるとちょっと線が細いんですよね。歯もちょっと強調しすぎな気はするし、歌も別に歌ってないし…ってことで一番ダメじゃね? と思っちゃいそうなんですが、しかしどうしてフレディにしか見えない。

動きに関してはかなり研究とレッスンを重ねたらしく、「トレースするのではなくフレディとして動きを繰り出す」いわゆる憑依芸人的なアプローチでなりきっているのがお見事。

編集の巧みさももちろんあるんでしょうが、本当に歌ってるように見えるシンクロっぷりはものすごいし、むしろ「見た目似て無くてもフレディにしか見えない」力技の完成度が高すぎる。すごい。

個人的に役者さんはあんまり観たことがない人たちばっかりだったんですが、それがむしろ伝記モノとして良い方に作用したような気もしますね。

しかしまあ…あれですよ。「Somebody To Love」最高ですよ。もうずっと聞いてる。

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