映画レビュー0345 『第9地区』

特に内容を知らずに借りたシリーズ。シリーズだったのか。

<ご報告>

結局終わってみれば正月休みもあっという間、採点し直しは延期となりました。お詫びとして今日一日、裸で過ごします。お許しを。

第9地区

District 9
監督
脚本
テリー・タッチェル
出演
デヴィッド・ジェームズ
ジェイソン・コープ
音楽
公開
2009年8月13日 オーストラリア・ニュージーランド
上映時間
111分
製作国
アメリカ・南アフリカ共和国・ニュージーランド
視聴環境
TSUTAYA DISCASレンタル(ブルーレイ・TV)

第9地区

ある日突然、南アフリカのヨハネスブルグ上空に宇宙船が出現。しかしいつまで経っても何も起こらず、応答もしないため、人類が宇宙船に穴を開けて中に入ったところ、中では大量のエイリアンが衰弱していた。

斬新な設定の真剣B級映画。

7.5

全編ドキュメンタリー調でお送りする、今までありそうでなかったエイリアンとの共生世界を描いたSF映画。設定的にも、若干緩めのエイリアンの描写的にも、かなりB級臭漂う映画なんですが、でも作りはかなり真面目な印象。真面目というか、しっかり力量のある人たちが作っている感じがしました。

大体この手のエイリアンものというのは、まあ当然のように「侵略側と守備側」みたいな展開がお決まりですが、この映画のエイリアンは指導者層が何らかの理由により死亡、残った連中は文字通り烏合の衆と化していて、「とりあえず衰弱してるし」と人類により地上へ移送され、そこで回復しつつ数を増やし、スラム街のような“第9地区”で人間としょっちゅう小競り合いしつつも一応共存している世界が舞台になっています。

ただ、やはり犯罪に走るエイリアンも多いため、第9地区周辺住民から「もうエイリアンは勘弁してくれ」と声が高まり、次なるさらに劣悪な居住区“第10地区”へ移住させるための計画がスタート、その現場責任者として任務を任された凡庸な男・ヴィカスを主人公に、様々な人のインタビューやヴィカスを追った映像記録をつなぎあわせてドキュメンタリー調に作り上げた映画となっております。

オープニングはヴィカスの「新任インタビュー」から始まっていて、その後関係者のインタビューとヴィカスの仕事を追った映像なんかが続き、一貫して「ドキュメンタリーです」という雰囲気で進んでいくんですが、そこにあてがわれるエイリアンの性格・生活が妙にリアルで面白く、今までの一辺倒な「エイリアンが攻めてきたー!」という映画とは一線を画すリアリティが新鮮です。

おまけに彼らを導く立場にいるはずのお偉いさん方が開幕から死亡しているため、「その辺の一般エイリアンしか出てこない」というのもまた新鮮で、猫缶が大好物で簡単に騙されたりだとか、人間からは「エビ」という蔑称を与えられているとか、かなり力が強そうな割に人間側もあまり警戒せずに接してたりとか、とにかく独特の世界をリアルに作り上げていて、ちょっと他にはない不思議な説得力を持った映画でした。

そんな中、移送計画の現場責任者である主人公・ヴィカスが、ちょっとした不注意から自身の体に異常が起き、所属していた組織はおろか、いろんな勢力から追われる身になるというストーリー。

正直なところ、しっかり考えるとあちこち突っ込みたくなるところもあって、やや雑な話であることは否めません。その辺を世界観でカバーしてそつなくまとめあげた映画という感じ。ただその「世界観のカバー力」がなかなかのもので、その説得力を高めるためにドキュメンタリー調で作っている作戦もウマイ。

エイリアンの立場と移送計画には、舞台となる南アフリカのアパルトヘイト政策が反映されているようですが、それでも監督が言っている通り基本は娯楽映画になっているので、特に難しいことを考えずに楽しめる映画である一方、深さや余韻といった面では今ひとつ。普通に「面白い設定だなー」で走り切るスタミナはありますが、観終わって特に何かを感じることもなく終えていく映画です。

が、それがいいんでしょう。ここでヘタに語られるともったいない気もするし。

一風変わったエイリアン映画としての完成度はなかなかのものだし、飽きさせない展開のうまさもありました。後々万が一、本当にこんな話がどこかで起きたら伝説の映画になるでしょうが、そうでない以上は「ただの娯楽映画として消費されるだけでいい」みたいな割り切りもありそうです。ヘタな功名心みたいなものがない分、スッキリ気軽に観られていいんじゃないかと。

このシーンがイイ!

この手の映画の割りには低予算に分類される映画のようですが、その割にきっちり映像も作り込んでいて、特に終盤、光に吸われていくアレの映像なんかはすごく綺麗で良かったなと。

ココが○

やっぱり世界観に尽きるんじゃないかなー。細かい部分でリアリティを持たせるうまさに、この監督さんのセンスが伺えます。長編初監督らしいので、今後もちょっと気になりますね。

ココが×

若干グロいというか、あっさり人間が飛び散ったりするので、その辺ダメな人はダメかもしれません。ただ本当にあっさりだし、よく見えるように近くで撮ったりとか、そういう趣味の悪い作り方はしていないので、あんまり気になる人はいないと思います。

強いて言えばそれぐらいで、あとは普通に娯楽として楽しめる映画ではないかと。

MVA

固有の登場人物は主人公と彼を追う大佐ぐらいなんですが、まあ順当にこの人だろうな、と。

シャールト・コプリー(ヴィカス・ファン・デ・メルヴェ役)

いかにも凡庸でちょい優男風の一般人、その雰囲気のうまさもありますが、何がスゴイってこの人、この映画でのセリフは全部アドリブなんだとか。

後半はあんまり大したセリフも無かったんですが、でもやっぱりちょっと(役者としての)才能がありそうな雰囲気を漂わせてましたね。

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