映画レビュー0503 『ドッグヴィル』

最近映画をオススメされることが増えたので、しばらく友達からのご紹介映画が増えそうです。最初の一本はこちら。

ドッグヴィル

Dogville
監督
脚本
ラース・フォン・トリアー
公開
2003年6月4日 デンマーク
上映時間
178分
製作国
デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・ニュージーランド・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア

ドッグヴィル

あるアメリカの田舎町。ある日の夜、一発の銃声の後、見知らぬ一人の女性が町に逃げ込んでくる。閉鎖的な町の人々は、彼女を受け入れるか悩んだ末、「2週間後、全員一致で許可が出れば、あなたを受け入れよう」という提案をする。彼女は町の人々に受け入れられるように努力を重ね、町民たちも次第に彼女を受け入れていくのだが…。

重めですが、観て損無し。

8.5

アメリカのド田舎で、超狭いコミュニティにやってきた一人の若く綺麗な女性を巡る、人間のいや~なところあぶり出し映画。

大きい倉庫のようなところで撮影されたらしく、セットは極端なほど簡素で、家の仕切りは白線だけだったりするのに「ここは町です」と言い張る、なかなか意欲的な実験作っぽい映画ですが、ただ「低予算で演出勝負の映画」というよりは、「舞台を映画化しました」みたいな雰囲気が強かったですね。舞台を観ている感じ。なので、事前に聞いていたよりも違和感も無く、割合すんなりと受け入れつつの鑑賞となりました。

ある晩、遠くで聞こえた銃声のあとにやってきたミステリアスな女性、グレース。彼女を街に受け入れ、匿うかどうかで住人たちは相談、結局「2週間様子を見てみて判断しよう」ということで新たな住人(グレース)を加えての生活が始まり、彼女も徐々に町に馴染み、住人たちも受け入れていたが…!

次第に力関係が揺らぎ始め、あらゆる意味での「人間らしさ」を現し始める住人たちに、グレースは果たしてどういう答えを出すのか、そしてグレース自身は何者なのか…というお話。

主人公の一人、青年トムが哲学的な思考の持ち主だけあって、序盤は特に、やや哲学的・宗教的な雰囲気を感じた映画ですが、結局最後まで観ると「ああ、人間の話だな」という感じで、その手の「西洋とっつきにくにく芸術映画」的な映画よりも全然観やすく、わかりやすいのがグッド。

約3時間という長丁場の映画ですが、プロローグ+9章という章立ての構成で、割ときちっと区切りを入れてくれているからか、あまりダラダラ続く感じもなく、上映時間の割に観やすいのも◯。

それでも序盤は結構ダレる感じもありましたが、後半はいよいよ「人間ってやーね」という部分が丸出しになってくるので、モヤモヤしつつもしっかり最後まで観られる映画だと思います。

おっと、書き忘れましたが、まず大前提として結構重いというか、考えさせられる面の多い映画ではあります。万人向けかと言われると間違いなくそうではないな、と。

もーね、段々と理性を捨てて本能に遠慮をしなくなってくる住人たちがンマーリアルで、すごく嫌な気分になれます。それも単純に「嫌なやつだな」というよりは、「自分もそういうところがあるけど見ないフリをしている」ような、すごくいい線を突いてくるのが観ててツラい。

ぜひ、みなさんも「自分だったらどうだろう」と自問しながら観てみてください。僕もあんなべっぴんさんが圧倒的弱者の立場で近くにいたら、果たして理性に勝てるのか…いやー、ほんと嫌なところを描いてくれています。

ただ、最後の最後でその辺の回収をあからさまに成し遂げてくれるので、予想していたほど嫌な思いに浸ることもなく、むしろスッキリするような感覚もあり、逆におそらくはその辺で好き嫌いが分かれそうな気もしました。

詳細は避けますが、もっととんでもなく救いようのない話にしようと思えばできたはずなので、そういうのを期待していた人とそうでない人で評価が分かれる部分はあるのかな、と。それは「誰に感情を寄せるのか」という見方にもよると思うので、ある種、人によって見え方が違ってくる映画なのかもしれません。

とまあここまで書いておいてなんですが、ラストは言ってみれば「観客のために用意しました」みたいな話であって、根幹となるのは町の人たちの人間性の部分であるのは間違いのないところでしょう。

人間ってなんやねん、どうやねん、という問いかけ。その辺りを考える映画として、なかなか壮絶な話ではありました。

決して万人向けではありませんが、映画好きにはグッと来る魅力を持った映画であると思います。

約3時間の重い映画ということで覚悟はいりますが、気になる方はぜひ。

このシーンがイイ!

雪の中、グレースの“跡”が付くシーン。あれは残酷だなぁ…としみじみ感じましたね。

ココが○

簡素な舞台は最初特異に観えるかもしれませんが、最後まで観るとむしろこれで良かったような気がしました。リアルにロケでやっちゃうと生々しすぎるかな、っていうのもあるんですが、それよりも「セットで丸見え」だからこそ露骨に人間性が伝わってくる感じがすごいな、と。

なんなんでしょうね。残酷さが際立つというか。ステラン・スカルスガルドもお馴染みのお尻丸出しだし。

ココが×

話自体は重めだし尺も長いので、それなりに観るタイミングを選ぶ映画ではあると思います。特に女性はしんどい気がする。

MVA

ポール・ベタニーと言えば、あのクソつまらなかった「ダ・ヴィンチ・コード」でしか観ていない(声だけならアイアンマンシリーズに出ていますが)んですが、あの時とは全然違う優男感がなかなか良かったですね。この人にしようかと思いつつ、でもやっぱりこの映画はこの人なのかな、と。

ニコール・キッドマン(グレース役)

一番いい時期にいい映画が回ってきたような印象。

すごく綺麗で、でも最終的な解答には納得させられるような雰囲気もあるし、お見事なキャスティングだったと思います。

なかなか珍しいタイプだとは思うんですが、僕はラストの彼女の演技で少し泣きました。泣く映画ではないんですけどね、きっと…。

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