映画レビュー1014 『幸せなひとりぼっち』

これもいろいろ目にする機会があったもののなかなか観る機会がなかったんですが、この度いよいよネトフリ配信終了ということで観る機会に恵まれましたよと。

スウェーデンの映画ですね。こういう「評判になったヨーロッパの映画」はどうしても期待しちゃいます。

幸せなひとりぼっち

En man som heter Ove
監督

ハンネス・ホルム

脚本

ハンネス・ホルム

原作

『幸せなひとりぼっち』
フレドリック・バックマン

出演

ロルフ・ラッスゴード
バハール・パルス
イーダ・エングヴォル
フィリップ・バーグ

音楽

グーテ・ストラース

公開

2015年12月25日 スウェーデン

上映時間

116分

製作国

スウェーデン

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

幸せなひとりぼっち

ほっこり良い話だけど周りに恵まれすぎでは。

7.5
なかなか死ねない偏屈爺さんがご近所さんに“生かされる”
  • 奥さんを亡くし世の中に絶望した爺さんが自殺を試みるもことごとく失敗
  • 引っ越してきたお隣さんに頼られ交流していくうちに徐々にこの世との接点が増えていく
  • ほっこりシニカルな笑いもありつつのヒューマンコメディ
  • ただちょっと爺さん周りに恵まれすぎ

あらすじ

北欧のヒューマンコメディというと…「100歳の華麗なる冒険」辺りが思い出されますが、あれよりももっと日常に根ざした「普通の人物」の晩年を描いた映画、と言ったところでしょうか。

聞こえてくる評判の通り良い映画(大体北欧の映画が日本で話題になる時点で良い映画が多い印象)でしたが、とは言えちょっと現実味が薄い話のようにも感じられたし、思っていたよりも作り物っぽさが滲む話ではありました。

ということで主人公はオーヴェという爺さん。爺さんとは言っても59歳だそうでそこまで爺さんでもないですね。ただ見た目はだいぶくたびれております。

彼は半年前に愛する妻を亡くし、さらに勤め先からはテイの良いクビ宣告を受けたことでいよいよもう生きている必要がない、と自殺することを決めます。

しかし…首を吊ろうとしたら来客が来てタイミングを逃し、また再度チャレンジしようとするも紐が切れ、じゃあ今度は別の形で…と何度もチャレンジしますがその度に失敗、「生かされ」続けます。

彼は(以前会長だった)住んでいる一地区を毎日“見回り”してはルール違反を咎める作業を続けていて、まあ一言で言うなら偏屈爺ですよ。きっとずっと偏屈だったと思うんですが、奥さんを亡くして一人になってしまったためによりそれが加速してしまったような雰囲気。

とにかくルールにうるさいし暴言は吐くし食って掛かるしで近隣住民からすればかなり迷惑なタイプなんですが、まあ長年の付き合いもあるしまだ妻を失って日が浅いという“猶予期間”ということもあるんでしょう…周りの人たちも強く出ることなくそれなりに付き合いは続けているようです。

ある日、そんなオーヴェの向かいにイラン人女性・パルヴァネとその夫と子どもたちが越してくるんですが、このパルヴァネがオーヴェの偏屈さを乗り越えてへこたれずにガンガン物を頼んだり“ご近所付き合い”を進めようとするわけです。

それによってまたオーヴェの自殺が阻まれたりもするんですが、彼はグチグチ文句を言いつつ結局パルヴァネのペースに巻き込まれていろいろ面倒を見るうち…少しずつ地域との接点を取り戻していきます。

それでも「妻は他界し、仕事はクビ」の状況は変わらないこともあり、依然として自殺(というより奥さんの元へ行きたい)を実行しようとするオーヴェですが、さて…。

主人公、周りに甘えすぎじゃね?

話としては上記のような現在のお話がメインになりつつ、“走馬灯”のように思い出される若かりし頃のオーヴェの姿が交互に流れます。

そこでオーヴェがいかに奥さんを愛していたか、愛するに至ったのかをお知らせしながら、オーヴェの喪失感に想いを寄せつつ「なんでこんな爺になってしもたんや」と悲しい目で観る映画です。いやそうじゃないけど。でもそんな気は強く持ちました。

ちょっと「きみに読む物語」と似たような“過去と現在のギャップ”が感じられる物語で、オーヴェも割と好青年っぽかったのになんで今となってはここまでキツい人格になってしまったのか…と少し違和感があったのは確か。でも奥さんへの並々ならぬ愛情を思えば、それを失ったことで自暴自棄というか「自分への評価なんて今さらどうでもいい」とばかりに他者への当たりがキツくなった、というのは理解できないでもないです。

ただそこかしこで過去から持っている“本来のオーヴェ”っぽい姿が今も見えるようなエピソードも仕込まれていて、素直にはなれないものの悪い人じゃないよね、的な見せ方はお上手でもありました。

でもねー、それでもオーヴェは周りの人たち(奥さん含む)に恵まれすぎだと思うんですよ。

あれだけ攻撃的な爺だったらいくらなんでも大半の人たちは疎遠になっていくと思うんですが、それでもまだ周りの人たちが温かくて。それが不思議というか、ちょっと綺麗すぎる話じゃないかなぁという気が。

馴れ初めも奥さんが聖人すぎるが故になし得たようなものだし、なんで俺にもこういう聖人が来ねぇんだよと腐りたくもなります。

ただもしかしたらこれは北欧の人たちのメンタリティとか国民性みたいなものもあるのかもしれないですね。日本だったら絶対こんな爺さんは相手にされないと思うんですけどね…。みんな怪訝な顔をしつつもなんだかんだ優しいし、縁を切ろうとしないのがすごい。

で、それに対して応えていくならまだしも、オーヴェは頑なに偏屈なままなんですよ。

もちろん最終的にはある程度変わってはいくんですが、ただ基本的にずっと偏屈だし、攻撃的だし、言ってみれば「周りに甘えてる」爺感が強く、そこがなんとももどかしいと言うか…「まだ甘えるのかよ贅沢爺が!」と少し頭に来るぐらいに変わらない。

周りの人たちが世話を焼きすぎなんじゃないかと思ったんですよね。もうほっとけばいいじゃんこんな爺、って何度も思いましたよ。でも見捨てないんですよね。

そこが良くもあるんですが、ただ今の日本人的な感覚からすればちょっと信じられないぐらいに周りが寛容なので、余計にオーヴェの横柄さが際立ってあんまり好きになれないような印象はありました。

そう、結局は主人公に対する感情移入が少し弱くなってしまったかなというのが大きかったかもしれません。

なんだかんだ良い映画

でもまあなんだかんだ言いつつ最後はホロリと涙も出たし、いいお話ではありましたよ。

「幸せなひとりぼっち」とはなかなか良いタイトルだと思います。奥さんを亡くして悲観するばかりの「ひとりぼっち」だったけど、幸せは愛する人から得られるだけじゃないんだぞ、と。

北欧の一般人を描いた映画なだけに一見地味だし、そんなに大きく展開していく話でもないので少々大人向けの映画ではあると思いますが、週末の夜なんかにしみじみ観るには良い映画ではないでしょうか。

もしかしたら今の自分ですらまだ若いのかもしれない。もうちょっと歳を取ってから、自分の偏屈さに気付いていないときに観て自分を省みる、そんな映画なのかもしれないですね。

まあ自分の場合は奥さんいませんけどね。最初から死別してるようなもんで。余計偏屈爺になりそう。

このシーンがイイ!

オーヴェがパルヴァネと一緒に笑うシーンは良かったですね。あそこでオーヴェは初めて笑った気がする。

あとはやっぱり…わかってはいましたがエンディングは綺麗な展開で良かったですね。

ココが○

地味ですが一般人の話だけにそんなに遠い物語にも感じられず、意外と身近にこういう話はあるのかもしれないリアリティ…でしょうか。ただその割には周りが優しすぎるけど。

ココが×

やっぱりあれだけ偏屈に描かれると周りとの関係性に違和感が出ちゃうのはしょうがないと思うんですけどね。スウェーデンはああいう「それでも周りが面倒を見ないと」みたいな価値観が根ざしているんでしょうか。

それはそれで素晴らしいなと思うんですが、ただ日本ではきっとここまで周りが拾い上げてあげる状況は生まれにくいでしょうね…。悲しいことではありますが。

MVA

奥さんもさり気なく良かったんですが、まあ順当に。

ロルフ・ラッスゴード(オーヴェ役)

主人公の偏屈爺。

本当に嫌な人間っぽさがすごいんですよ。役者さんとしては素晴らしいしきっと楽しかったんじゃないかなと思います。

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