映画レビュー0853 『100歳の華麗なる冒険』
エキサイトismの「今週末観るべき映画」で紹介されていた一本。あのコーナー終わっちゃったんですよね…。(好み的に)ハズレも多かったけど他ではあまり紹介されてない映画が多く、楽しみにしていただけに残念。個人のブログで続けられているようではあるんですが。
で、この度またもネトフリ終了が来るってことで。
100歳の華麗なる冒険

爺版「フォレスト・ガンプ」、開き直ってとっ散らかって面白い。
- 爺さんの過去と現在を行き来しつつのコメディロードムービー
- ややブラックな面もあり、素直に感動するような映画ではない
- 人生終盤の爺さんのファンタジーとしては◎
- ご都合主義に振り切った開き直りっぷりがむしろ良い
スウェーデンの映画と言うと…やっぱり「ぼくエリ」の印象が強いかなぁ。
あれも他にないすごい映画だったんですが、この映画もコメディながらやっぱりちょっとアメリカ映画とは違う、すごく割り切った作りがクセになるような面白い映画でしたね。
主人公のアランは100歳の爺様なんですが、その100歳の誕生日当日、今まさにケーキを持ってお祝いするぞ、って時に住んでいる老人ホームから脱走。って言っても「逃げるぜ!」って感じでもなく、なんとなくフラフラ「外出てみるか〜」的に出て行っちゃった、みたいな。
最初に着いた先は駅。彼は持っていた小銭で行けるところまでのバスの切符を買ったんですが、バス待ちの間にヤバそうな兄ちゃんがやってきて、「トイレ行くからお前このカバンから手を離すなよ!」とでかいキャリーバッグを押し付けられます。が兄ちゃんが出てくる前にバスが来ちゃったからまあ手を離すなって言ってたしとバッグ持ったまま乗り込むアラン。ボケてるのかな? と思ったんですがどうもこの後の彼の言動から察するにそんなことはなく、確信犯的に持って行った模様。
着いた先の寂れた駅で、そこの駅舎に住むユーリウスという老人と意気投合した彼は、食事をともにしていたところにさっきの兄ちゃんが到着。たまたま席を外していたアランはユーリウスを脅している兄ちゃんの頭をガツンとやっちゃって見事に撃破、とりあえず兄ちゃんは冷凍庫に閉じ込めてその間にバッグを開けたらお金がどっさり。
まあとりあえずデザートでも食うか、ってな感じでダラダラ翌日までそこで過ごしていたところ、うっかりユーリウスのおかげで兄ちゃん凍死。オイオイ。
このままじゃまずい、ってことで彼を運び出し…ってな調子で成り行きの旅を続け、行く先々で仲間が増えつつのアランの旅。どうなることやら…というお話です。
上記説明では「現在」の話しか出していませんが、ここにさらにアランの過去の話が混ざってきます。結構な割合で。半分ぐらいは過去の話だったんじゃないかなー。
現在の置かれている状況や登場人物のセリフを受け、「○○と言えば昔…」的に昔のエピソードが挟まる、と。
で、この昔のフェーズの内容や挟み方がとても「フォレスト・ガンプ」っぽいんですよ。
歴史上の人物と交流があったりしたことが徐々に明らかになっていくんですが、その現実世界との関わり方にしても、ちょっと空気を読めない変わった主人公像にしてもすごく似てると思います。
あの映画ほど感動に寄せた良い話でもないし、こっちはコメディなのでむしろブラックだったりする方が強いんですが、見せ方や雰囲気はかなり似ているのではないでしょうか。
言うなればコメディ版&爺版「フォレスト・ガンプ」。アランは時に活動家だったりスパイだったり割とアングラな方の役割が多かったこともブラックさに拍車をかけているのかもしれません。
その過去の話にしても、また現在の話にしても、基本的に空気を読まずやりたいようにやり、また過度に入れ込みすぎず好きなことをやりながら適当に過ごしてたらうまく行っちゃう運の良さみたいなものが強い物語なんですが、これはそのままアランが母親に言われた「人生はなるようにしかならない」ことの裏返しであり肯定なんでしょう。
「これをやらなきゃ」「これはこうしなきゃ」みたいなちょっとした強迫観念って誰にでもあると思うんですが、「そんなの気にしなくていいよなんとかなるし」って応援してくれるような。
なのでゆるいんですよね。すごく。
でも今の御時世ゆるいぐらいじゃないと潰れちゃうよ、って考え方もあると思うんですよ。僕なんて完全にそっち側の人間なので、なんか妙に勇気づけられるような感覚もありましたね。「まあいいか、なるようになるか」って。いわゆるケセラセラ。
なるようになった結果、速攻死んじゃう人とかも出てくるんですけどね。でもそういう運の善し悪しも含めて人生じゃないの、って話なんでしょう。
そういう意味では…アランは本当に超が付く運の良さで、「この展開まじかwwww」みたいなあり得ないラッキー展開が続いたりもするんですが、それもまた人生なんでしょう。なんか「コメディだしね」じゃない別の何かが作用してるような気がしないでもないんですよ。なんとなく。
もちろん作りものなのでそんなはずもないんですが、ただ印象的に「コメディだしね」ではない、割り切ったブレない生き方をしていれば、自ずとその人の望む方向に運が向きますよみたいな。考えすぎだとは思いますが。
でもなんとなく、そういう「自分の道を見定めた人の強さ」みたいなものも含まれた物語のような気がしました。そこも含めて応援感があったと思う。全然そういう素振りを見せない話なんですけどね。表面上はただのとっ散らかったコメディなんですが。でも底の方で「ジタバタしなくても自分に素直でいれば大丈夫」みたいな価値観があった気がするし、そこが好き。
ヨーロッパの映画らしく、ちょっと“ノリ”がアメリカ映画とは違うシュールさやブラックさがあって、そこで好き嫌いが分かれる面はあると思いますが、しかしなかなか…「ただの爺コメディ」とは捨てきれない妙な味のある映画でした。歳を重ねることそれ自体にこういう味があるのかもしれません。
気楽に観られる映画でもあるし、ちょっと笑っちゃう場面も結構あるしでなかなかの良作と言っていいでしょう。
人間関係のつながりっぷりにほんのちょっと「スナッチ」のような雰囲気も感じました。「フォレスト・ガンプ」+「スナッチ」のコメディ仕立て、って感じかな〜。
このシーンがイイ!
ラスト、かなぁ。どうでもいい話で終わるんですが、綺麗な閉じ方だったと思います。
ココが○
非常に割り切ってとっ散らかりつつ、そうさせることでベタを回避しているので予想が難しい展開になっているのがとても良いと思います。あんまりこの話の流れを想像できる人っていないと思う。
歴史上の人物との絡みも楽しいし、まあよくここまで広げつつ2時間以内に収めたよね、と。
ココが×
少し独特の雰囲気があるし、主人公の性格はあまり惹かれるタイプでもないし、やや人を選ぶ映画かもしれません。
多分歳を取れば取るほど面白くなるんじゃないかなぁ。若いとあんまり響かなそうな気はする。
MVA
観たことがある人は誰もいない映画でしたが、まあ順当にこの人かな。
ロバート・グスタフソン(アラン・カールソン役)
青年期以降、100歳まで主人公のアランを演じていたとのことで。すごい。ちなみに実年齢は50歳ぐらいだったようです。
なんとも言えない雰囲気があるんですよね。この人。必死さがない佇まいが母の助言通りの雰囲気だし、肝っ玉の座りっぷりがハンパない。
飄々とした雰囲気それ自体が人生訓のようでもあるし、なかなか良い爺さんっぷりでした。


