映画レビュー0731 『複製された男』
ずっと気になっていた映画なんですが、これヴィルヌーヴ監督だったんですね。
なおさら期待…したいところだったんですが、事前に「サスペンスとして観ないほうが良い、哲学的な話」と聞いていたので、あまり期待せずに観ることにしたんですが…。
ちなみにネトフリ終了間際チョイスです。
複製された男
先に「そういう話」って言え!!
なにせタイトルが「複製された男」なので、SF的なサスペンスっぽいお話なのか、はたまたクローンが自分を見つめ直す的な物語なのか、いろいろ想像を膨らませつつ観ていたんですが、まあ全然そういう話ではなくてですね。
この邦題は原作の書籍と同じ邦題で、しかもその原作の原題も「複製された男」的なタイトルのようなので、一概に「邦題がクソだ!」とは言えないところがもどかしくもあるんですが…ただでもやっぱりこの邦題は良くない。
タイトルからしてかなりのミスリードを狙ったタイトルなので、おそらくは書籍ではやや皮肉のような暗喩のようなタイトルっぽい付け方だったんだろうと思うんですが、それをそのまま映画に持ってきちゃうと…ちょっと意味合いが変わって取られかねない面があって、まあそういうこともあって結構ひどい邦題だな、というのがまず最初の感想です。
映画の原題は「Enemy」、つまりは「敵」という意味なんですが、もうこのド直球で直訳した邦題のほうが全然楽しめたと思いますね。意味的に。なんでそう思ったのか…はネタバレになるので書けないんですが、ただ正直「こういうお話だよ」というのは伝えておいたほうが絶対楽しめるとは思うので、書いたほうが良いかもなぁと思いつつ…書きませんが。
もしこれから観るぞ、という方はWikipediaのこの映画のページの「作品解説」ぐらいは読んでおいてもいいかもしれません。(今のところ)設定的な部分だけ答えが書かれているので、興を削がない程度には事前準備ができると思います。
物語はちょっとした母親の小言から始まり、その後何やら怪しいエロそうな会合のシーンからスタート。いきなり謎めいています。
主人公の二役を演じるのはジェイク・ジレンホール。最初に映るジェイクは指輪をはめていて、その後大学で教鞭をとる主人公らしき人物は指輪をしていない…ことから、最初のジェイクとこの教師ジェイクは別の人、「複製された男」それぞれなんだろうと思いながらのスタート。
教師ジェイク=アダムは、ある日同僚(?)から勧められた映画を何の気なしに観ていたところ、自分に瓜二つの俳優が出演していることに気付きます。どうも彼が気になったアダムはこの俳優について調べ始め、どうやら彼はアンソニーという売れない三流役者だということや彼の住むマンションを調べ上げ、ついに直接電話をするんですが…あとは割愛。
全体的にやや黄みがかった色合いや、不安を煽りつつサスペンスフルに展開する見せ方はさすがヴィルヌーヴ…ではあるんですが、結局この話がどういう話なのかを知ると、どれもミスリード狙いのひどい見せ方のような気もしてきて、まあ正直言って僕にはまったく合いませんでしたね。
おそらく二度観ることを期待した上での作りなんだろうと思いますが、そもそも「二度観る前提」とか「解説ありき」の映画というのは好きではないので、もうちょっと劇中にヒントを入れるか、または…やっぱり邦題だな…。邦題を変えて欲しかった。
「複製された男」として観るともう本当に腹が立つほど話が違うんですよ。
そもそも自分に瓜二つの人間…いわゆるドッペルゲンガー的な人を見つけたとして、なんでここまで深刻な雰囲気になるのかがサッパリわかりません。普通だったら「うえー! 超そっくり気になる!!」って興奮気味に会いに行くとかでしょ?
恋人とか奥さんに言うにしても、なんなら笑い話的に「こいつ似てね?(ゲラゲラ)」とかだと思うんですよね。なんでこんないきなりスタートから深刻で、生死に関わるかのような雰囲気になるのかがわからない。
話のからくりを知った上で思い出せば、どう考えてもミスリード狙いだし「サスペンスっぽい雰囲気」のためだけにやっている感じがしちゃってどうしても好きになれませんでした。
なぜそんなに深刻なのか、というのは設定を知ればある程度は納得するんですが、かと言ってその設定は事前に知ることも物語中に窺い知ることもできないような内容なので、「外で知識や情報を補完しないと意味が通じない」映画は嫌いな人間からすればもちろん嫌いなのは言わずもがな。
一応、それなりに学や教養がある人であれば意味が理解できるっぽい話らしいんですが、残念ながらそこまでの頭脳を持ち合わせていなかったために納得もできず、「はあそうですか」という感じ。
あとね、もう単純に話の進みが遅い。
90分の映画なんですが、中身がびっくりするほど薄いんですよ。思わせぶりにじっくり間を取って展開するから惹きつけられはするものの、その間実際に進んだ部分を書き出していくとものすごく短いわけです。
これは「サスペンスっぽい雰囲気を高める」意味では良いと思いますが、ただ実際はサスペンスではないお話なので…なんなんだ、と。
やっぱり実際の内容と映画の作りがマッチングしていないので、そこに対するイライラが勝っちゃった感じでしょうか。
特にひどかったのが音楽。煽りすぎ。
元の物語が雰囲気で盛り上げないとあっさりしすぎちゃう、っていうことなんでしょうか…。もちろん原作は未読ですが、もしかしたら「この原作でよくここまで思わせぶりに作ったね」というような映画なのかもしれません。
とは言え何度も書いているようにミスリードがひどい映画なので、僕は好きになれませんでした。
ミスリードだけならまだしも、その上で暗喩も多く学が必要となると、かなり人を選ぶ映画であることは間違いないでしょう。
好きな人はすごく好きだとは思うんですけどね。
このシーンがイイ!
終盤、ベッドにジェイクを招き入れてずっと見つめる奥さんのシーンかな。あそこでそれなりに察することができたような気がしないでもない。
ココが○
からくりがわかれば良い映画なんだろうと思います。もう一度観るか悩んだのも事実です。さすがに雰囲気作りは巧みなので、「とりあえず観てからもう一度観るかブーたれるか決める」でもいいかもしれませんね。
僕は後者を取りましたが、かと言って損をしたとも思っていません。
ココが×
まーやっぱり邦題ですかね。仕方がないとは言え、これですべてをぶち壊してると思う。なんというか、このタイトルのせいで事前に「こっち方面の話か?」って予測する扉を閉めちゃってるのが良くない。
なので、これから観る人は「Enemy」という原題の方をタイトルだと思って観ましょう。そう思うと全然深さも変わってくる気がする。
MVA
本来であればジェイクなんでしょうが…今回はこの方にします。
サラ・ガドン(ヘレン役)
アンソニーの身重の奥さん。
「ん〜、サラ・ガドン…聞いたことある…ワンダーウーマンの人? あれはガル・ガドットだったわ」とか考えていたんですが、ついこの前観た「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」の王女様の方でした。
全然違う!!(おなじみ)
キリッとした美人さんですね。一番表情から真実が読み取れる雰囲気のあった方だと思うので、MVAに。
ちなみにこの映画は、アンソニーの奥さん役のサラ・ガドンと、アダムの彼女役のメラニー・ロラン、二人のおっぱいを拝むことが出来ます。そこんところよろしくです。