映画レビュー1426 『フェド・アップ』

今回もアマプラ終了間際シリーズです。
この手のドキュメンタリーはやっぱりある種観るのが怖いんですが、どうしても観ないといけない義務感がね…。

フェド・アップ

Fed Up
監督

Stephanie Soechtig

脚本

マーク・モンロー
Stephanie Soechtig

ナレーション

ケイティ・クーリック

公開

2014年5月9日 アメリカ・カナダ

上映時間

92分

製作国

アメリカ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

フェド・アップ

他人事じゃないよ。

8.0
「アメリカの肥満児が増えている」問題を追っていった先に見えてくるもの
  • 統計的に肥満児が増えているアメリカで起きている問題を追ったドキュメンタリー
  • 結局は経済の問題ではあるが…
  • 「アメリカひでーな」だけでは済まない深刻さ
  • あまくない砂糖の話」と近い内容

あらすじ

やっぱりいろいろ身につまされるものがありつつも観てよかった系ですね。本当に他人事じゃない話なのであんまり「アメリカの問題」で片付けない方がいいでしょう。

アメリカでは(映画公開)現在、子どもの3人に1人が肥満だそうで、「痩せたいけど痩せられない」子どもたち数人の姿を追いつつ、なぜそうなってしまったのか、社会構造と加工食品メーカーやファーストフードチェーンによる“囲い込み”の実態について迫るドキュメンタリーになっておりますよよよ。

糖分摂り過ぎ問題

一応メインは「なぜ子どもの頃から肥満になってしまうのか」、その理由を社会構造から紐解いていくようなドキュメンタリーなんですが、その原因部分が「あまくない砂糖の話」とかなり近似している…というか結局資本主義社会においてこの手の問題は避けられないよね、というお話なんだと思われます。子どもの話ではありますが当然大人にも返ってくる話なだけに、ひじょーに身につまされるものがありました。
この手のドキュメンタリーにおいては“常連”のおなじみ大企業、ネスレとかコカ・コーラとかマクドナルドとかその他諸々が、いかに「子どもの頃から自社商品に親しませて買い続けさせるか」に腐心している様子を見せてくれます。給食にまでジャンクフードが侵食してるのすごすぎる…。
もちろん企業としてその活動は当たり前ではあるんですが、そのキーとなる要素がいわゆる糖類(砂糖)の依存性だったりするので、自ずと糖類を摂りすぎて「運動を頑張ったところで痩せない」子どもたちが量産されてしまうという…。
そのロジックをわかっていればある程度自炊で防げる面もあるでしょうが、自炊は手間もかかればコストもかかるので、どうしても外食だったり加工食品だったりに頼らざるを得ない社会構造があり、それ故に肥満も加速していくという…。
「お金がないなら自炊じゃないの」と思うところですが、大量生産大量消費の社会においては「ちゃんとした自炊」よりも「加工食品を買って食べる」方が安上がりというバグが存在するため、結局貧困層ほど大企業に絡め取られて“健康的な食事ができない”状況から抜け出せないというなかなかの地獄。
劇中にも出てきますが、ふんわりと「栄養成分もいろいろ入ってるし“作る”作業も必要なくて便利だから」という理由で「朝ご飯はシリアル、ドリンクはオレンジジュース」みたいな生活が習慣化されていたりするわけです。しかし当然そこには糖類がたっぷり入っているのでいくら努力しようと痩せようがない…という。
ある程度のちゃんとした知識が(僕にあるというわけでもないんですが)あればそこに疑問を持つこともできるんでしょうが、おそらくあまりそこにまで目が向いていないのと、もはや文化に近いぐらいアメリカではその手の食事が固定化されてしまっているので、そもそも変えようとは思わない…というような問題も大きそう。知識がある親御さんが「じゃあこれからの朝ご飯はNATTOだけね」と言ったところで食べてくれる子どもなんてそうそういないでしょうしね…。
「甘いからダメなんでしょ?」と思ったからじゃあピザにしましょう、みたいな可能性もありそうだし、まあなんと言うか選択肢も無ければ知識も無い、みたいな状況が見えてくるのでこれは相当に大きな問題だと思われます。

で、この辺の事情は多分に「アメリカならでは」のように見えるんですが(実際給食とかそういう部分も大きい)、結局この映画で取り上げられる大企業なんて当然日本人でも誰もが知っているぐらいのグローバル企業しか出てこないので、別に「日本は違って良かったね」なんて簡単な話でもないんですよね。マックに行かない家族を探すほうが大変なことからも自明です。
その頻度や依存度の違いこそありますが、「国が違うからゾーニングされてて安心」ではないわけで、すぐそこにこの映画に出てくる子どもたちが摂取する飲食物が山ほどある、というのは改めて意識しておきたいところです。
ネット上のレビューでも驚くぐらいに結構「日本で良かった」「アメリカは大変だな」みたいな他人事目線の人が多いんですが、全然そんな簡単な話じゃないよというのは改めて書いておきたいところ。「シリアルの朝食とかダメに決まってんじゃん」って言いながらグラノーラ食ってるけど似たようなもんだからね!? みたいな。
話が逸れますが、僕は買ってくる加工食品がほぼ例外なく甘すぎると感じるんですが、やっぱり成分表示を見ると材料上位に大体糖類が出てくるんですよね。
結局そういう「甘すぎる」「なんでも甘さをいれる」方が売れるし依存されるからこそ企業は作っているはずで、となると日本だって程度問題で大して状況変わらなくない? と。
スイーツみたいな「甘いものが甘い」のはいいんですが、僕は料理や調味料が甘いのが世界一許せない人間だと自負しているので、その自分から見れば「日本でよかったね」じゃねえんだよというのは強く感じました。「めんつゆ入れれば大体美味い」じゃねえんだよ。甘すぎるんだよと。今グミ食いながら書いてますけども。マジで。

選択の指標として

またも話が逸れましたが、そんなわけでアメリカの構造問題について追いつつ、結局「資本主義社会はどこも似たようなもんだよね」というお話でした。
だからって資本主義やめろとかそういう思想強い系の話をしたいわけでは当然なくて、そういう構造自体を理解した上で自分の選択を変えていくのが大事なんじゃないかなというお話です。「フェアトレード」とかと同じようなものですね。
映画としてはもう少し糾弾するような内容も観たかった気もしましたが、一方でそもそもドキュメンタリーは「問題提起」が一番重要だと思っているのでこれはこれで良いんだと思います。あんまり糾弾に寄りすぎると一方向に偏りすぎて、結果反対側にいる人たちが耳を傾けてくれない事態が起きちゃいますからね。難しいところです。

このシーンがイイ!

一番衝撃的だったのは、「砂糖の依存度はコカインと一緒」という話。そりゃあ強いはずだ…。
それと「ピザは野菜」理論の成立過程が全然笑えないものでそこも衝撃でした。

ココが○

アメリカキッズがテーマとは言え話としては身近だし馴染み深い企業ばかりが話に上がるのでおそらく大抵の人は観やすいことでしょう。やっぱりドキュメンタリーは関心を持てるかが一番重要なだけに、そこをクリアしているのは大きいですね。

ココが×

生贄的にクリントン元大統領が晒し上げられてましたが、もう少し他の人のインタビューも観たかったですね。
ミシェル・オバマが取材拒否していたのがすごく印象的だし残念でした。

MVA

例によってドキュメンタリーなので該当者無しということで。

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