映画レビュー1064 『G.O.R.A. 絨毯は宇宙を救う!?』
新年早々ネトフリでは大量にトルコ映画が終了するという情報をキャッチしまして、だったらまあ何本か観てみるか、と結構な数の中から選んだ「これだ!」という数本を紹介して行きます。
まず最初は概要からしてとんでもなさそうで「外しそうだな…」と不安になりつつ選んだこちらの映画から。
G.O.R.A. 絨毯は宇宙を救う!?
衝撃のトルココメディSF。なんかよくわからないけど癖になる
- 突如さらわれた絨毯屋、至ってマイペースで宇宙人と渡り合う
- やがて訪れる危機になぜかキーマンになる絨毯屋
- その後もグダグダ謎の展開を送りつつなんかすごいストーリーが展開
- 言語化できないひどさが最高
あらすじ
いやぁこれは…真面目に評価したらかなりひどい類の映画だと思うんですよ。でもB級映画的な意味で言えばこれ以上無い「最高のB級」っぽさもあり、正直観たときは「くだらねぇ映画だな」と思いながらも後々思い出すと「アレなんだったんだ最高じゃん!?」みたいな。ひじょーに不思議かつ人に説明するのが難しい映画でした。
トルコで絨毯屋を営むおっさん、アリフ。たまに観光ガイド的なこともしているようですがまー態度も悪くてなかなかの御仁ですよ。映画の主人公らしからぬ小物さ漂うおっさんです。日本人ツアー客を騙してやろうと狡いことしたりしてね。
で、ある日彼のお店にイギリス人の“ちゃんとした”お客がやってきた…ということであからさまに詐欺的な“空飛ぶ絨毯”をプレゼンしていたところいきなり宇宙船に飛ばされます。ワープ。いきなりのワープ。このお客さんは宇宙人だったわけで。
その後よくわからない面談のようなものを傲慢にこなしつつ、「早く帰らせろよ」と悪態をつきながらも宇宙船での生活に馴染んでいくアリフ。
しかし外では宇宙人の祖国であるG.O.R.A.に危機が迫ってきていて…というようなお話ですよろしくどーぞ。
衝撃のナンセンストルコ
前半から中盤にかけてはほぼ宇宙船内でのシーンが大半で、なんなら「宇宙船コント」を見せられているかのような世界を中心に展開しますが、その後“なぜか”彼が宇宙の危機に直面・対処することとなり、さらにはその後斜め上の展開を見せていく謎の映画です。いやすごかった。まったく「なんでそうなるんだよ」と意味がわからないんだけどすごい。
この辺は非常にインド映画にも近いものを感じましたね。もちろん歌って踊っては無いし、基本的に善人が主人公(のものしか観たことがないだけですが)のインド映画と違い、こちらはあまり人として魅力的には感じられないおっさんがマイペースに周りを巻き込みながら「なんかすごい対応力ある」様を見届けるという…やっぱり謎の映画なんですけどね。でもどことなく、欧米映画に慣れきった“普通の”映画好きには衝撃のナンセンスさがインド映画に通ずるものを感じます。
(あんまりこの映画を真面目にじっくり観る人もいないとは思いますが)真面目に観るのがバカバカしくなるぐらいにゆるくテキトーに進みつつ、それなりに危機はあるもののあまり焦ることもなく(なぜか)万能な主人公がゴリゴリ舞台を制していく謎の勢い。
さらに「実は主人公が一番イヤなやつなんじゃないか」と思えるぐらいに宇宙人含めて割と牧歌的ないい人たちが揃っているためか良い意味で危機感が薄く、一番押しの強い主人公が強いのも妙に納得、という…いやもう文字で書いてもわからなくね!? この映画。とにかくなんかすごかったですわ。(お手上げ)
3回観たらバカになりそう
本国トルコでは大人気映画だったらしく、続編も(おそらく2作も)作られております。その事実だけでも衝撃なんですが、一方で続編も観たいと思っている自分がいる。ものすごく観たい。なんなんだろうこれは。
いかも余談ですがIMDbでは驚異の8点台を叩き出しております。
僕はあまりB級映画好きではない(と思っている)ので、そこまでこの映画もハマったわけではないんですが…それでも他にない“何か”があった気はして、新年早々忘れがたい妙な映画を観てしまったという後悔のような高揚感のような…これまた謎の感情をお持ち帰りすることになりました。
まあほんとなんなんでしょうね、トルコ。妙な扉を開いてしまったかのような謎の背徳感があります。たまに観るにはいいけど3回観たら絶対バカになりそう。知らないけどきっとそう。
まあやっぱり国が違えば映画も違う、まだ観ぬ世界があるんだなぁと勉強させて頂きました。今後もちょっと観ていきたいなと思うぐらいには変にクセになる味があってね。臭いけど美味しい、みたいな。
たまにはこういうのもアリかもしれない。ただ人にはオススメできない。そんな映画です。でもなんかもう一回ちゃんと観たくなったわ…。
このシーンがイイ!
いろいろパロディシーンなんかもあるんですが、僕が一番引っかかったのは終盤近く、ある人のところに行った主人公+αが突如謎のカメラ目線で決めポーズ見せるシーンですね。「え!?」って意味わからなすぎて笑った。なんなら結構な衝撃でした。
ココが○
良し悪しは置いといて、間違いなく他にはない世界があると思うので、おそらくハマる人はものすごくハマるクセの強さがあると思います。まさにくさやのような映画。
ココが×
話の筋をしっかり検証とかもうあり得ないレベルの映画なので、そういうのは求めちゃダメです。って言われなくても誰でもわかると思いますが。
と言いつつ真面目に一つ挙げれば、中盤〜終盤にかけてはちょっと中だるみ感はあったかなと。いやまあもうずっとたるんでたんですけどね。でもなんか途中で少し飽きちゃうような面はあったような気がします。それでも「そっち行くのかよ!」的な斜め上っぷりで結局なんだかんだ観ちゃうんですが。
お酒飲みながら観るぐらいがちょうどいいのかも。
MVA
まあ順当に…この人かなぁ。
チェム・イルマズ(アリフ役)
主人公の絨毯屋。宇宙人に囚えられようがマイペースで強い。
今調べて知ったんですが、あの以前観たトルコ映画「サミットに乾杯!」の監督・脚本・主演のおっさんだったんですね。この人きっとトルコでは相当なスターなんだろうな…。
ビジュアルの時点で強すぎるし、おまけにメンタルも強すぎるし、最終的にはバトルにも強すぎるしでいろいろすごい。いるだけで面白い系。
演技的にも別に臭いとかもなく自然体で嫌な奴っぽいのがまた良かったですね。この人のアクの強さは他にない良さかもしれない。