映画レビュー0835 『ローマ法王の休日』
今回もネトフリ終了間際の例のやつです。これもずっと観たかったやつ。
ローマ法王の休日

途中まではとても良かったんだけど…最後がモヤモヤ。
- 「まさか俺が!?」的形で法王になっちゃった人の苦悩
- うまいこと逃走して市井の人々と触れ合った結果…?
- ヴァチカンを皮肉る形ではない真っ当な人間の物語
- しかしどうにも最後がスッキリしない
ご存知の通り、ローマ法王が逝去されると内部で「コンクラーベ」という選挙が行われ、有力な枢機卿のうちの誰かが選出されるわけです。
僕も当然ながら一般的な知識以上のものは持っていないんですが(「天使と悪魔」の原作を読んだときにちょっとWikipedia読んだ程度)、あれって「完全自由投票」なんですかね。その辺もまたあんまり劇中では触れられていないんですが、「望まない人が選出された」以上は立候補制じゃないんでしょうね。まあ例のトランプ大統領も実際は当選しないだろうと高をくくって出てたとか言う噂なので、立候補したからイコールなりたいよとも言い切れない部分はあるんでしょうが…。
さて、そんなわけでコンクラーベから始まる物語。数回の投票を経て、有力視されていた枢機卿ではないメルヴィルさんが新法王に選出されます。
本人は明らかに困惑しているようですが、みんなの期待を裏切れないからか、はたまた場の空気に逆らえなかったのか…受諾します。受諾するんですが、直後にバルコニーで行われる信者向け演説の直前になって奇声を発して逃亡。自らの部屋にこもってしまい、周りの人たちも困惑。
「新法王は即座に祈りを捧げたいと申され…」ってな調子でお披露目されない理由を説明するバチカン。なんか言い訳がリアル。
やがて「精神的な問題から来るものに違いない」ということで高名な精神科医を招いて診察するもバチカンの秘密主義が過ぎて診察にならずお手上げ、その上“秘密厳守”のために外へ出ることが許されない慣例に従って精神科医も軟禁状態に。
もはやお手上げ状態の中、招いた精神科医曰く「自分の次に優秀だ」と言う彼の元妻の診療所へお忍びで向かう新法王御一行ですが…あとはご覧くださいませ。
コンクラーベの詳しい話や実際のところはよく知らないのでいい加減な意見ですが、実際こういう事あり得るんじゃね? 的な開幕はなかなか面白く観てました。
まーなんつってもローマ法王ですからね。キリスト教のトップですから。表立って権力行使をするタイプの権力者ではないので目立たない感はありますが、実際権力スカウターで観たら爆発してもおかしくはないレベルの権力者ですよ。ある意味ではアメリカ大統領よりも強力な権力を持っている存在でしょう。
創作物でもよく「表向きは聖職者らしく慎み深い人徳者」なのが裏では壮絶な強権を発動している黒幕でした、みたいな話はよく見かけます。実際のところは知りませんが。
まあそんな超のつく権力者なので、いざやれと言われたら尻込みしちゃう、重圧に耐えられなくなっちゃう人もいてもおかしくはないじゃないですか。やっぱり。
アメリカ大統領と違って、さすがにローマ法王は人格がモロに影響しちゃうものだけに、おそらく余計に尻込みレベルって高いと思うんですよね。ものすごく一般人の安っぽい価値観なんですけど。
トランプさんがそのままローマ法王に任命されたとしても100%無理じゃないですか。大統領はバカでも務まるけど法王はそうはいかない、みたいな感じもあるし。(トランプさんがバカだって言ってるわけじゃないよ!)
そんな恐れ多い世界に名だたるお仕事なので、覚悟がない人間はそりゃー逃げてもしょうがないわな、っていう超一般人目線で親近感も湧くんですが…。ラストが…ヨーロッパ映画らしいというか、アメリカ映画のようにきっちりすっきりな終わりではなかったので、モヤモヤしたまま微妙な雰囲気で鑑賞を終えました。
途中まではすごく人間臭くて良い話だなーと思って観てたんですけどね。どうしても「法王」と言うと、それこそ日本で言う天皇のような、一般人とはまったく違う“人間”のような気がするものですが、とは言えやっぱり法王も普通の人間であり、昔はどういうことがしたかったとかそういう俗っぽい面も見せながら、「こりゃ良い法王になるんじゃないか」と期待もさせつつ軽やかに展開するドラマは悪くなかったんですけどね。
最終的には美味しそうな料理を並べておいて食べさせてくれないような、いやそれもわかるんだけどちょっと…! っていうモヤモヤが残るお話なんですよ。あんまり言えないのが悔しいんですが。
ただ話としてそれはそれでわかる、っていうのも確かで、結論を観て感情の置き所に困っちゃうようなお話だったな、というのが率直な感想でしょうか。
ただねー、これって最後の最後で「人間臭さ」が極まった面もあるんですよね。僕なんて完全に同じタイプの人間じゃないかなと思わされるような部分もあったし、話の帰結の仕方は悪くないんだと思うんですよ。なので多分見せ方、もっと言えば観ている側の慣れの問題なのかなと言う気もします。
やっぱり良くも悪くもわかりやすい(ハリウッド系の)映画に慣れ過ぎちゃってるので、バチッとハマるラストを期待してたのにそういう感じか…! みたいな。それがヨーロッパ映画らしいっちゃらしいし、ここからいろいろ読み取るべきなんだろうとも思うんですが、やっぱりラクな方に慣れちゃってるダメ人間としては「えーそうなのー」でガッカリしちゃったな、っていうのが正直なところ。
でも世間的な評価ほど悪い映画ではないと思うんですよ。ただそれなりに教養がないと厳しい映画なのかもしれない。特に映画側で教養を求めているような作りではないんですが、結論について思いを馳せられるだけの教養が必要というか。僕なんかはその部分に至ることが出来ずに「うーん、イマイチ気持ちよくない」って判断しちゃったな、という。
宗教との距離感というか、素地として宗教、特にキリスト教についての理解がないと「大きな部分」が伝わらないというのもあるのかもしれません。その点「ルルドの泉で」とも近いかもしれない。
このシーンがイイ!
カウンセリングで「役者です」って答えるシーン。すっごい良い表情するんですよ。メルヴィルが。
皮肉も利いてるし、良いシーンだと思います。
ココが○
この手の映画はバチカンを皮肉ったりバカにしたり、って形が多い気がしますが、珍しくこの映画はそういう面が無くてですね。みんな人間臭い憎めない人間として描かれているのが良いですよね。ちょっとサラリーマンっぽい雰囲気すらあったりして。
ココが×
やっぱりラストがもう少しスッキリしたかったよな、というのに尽きますが、ただそれは「期待から外れたから」感じるだけで、実際そんなにひどい終わり方でもないような気がしてきました。振り返ると。
あとことごとく爺さんだらけの映画なので、そこだけは気をつけましょう。空前絶後の爺率の高さです。
MVA
そんな爺さんだらけの映画、一人(この人もかなりいい歳っぽいけど)イケオジがいるな…と思ったらこの方が監督さんだそうです。例の精神科医。この人も良かったんですが、やっぱり文句無しでこちらの方ですね。
ミシェル・ピコリ(ローマ法王役)
主人公の枢機卿メルヴィル=ローマ法王。
本当に“それっぽい”雰囲気でそれだけでもグッと来たわけですが、やっぱり表情の変化もすごく良くて。演劇について語る時は喜々としてる、けど法王という重圧が目の前にあるとどんよりする、みたいな悲しげな爺感がとても良かったですね。


