映画レビュー1501 『イカロス』
またネトフリオリジナルドキュメンタリーを観ていきましょう。
これも結構話題になっていたのを覚えていたので観てみることにしました。
イカロス
ブライアン・フォーゲル
ブライアン・フォーゲル
マーク・モンロー
ジョン・バーティン
ティモシー・ロード
ブライアン・フォーゲル
グレゴリー・ロドチェンコフ
アダム・ピーターズ
2017年8月4日 各国
120分
アメリカ・イギリス
Netflix(Fire TV Stick・TV)

このときにしか撮れないドキュメンタリーの旨味たっぷり。
- 素人ロードレーサーの監督がアマチュア大会で順位を伸ばそうとドーピング、その模様を記録
- ドーピング検査に意味がないと感じていたためにその証明も兼ねてやってみた系
- 協力者として名乗り出てくれた人がとんでもない大物で、事態は徐々に想定外の方向に
- まさにドキュメンタリーらしい旨味がたっぷりでこれだから観るのがやめらんねえ的な内容
あらすじ
噂には聞いていましたがめちゃくちゃ面白かったですね。これは本当にドキュメンタリーでしか味わえない面白さだと思います。
監督のブライアン・フォーゲルは素人ロードレーサーで、結構過酷なレースに参加してそこそこの成績を収めてはいるんですが、上位陣は「どうあがいても勝てそうにない」ガチのレーサーだらけなのとこれまでの経験で「ドーピング検査、意味無くね?」と思っていたこともあり、「試しにドーピングしてみて変化があるかを観察しつつ、ドーピング検査に意味がないことを証明するドキュメンタリーを撮ったら面白いんじゃないか」的な感じでドーピング&撮影を開始するに至りました。
最初はUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のオリンピック分析研究所創始者であるドン・カトリンという方に協力をお願いしたんですが、「ドーピング検査をスルーする実証」に協力するのはちょっとワシの評判が…的な感じで尻込みされ、代わりに「もっと詳しい専門家を紹介したるで」とロシア反ドーピング機関の所長であるグレゴリー・ロドチェンコフを紹介してもらいます。
ロシアから基本Skype(ちょっと時代を感じる)でやり取りしつつ、様々なドーピング検査をかいくぐるアドバイスを聞きつつトレーニングに励む監督。
そしていよいよ翌年のレースへ出場となるんですが、そんなことはどうでもいいとばかりに別の事態が動き始めます。
あの事件の裏側
前半と後半で内容がまるで変わるドキュメンタリー。
前半は素人ロードレーサーの実験的ドーピングの模様をライトに観ていく感じですが、後半はかなりサスペンスフルに展開する文字通り世界を巻き込んだ“事件”をリアルタイムで記録していく生々しいドキュメンタリーとなっています。そしてその「たまたま大きな事件に出くわしたタイミングでドキュメンタリーを撮ってたからそのまま記録できた」ところにドキュメンタリーの旨味がたっぷりだよ、というお話です。こんなミラクル、監督はもちろん誰だって想像してないでしょ…!
ある程度察しがつくとは思うので書いちゃいますが、もう連想ゲーム的に「ロシア…ドーピング…オリンピック…!」と来れば「国家的ドーピング違反によって国としてのオリンピック参加が禁じられた」ことを思い出すのは当然でしょう。割と最近の出来事でもあるし。
まさにその裏で起きていたことをモロ当事者を通して観ていくドキュメンタリーなので、そりゃあもう面白くないわけがないんですよね。
おまけに舞台はロシア、とくればそりゃあ当然のように命の危険を感じても大げさではないし、あまりにもベタで言いたくないですがおそロシアと言わざるを得ない生々しさを、創作ではなくドキュメンタリーで観ていくこの旨味ったらないですよ。危険にさらされているご本人には申し訳ないですけども…。
この映画におけるまさにキーマンで協力者のグレゴリー・ロドチェンコフさんは上記の通り「ロシア反ドーピング機関」の所長です。元ではなく(撮影当時)現役の所長ですよ。
僕もきちんと理解しているわけではないんですが説明すると、名前からわかるように「反ドーピング機関」なので、本来であれば選手のドーピングを監視し公平な競技を担保する組織のはずですが、実態はまったく違うものだった…というのが、「バレなそうだしちょっとズルしてみっか〜」ぐらいの気分で始めた監督との奇跡のコラボによって(監督の意志は関係なく)知られていくわけですよ。
そんなの面白くないわけがないじゃないですか。
しかも「世間に知られていない出来事が水面下で…」とかでもなく、普通に世界中でトップニュースになっていたような事象の裏側なので、よほどスポーツに興味がない限りは誰が観ても興味深く観られる内容だと思います。
ネトフリドキュメンタリーは良
ちょっと軽めですが、まあこれだけ書けば興味を抱く人は観たいと思うでしょう。言いたいことは言ったよ、ってことでね。
やっぱり改めて思いましたが、ネトフリオリジナルのドキュメンタリーは良質なものが多いですね。フィクションの方はどれも基本的に今一つなのと大違いです。
せっかく加入しているので他もいろいろ観ていきたい所存、ということでみなさんも観てみてください。
ちなみにグレゴリーさんがやたらとジョージ・オーウェルの「1984」を引用するので、あれを読んでおくとより理解が捗るかもしれません。
もっとも「1984」はディストピアものの基本のキなので他の映画(特にSF)を楽しむ上では必読に近い小説だとは思います。
ということでやっぱりテーマが身近だと観やすいし面白く観られるしでいいよね、と超普通の感想を置き土産に終わりましょう。
このシーンがイイ!
どのようにドーピング検査をパスしているのか、をCGで見せてくれるシーンがあるんですが、単純ながらなるほどーとわかりやすくて良かったです。
ああいう再現映像みたいなものは結構理解を助けるのに重要だと思うので、あそこにお金を使ってくれてるのはありがたいですね。
ココが○
テーマの秀逸さ、そしてタイミングの良さ。
監督は心配しつつも内心ガッツポーズしてたんじゃないですかね。こんな金の卵につながるとは、って。
いやそれどころじゃないんだけど実際は。
ココが×
どうでもいいっちゃどうでもいいんですが、最初の目的である監督自身のドーピングチャレンジがイマイチピリッとしないというか、コトの重大さ故に仕方がないんですが有耶無耶になっちゃったのがちょっと残念と言えば残念でした。
MVA
例によってドキュメンタリーなので該当者無しということで。グレゴリー・ロドチェンコフさんでいいんですけどね、実際は。


