映画レビュー1500 『ブラックベリー』

この日は何観るべえとネトフリをポチポチしてたところに目に入ったこちらの映画。
ビジネス系の実話系は面白い系に違いない系…! ということで鑑賞です。
なお若干目が飛び出し気味のジャケットになりましたが(絵が下手な人間の)仕様です。

ブラックベリー

BlackBerry
監督

マット・ジョンソン

脚本

マット・ジョンソン
マシュー・ミラー

原作

ジャッキー・マクニッシュ
ショーン・シルコフ

出演

ジェイ・バルチェル
グレン・ハワートン
マット・ジョンソン
リッチ・ソマー
マイケル・アイアンサイド
マーティン・ドノバン
ソンウォン・チョ
ソウル・ルビネック
ケイリー・エルウィス
マーティン・ドノヴァン

音楽

ジェイ・マッキャロル

公開

2023年5月12日 カナダ

上映時間

120分

製作国

カナダ・フィンランド

視聴環境

Netflix(Fire TV Stick・TV)

ブラックベリー

そのテンポの良さは企業の寿命の反映か。

9.0
“スマホの元祖”を生み出した「ブラックベリー」の興亡
  • 経営ド素人のオタクコンビが強烈なビジネスマンを迎え、のし上がる
  • 一時は“憧れ”の携帯電話だったブラックベリーがやがてその役割を終えるまで
  • テンポよく一気に隆盛と没落までを描く
  • さながらカナダ版「ソーシャル・ネットワーク

あらすじ

予想通りに、いや予想以上に面白かったですね。やっぱりこの手のビジネス実話系映画好きだな〜。

1996年、“天才”と呼ばれる技術者マイク・ラザリディス(ジェイ・バルチェル)とその親友ダグラス・フレギン(マット・ジョンソン)は2人が始めたリサーチ・イン・モーション(RIM)社で電話にコンピューターを搭載した画期的な携帯端末を開発し、とある企業へ売り込みに。
そこで対応したジム・バルシリー(グレン・ハワートン)のにべもない態度に面食らった2人はプレゼンもそこそこに失意のまま帰還。
一方のジムは上司の命令に逆らったことで解雇されてしまいますが、ふとマイクとダグラスを思い出し解雇は伏せた状態で「CEOとして迎えるなら俺が売ってやる」と強気の交渉を持ちかけます。
当然反発するダグラスですが、マイクは悩んだ末に「共同CEOなら」と譲歩を持ちかけ、契約成立。
“オタクの趣味の延長線上にある企業”のような状態だったRIMに、強烈なエリートビジネスマンのジムがその強引な手腕で意識改革と規律を持ち込みます。
何をするにも強引なジムは「明日までにプロトタイプを作れ」と2人へ命じ、これまた反発するもなんとか形にして交渉へ持ち込み、晴れて完成した“スマホの元祖”とも言える端末「ブラックベリー」は販売を開始、その後もジムの戦略が功を奏して会社は絶頂期を迎えます。
しかし企業が大きくなれば問題もいろいろ抱え込むのは世界共通のお話で、そのまま上り調子でいくはずもなく…あとはご覧ください。

考えさせ方が上手い

ブラックベリー、もはや知らない人も多いんでしょうか。
僕は当然持ったことはありませんが、「海外では相当人気」という認識程度に知ってはいました。
この映画を観るまではカナダの企業(製品)ということも知りませんでしたが、その影にこんな話があったとは…と非常に興味深く観ることができました。めっちゃ面白かったです。
単純にまとめてしまえば、ビジネスに無頓着な「ザ・技術者」なオタク2人組(とその仲間たち)が、とにかく強引で圧の強い「ザ・ビジネスマン」の共同CEOを迎えたことで「開発と販売」が両輪として上手く回り始めるも、いつまで経っても交わらない水と油故に綻びが…というような流れ。
そしてそこに一番大きな“絶望”が訪れるんですが…それについては言わなくてもおわかりと思いますが一応伏せておきましょう。それが決定打となってブラックベリーは歴史の表舞台から消える…という非常にドラマチックで映画向きなビジネスエピソードになっております。

最近、人間は「テイカー(奪う人)」と「ギバー(与える人)」と「マッチャー(奪ったり与えたりする人)」の3種類いる…という本を読んだんですが、ジムはまさに「テイカー」で、対を成すマイクはギバーだったのかな、といろいろ考えながら観ました。
マイクとダグの2人がトップでやっていた頃は本当に「趣味でやってるオタク仲間の会社」でしかなく、ビジネスの見通しも甘ければ交渉も上手くない故にいくら技術力があろうがそのまま潰れておしまいの会社だったことは(少なくとも映画上では)間違いないところですが、そこに強烈(本当に強烈)なビジネスマンのジムが加わることでお互いに欠けているところがピタリとハマって隆盛を迎える…というのはわかりやすいし納得もできるし「良かったね」と思いつつ、しかしあまりにも違いすぎる上に急に企業が大きくなってしまったがために“成長痛”のようなものも激しくて、そこでもがいてるうちにとんでもないとどめを刺されてしまうという…本当に映画向きの、めちゃくちゃ“美味しい”実話です。

特にその企業としての急激な変化を語る象徴的なイベントとして描かれる「ムービーナイト」の扱いがすごく良いですね。
(確か)週に一回、金曜日の夜はみんなで(会社で)映画を観ようぜ的なイベントなんですが、ジムが来る前からずっと行っていたこのイベントに並々ならぬ情熱を注ぐダグと、その仲間だったのに次第に「そんなことやってる場合か?」と疑問を感じ始めるマイクの立ち位置に、それぞれの置かれた立場や企業の変化が投影されていてなんとも切なさを誘います。
ブラックベリーがヒットして割とデカくなってからも会社にはいわゆるアーケードゲームの筐体なんかも置いてあったりして「いつ仕事してんだよ」みたいなゆるゆるの企業っぽさがすごく羨ましい面もありましたが、しかし会社が急成長していくとともに外から人もいっぱい入ってきて徐々にその“昔ながら”の企業風土が失われていく過程は、当然と思う反面その後の歴史も知っているだけに「そのままの方がもっと良いアイデアが出て生き残れたのでは」とかいろいろ考えてしまう辺りもとても上手いですね。
この観ている側が「ブラックベリーは失敗した」ことを知っているからこそ「ここでこうしていれば」とか「そっちに行かなければ上手く行ったのでは」とか考えちゃうように作られている辺り、感情移入のさせ方が上手いのと同時に「俺なら上手くやれたかもしれない」みたいな(根拠のない)功名心のようなものをくすぐってくるのもすごく上手い映画だと思います。
カメラワークもややドキュメンタリーっぽい手持ちカメラのズーム等あって演出もちょっと変わっているのも面白いところ。
そして何と言ってもテンポが良い。
最初に“カナダ版「ソーシャルネットワーク」”と書きましたが、それは題材が近い以上にそのテンポの良さが似てるなと思ったんですよね。
やっぱりベンチャー企業が一気にのし上がっていくスピード感を表現するなら映画もテンポの良さが大事でしょ、と言わんばかりのテンポの良さで非常に観やすいのもポイントです。
さぞかし腕の良い監督なんだろう…と思って調べたらなんと一番ラクそうに仕事をしていたダグ役の俳優さんが監督兼務(さらに脚本も)していてびっくり。マジカヨ…!
ダグは主役ではないですが準主役かつ最も変わらない人物でもあるだけに、彼のその変わらなさから通して観る親友の変化というのも一つの大きな見どころになっていて、そこがまた実際の歴史と重ね合わせて考えさせられる辺りやっぱりお上手です。

歴史は変えられたのか

技術は一流ながら経営はド素人故にジムと組んだマイク(とダグ)、結局最後までその分業体制は変わらず、お互いの領域への理解不足が結果的に敗北を招いた…と後から言うのは簡単ですが、一方でお互い苦手な分野を任せられるだけの力量を認め合っていたからこその隆盛という面もあったはずで、これまたどうすればよかったのか…一概に「相互理解が足りない」という話でもないと思うんですよね。
「ブラックベリー」はまさに今自分たちが目の当たりにしている歴史に関わる事象なので、結局どうしたところで上手く行かなかったのでは…とも思うし、もはや(この映画で中心人物として描かれる)マイクとジムがそれこそ人生を何周も繰り返したところで結果は変わらなかったのかもしれない気もするし、その絶望的な歴史の転換点をしっかり見せつけてくる終盤の残酷さ含めて非常に面白い映画だと思います。
これほどまでエキサイティングかつドラマティックかつ絶望的な話って無いと思うんですよ。
この辺は「テトリス」と同様に、まさにこのときだけ起こり得たエピソードを上手く組み上げて映画にしたという意味でも大変な傑作だと思います。
比較的観やすい(時期によって変わるものの見た感じアマプラかネトフリどっちかにはあることが多い)作品でもあるし、カナダ映画故に見飽きた感も少ないと思われるので、これはもうぜひ観てみてほしいところです。

このシーンがイイ!

プロトタイプを作って最初にジムがマイクを連れてプレゼンに行ったとき、途中から出てきて技術的な問題点を解説していくマイクのシーンは痺れましたね…ベタですが「ヨッ! 待ってました!」的ないいシーン。
それとラストシーンがまたね…いいというか切ないというか…すごくいい、象徴的なシーンでした。
演出も素晴らしかったと思います。

ココが○

実話ベースであること、スピード感があること、キャラクターがわかりやすいこと、感情移入が上手いこと。いろいろありますが、これだけでも良い映画であることがわかると思います。

ココが×

特にこれと言ってはないと思います。
結果がわかっていても面白いのもすごい。

MVA

演者の皆さんもそれぞれ個性をしっかり表現していて素晴らしかったことは言うまでもなく、監督兼務でびっくりしたダグに贈りたいところですがこの人にします。

グレン・ハワートン(ジム・バルシリー役)

共同CEOとしてやってきた強烈な営業マン。
本当に強烈で、一緒に働くのは絶対嫌だと思うんですがそう感じさせる強烈な演技は本当に見事でした。
繊細なマイクを演じたジェイ・バルチェルも良かったんですが、やっぱりなんならトラウマになるぐらい「こんな上司嫌すぎる」と思わせてくれた彼の演技がピカイチだったかなと。

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