映画レビュー1470 『ある脅迫』

今回はアマプラの終了間際系です。古い邦画、おまけにサスペンス、さらにかなり評判がいいと来るとやっぱりちょっと気になるところ。

ある脅迫

Intimidation
監督

蔵原惟繕

脚本

川瀬治

原作

多岐川恭

出演

西村晃
金子信雄
白木マリ
浜村純
小園蓉子
草薙幸二郎
河上信夫
山田禅二
青木富夫

音楽
公開

1960年3月23日 日本

上映時間

66分

製作国

アメリカ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

ある強迫

最後の最後がもったいない。

7.5
栄転が決まった銀行支店次長、しかし彼の元へヤクザがやってきて…
  • 順風満帆のエリート銀行員が“ある脅迫”を受ける
  • あとに引けなくなった彼は幼馴染でうだつの上がらない同僚を利用しようとするが…
  • 短いだけに無駄がない、わかりやすく観やすい良作
  • しかし最後の最後が蛇足なため余韻を削いでいるのが残念

あらすじ

調べると非常に評判が良い映画なんですが、確かに面白いものの最後の最後で結構なやらかしをしている(と個人的に思う)ので面白い以上にもったいねえな、という感想。ちなみにモノクロの映画です。

どこぞの銀行の直江津支店の次長、滝田(金子信雄)は本店の業務部長への栄転が決まり、さらに妻が頭取の娘ということもあって「すぐに取締役」まで約束されているという超順風満帆な銀行員人生を送っておりますが、そこに一人のヤクザがやってきて、滝田が女性関係の問題に対処するために印鑑を偽造し、“浮貸し”をしていた証拠を握っている、バラまかれたくなければ300万円用意しろと脅してきます。
「そんな金はない」「あるじゃないかあんたの勤務先に」ということで自らが勤める銀行から金を盗むようそそのかされた滝田ですが…あとはご覧くださいませよ。

無駄のない1時間強

「浮貸し」というのは、金融機関職員がその地位を利用して自己もしくは第三者に保管している金銭を貸し出す行為、だそうです。学び。
たった66分ということで、テレビ番組ドキュメンタリーの「ラッコ親子の別れと再会」を除けばおそらく当ブログ史上最短の映画でしょう。別に「短いから観た」わけでは無いんですが、これが仮に3倍の時間だったら多分評判が良くてもスルーしていた可能性も高いので、やっぱり「短くて良作」はありがたさしかありません。
長い映画が悪いというつもりはもちろん無いんですが、長いとそれだけハードルが上がってしまう(9時に起きていざ観るかと思っても午前中に終わらないから観るのやめよとかよくある)のも確かなので、短めに必要なものだけ詰め込んだ映画はそれだけで比較的評価も得やすいように思いますね。で、事実この映画はその短さに見合った濃さと無駄を排した内容で良く出来ているな、と。
もちろん古い時代の映画なので、銀行のセキュリティが甘すぎるとか今の時代からすると気になる点も出てこないわけではないんですが、そこはむしろ「こんなだったの!?」と驚きとともに昔を知る貴重な資料的な楽しみが勝ってきてより面白い、という説もあります。

上記あらすじでは触れていませんが、要約すると「出世街道まっしぐらのエリート銀行員が“ある脅迫”によって追い詰められ、うだつの上がらないペーペーの幼馴染を利用して事態を収拾しようとする」話なんですが、その人間関係を利用したサスペンスがなかなか良くできているね、というお話。
エリート銀行員を演じるのは金子信雄。僕の世代ではもはや「料理好きの爺さん」のイメージしか無いので若くて普通に映画に出ているだけで新鮮でした。
うだつの上がらない幼馴染を演じるのは西村晃。これまた僕の世代では二代目水戸黄門のイメージしか無いので若くて以下略。
オープニングでヤクザがやってきて主人公(滝田)を脅し、以降は彼が「いかにその事態を凌ごうとするのか」が中心で描かれ、ストーリーとしてはかなりシンプルです。
ですがベタな内容とは言えその脅しがなかなか厄介で、例によって「自分だったらどうするかなぁ」と思いながら観ていました。
その観点からすると「それはさすがにまずいのでは」みたいなムーブも繰り出す滝田はある意味で凡庸な一般人感も強く、全体的に程よく身近な感じが出ていてそこも良かったですね。

ジャパニーズ・ノワール

映画自体短いのでレビューも短いよ、っつってね。まあそんなにいろいろあーだこーだ言う話でもないので。
ネタバレ的には最後の最後について触れたいんですがネタバレなので次項に譲ります。
とりあえず気楽に観られる古いジャパニーズ・ノワールって感じで気になる方は観てみるといいのではないでしょうか。という差し障りのないまとめ。

あるネタバレ

これねー。
最後の最後の列車のシーン、中池(西村晃)が滝田に寄生するぞ宣言まではいいんですが、そこに警察がやってくるのがマジで蛇足だなと…。
警察来ないで「滝田は一生中池の奴隷になるのか…」みたいな余韻を残したほうが絶対に良かったと思うんですが、あっさり捕まっちゃうよって感じで終わっていくので文字通り「つまんねーな」って終わり方になっちゃってると思うんですよね。
もったいない。

このシーンがイイ!

地元の会社社長に滝田が頭を下げるシーンがあるんですが、そういう弱みを握らせちゃって大丈夫なんかいなとすごく印象的なシーンでした。その後の行動に支障をきたさないか?

ココが○

短めの上映時間でシンプルなストーリー。

ココが×

ネタバレ項に書きましたが、やっぱり最後の最後が非常にもったいないなと。

MVA

んー、この人かなぁ。

金子信雄(滝田役)

出世街道まっしぐらなものの脅されてしまい、人生に暗雲が立ち込める男。一応は主人公になるのかな?
最初に書いた通り、金子信雄と言えばエプロンして料理云々言ってる爺さんというイメージしか無かったので、演技しているだけで新鮮でした。めっちゃ若かったけど。
いろいろ感情の起伏が激しい役なだけにそれなりに難しそうでしたが、そこはさすがにお上手でしたねということで。

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