映画レビュー0857 『特捜部Q 檻の中の女』

今回もネトフリ終了間際シリーズですよっと。ホント最近ネトフリに行動を左右されている気がしてならない。

特捜部Q 檻の中の女

Kvinden i buret
監督
脚本
原作
『特捜部Q 檻の中の女』
出演
ソニア・リクター
ミケル・ボー・フォルスガード
トロールス・リュービュー
音楽
公開
2013年10月3日 デンマーク
上映時間
97分
製作国
デンマーク・ドイツ・スウェーデン・ノルウェー
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

特捜部Q 檻の中の女

強引な捜査によって部下を失った殺人課の刑事・カールは、「捜査の書類ミスを見つける」ために創設された、閑職の「特捜部Q」へ配属される。一つの事件に目をつけた彼は、助手のアサドと共に独自に捜査を始めるが…。

オーソドックスな刑事モノながら雰囲気抜群、真面目な作りが好印象。

8.0
昔気質の刑事が独自捜査で未解決事件を追うシリーズ第1作目
  • 閑職に異動させられた男臭い刑事と人の良い助手による未解決事件の捜査
  • 2時間ドラマ的なオーソドックスな刑事モノながら、雰囲気たっぷりに見せつつグロくない仕立ての良さが光る
  • サスペンス・スリラー映画の入門編としてもオススメできる過不足のないデキ

なかなか珍しいデンマーク映画ですが、なんとなくマイナーなイメージとは裏腹にきっちりと盛り上げてくれる雰囲気作りのうまさが光る、なかなか良く出来た刑事モノだと思います。

ネットで見かけたレビューには「デンマーク版相棒」とあったんですが、確かにそんな感じかも。でも相棒観たことないんですけどー! ヨホホホホー!!

まあなんとなくのイメージですが、「相棒」よりもよりシリアスに、ガチな刑事サスペンスと言った感じでしょうか。かなり渋い雰囲気で淡々と、しかしジリジリと時間制限も設けつつ少しずつ真相に近づいていく雰囲気、好きだなぁ。

主人公のカールは物語冒頭でとある捜査に携わっているんですが、相棒が再三「応援を待て!」と言っているにも関わらず聞く耳を持たずに強引に踏み込んだ結果、部下は死亡、相棒は寝たきりの重症、自身も大怪我を負うという大失態を犯します。

半年後だったか復職を願い出た彼に用意された仕事は、「過去の未解決事件の書類のミスを発見して報告する」という窓際部署“特捜部Q”の仕事。部員は彼と、新たに配属された元雑用係のアラブ系・アサドの2人のみ。

しかし彼は不満ながら特に上司に突っかかることもなく書類のチェックを始め、ある女性政治家が自殺した事件の捜査報告書に目をつけます。

いろいろ納得のいかない内容のこの書類、ちょっと調べてみるか…と“チェックだけ”の特捜部の仕事から逸脱して独自に捜査を開始、「やっぱりどうやらこれは自殺じゃなさそうだぞ」というところで上司から「勝手に捜査してんじゃねぇ」とお叱りを受け動きを縛られる中、果たして2人は真相にたどり着けるのか…というお話です。

早々にわかるので書いちゃいますが、実はこの「自殺した女性政治家」、捜査を開始した時点では生きています。タイトルの通り「檻の中の女」、つまり監禁されているわけですね。

ただ特捜部の2人は「自殺に見せかけた他殺」だと思って捜査しているので、当然ながらそこまでタイムリミットが迫っているつもりもなく、急がず丹念に捜査を進めていく…そのもどかしさみたいなものは特に強調されていないんですが、ただその「死んだと思っている捜査側」と「まだ生きている被害者側」のギャップが結構効いているなかなか面白いストーリーだと思います。

一方物語の進め方であったり、最終的な解決の流れであったりは、やっぱり普通の「2時間ドラマの刑事モノ」っぽい良くも悪くもオーソドックスで意外性のないものではありました。

言ってみればベタで面白みがない予想通りの展開にはなるんですが、ただそれを補って余りあるほどに雰囲気が良い。

主人公もベタな昔気質の刑事ではあるんですが、それ故安心して観られるし渋いし力強いしで◎。相棒もこれまたベタに補うタイプできっちり仕事をしてくれるから安心。

さらに中東系の相棒っていうのが時代が出てて良いですね。なんとなくね。これで白人コンビだとちょっと無難すぎちゃって余計に面白みが欠けた気がする。

入り口が未解決事件で、「自殺のように見せかけた他殺じゃないか」から捜査がスタートしつつも事件そのものは監禁事件なので、「彼女はなぜ、誰に監禁されているのか」という被害者側のバックグラウンドの描写も割合大きな比重を占めていて、捜査側に寄り過ぎないバランスもなかなか良かったんじゃないかと思います。

被害者が「なぜ狙われたのか」を描くことで、犯人に対しても理解が進む作りはこれまたオーソドックスではありますが丁寧なもので良い。事件全体を真面目にしっかり語り、「犯人の顔も見える」ことで観客の感情にも訴えてくる物語になっています。

ということでね、他に特に言うこともないんですけども。

終盤のある展開だけ、「見せ場作りまっせ」的な違和感があったんですが、そこを除けば概ね良く出来た刑事モノだと思います。

くどいようですがオーソドックスな2時間ドラマっぽい内容でありつつ、かなり無駄が無い引き締まった作りになっていると思うので、「ベタでも筋肉質だから全然観られちゃう」良作ではないかなと。

ちなみに2018年末現在、映画のシリーズは4作作られていて、原作は7作まであるようです。

この1作目のデキの良さを観れば他も全部きっちり観ていきたいと思わせる仕立ての良さがあるので、今後も楽しみですね。

ネタバレの中の女

ちょっと気になったところ。

終盤犯人を見つけるも襲われ、それでもなお探しに行く主人公・カールがあっさり被害者の監禁場所にたどり着いちゃった部分。なんであの途中で犯人と遭遇しないのかちょっと不自然すぎやしませんかね。

いかにも「待ってろすぐ助けるぞ!」からの犯人到着→絶体絶命からアサドの見せ場、って展開にしたいがための流れのようで、あそこだけはちょっと不満がありました。

もう一つ少し引っかかったのは、特捜部の2人が「生きてたのか!」って気付く場面が無いのがもったいないような。

基本的に死んでると思って捜査していたはずなので、どこかで「もしかして生きてるのか?」みたいに思案する場面だったり、「これは監禁事件だ!」みたいに気付く場面だったり、何かしらワンクッション入れて欲しかったなーと思いました。細かいんだけど。

でも上に書いた通り、生きてると思ってない捜査側と実は生きてる被害者側のギャップが効果的な物語だっただけに、そこに対して落とし前をつけるような場面があったら良かったなーと。

このシーンがイイ!

アサド行きつけのお店にカールが一人で赴くシーン、好きですね。語りすぎずに行動で観客に理解させる、カールの性格をそのまま反映させているようなシーンで。

ココが○

薄暗い雰囲気の良さと、全体的に過不足のない丁寧さ。

とても真面目に作られた映画だと思います。物語の展開そのものに不満がある人はいるでしょうが、映画の作り、見せ方に不満がある人は少ないんじゃないかと思う。

ココが×

諸々オーソドックスな点。

刑事は普通の刑事だし、地味なのは否めません。ただそこが良いんだけど。

むしろ逆に言えば、これだけオーソドックスな刑事モノでありつつこれだけしっかり見せてくれるレベルの高さは大したものじゃないかなとも思いますね。

MVA

主人公・カールを演じるニコライ・リー・コスがね。ジェイソン・ベイトマン似のゴリラって感じで良かったですね。渋くて。

相方アサドを演じるファレス・ファレスもとても良くて、このコンビ良いな〜と思いつつこちらの方に。

ソニア・リヒター(ミレーデ・ルンゴー役)

被害者の女性政治家。

普通に美人さんなんですが、監禁されている状況からかなりしんどい姿もきっちり演じて見せてくれているので、もう単純に女優魂的に素晴らしいなと。

痛々しさも見事だったし、やっぱり主要メンバーが良いからこそのこの雰囲気の良さだったのかなぁと思います。

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