映画レビュー1401 『パリの調香師 しあわせの香りを探して』

アマプラ終了間近シリーズ。結局メインの映画摂取先が変わってもやることは一緒。配信終わるやつを急いで追うだけ、そんな人生さ…。

パリの調香師 しあわせの香りを探して

Les Parfums
監督

グレゴリー・マーニュ

脚本

グレゴリー・マーニュ

出演

エマニュエル・ドゥヴォス
グレゴリー・モンテル
ゼリー・リクソン
ギュスタヴ・ケルヴェン
ポリーヌ・ムーレン

音楽

ガエタン・ルーセル

公開

2020年7月1日 フランス

上映時間

100分

製作国

フランス

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

パリの調香師 しあわせの香りを探して

あっさりめ。

7.5
ワガママ天才調香師に振り回される弱者ダメ人間
  • ワガママおばさんに連続指名される運転手、“弱み”があるので渋々引き受け
  • 徐々に関係性を築きつつ、どっちにも窮地が訪れる
  • 地味で大人向けのミニシアター系映画
  • よくあるパターンではあるのでお好みで

あらすじ

なーんかどっかで観たような流れの映画だなぁと思いつつ、でもこの手の映画好きなので全然OK、みたいな。

運転手のギヨーム(グレゴリー・モンテル)は交通違反の違反点数がヤバめになってしまい、雇い主から「次やったらクビ」的なことを言われております。

そんな彼にあてがわれた次の仕事はヴァルベルグ(エマニュエル・ドゥヴォス)という女性の送迎。彼が彼女の元へ行くと、やれ荷物運べだのタバコ吸うな(その上箱ごと捨てられる)だのいろいろと指図され、宿泊先ではホテルのシーツの匂いが気になるからと張り替えを手伝わされ、仕事を終えて彼女の自宅へ帰ると今度はひったくりに遭遇、犯人に飛びかかって防ぐもお礼はなく、ついにギヨームは憤慨して荷物を置いたまま帰ってしまいます。

なにせクビが近いだけに若干のやらかし感から言い訳しようと雇い主の元へ行くと、再度ヴァルベルグから仕事の依頼が入ったことを伝えられるギヨーム。やむなくまた彼女の元へ行くと「仲直りの仕事よ」と伝えられ、今度は運転手ではなく助手のような形で彼女の仕事を手伝ううちに、除々に彼にも敏感な嗅覚があることが判明してきます。

こうしてなんだかんだ彼女の仕事を手伝うギヨームですが、かつてディオールの香水を作っていたこともあるヴァルベルグは今の仕事に不満があり、再び香水を作りたいと願っていまして…あとはご覧ください。

よくあるパターンではあるけれど

上記あらすじには入れていませんが、ギヨームは離婚したのか離婚調停中なのかわかりませんが妻とはうまく行っておらず、隔週で娘ちゃんと会うのが大切な時間…というよくあるパターン。この前の「ソルフェリーノの戦い」もそうでしたが、フランス映画って離婚して子どもと会うのに必死みたいな話、多くない? お国柄なんでしょうか。

彼は仕事がクビになりそうなことからもわかる通り、そこはかとなくダメ人間感が漂っており、そこもまたこの手の話ではよくあるパターンではありますが好きですね。生きるのに必死で優秀ではない一般人の話って感じで。親近感しかない。

本当にどこかで観たことがあるような話ではあるんですが、最初に書いた通り僕はこの手の話が好きなので特に飽き飽きみたいなこともなく、「普通に良かった」という感じではありました。

一方で結構(特にラストは)あっさりしすぎなぐらいあっさりしている感覚もあり、そこがヨーロッパ映画っぽくていいよなと思いつつも物足りなさもありました。微妙なところ。

ただそんなあっさり映画でありつつこれを観ながらなんとなく漠然と考えてしまったことがありまして、「人は何歳からでも変われる」とはよく聞きますが、もしかしたら人は長く生きれば生きるほど自分の悪いところにも向き合わざるを得なくなるので、むしろ歳を取ってからの方が「変わろう」と思うのかもしれない、とふと思いましたね…。

若くない分、見て見ぬふりをしている自分の悪いところを変えないとこのまま何も良くならないのがわかってしまうだけに、それが動機となっていくんじゃないか…と。まんま自分自身に当てはめて感じたんですが。そんなことを感じられたのも収穫だったかもしれません。

この映画のちょっと変わったところとしては、やはりもう一人の主人公であるヴァルベルグの仕事が「調香師」であるところ。調香師の仕事なんてよくわからないだけにその片鱗が伺えるだけでも結構興味深い。

Wikipediaによると、劇中登場するディオールが撮影協力に名を連ねていて、さらにエルメスの本物の調香師の方が監修しているそうです。ディオールにエルメス、観るだけで財布が飛びそうだぜ…!

なのでヴァルベルグの仕事ぶりについてはそれなりに信憑性のあるものなんでしょう。嗅覚が鋭い人、すごいなという小並感を抱かずにはいられません。

また妻とうまく行っていないギヨームと、いいお歳ながら独身のヴァルベルグが徐々に関係性を構築していくお話だけに、ちょっといい感じになっちゃうのでは…? と嫌な予感もよぎりますがそういった展開も一切ないのがとてもいい。あくまで仕事上の、人間同士の付き合いがサラッと深化していく描写はこれまたあっさりめなんですがそこが良いですね。これで恋愛入ってきちゃったらだいぶ話が変わっちゃうので。

ギヨームと娘ちゃんの関係もうるさすぎずにいい塩梅。異性の子どもとの付き合いの難しさも若干感じさせつつ、仕事の環境が親子関係に影響を与えていく作りも定番ですがよく描かれています。

オッペンハイマーの余波

あとはもう特に書くことも無くてですね。

実はこの映画を観たのは「オッペンハイマー」の翌日で、レビューもその順番で書いているだけにあちらにエネルギーを吸われてこっちは映画同様にあっさりめです。

まあでもオッペンハイマーで脳がバターになっちゃったので、ゆっくり溶かすにはこれぐらいあっさりめの地味系映画がちょうどよかったのかもしれません。いや溶かしちゃダメか。

とは言え眠くなるぐらい地味すぎるわけでもなく、「ちゃんと良い映画」なのでご心配なく。

美男美女が登場するわけではないこともあって、やっぱりそれなりに大人向けの丁寧な映画、というところでしょうか。

このシーンがイイ!

ベタですがギヨームが価格交渉するシーン、良かったですね。そこで一気に関係性が深化した感じがあって。

ココが○

一般人のなんてこと無い話ですが、そこが好きです。どこにチャンスが転がってるかもわからない、出会いの妙も感じられます。

ココが×

これはこれでいいんですが、やっぱりあっさり風味なのでもう少しグッと来るポイントがあると良かったような気がしますがそうするとちょっと鼻につきそうでもあるし難しいところ。匂いだけに。

MVA

まあ順当に…。

エマニュエル・ドゥヴォス(アンヌ・ヴァルベルグ役)

ワガママ調香師。

マジでいけ好かない感じの序盤から、徐々に変わろうとしていく雰囲気が良かったですね。

一瞬出てきた古い写真が超美人だったのもポイント。さすがフランス人女優、って感じ。(どんな感じ)

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