映画レビュー1402 『ロビンとマリアン』
JAIHOを休止してしまったので今現在サブスクはアマプラのみということもあり、今年はBSをちゃんとチェックしてこれを機にあんまり観る機会がなさそうな映画を観たいぞと思っているわけですが、今回は存在自体初めて知ったこちらの映画を録画して観ました。
ロビンとマリアン
リチャード・レスター
ジェームズ・ゴールドマン
ショーン・コネリー
オードリー・ヘプバーン
ロバート・ショウ
リチャード・ハリス
ニコール・ウィリアムソン
デンホルム・エリオット
1976年3月11日 アメリカ
106分
アメリカ
BS録画(TV)

中身以上の価値。
- 王の元を離れ、故郷へ戻ったロビン・フッドがマリアンと再会
- 出頭を命じられていたマリアンを保護したロビンは代官から追われることに
- アクションはかなりユルめ
- ヘプバーン復帰作
あらすじ
ショーン・コネリーとオードリー・ヘプバーンが共演した映画があったのも初めて知ったのでこれは観なければと観ましたが、「面白さ」という意味では古さもあって正直今ひとつ。ただそれ以外の価値を感じる映画だなと。
獅子心王と呼ばれるリチャード1世(リチャード・ハリス)に仕えるロビン(ショーン・コネリー)は、十字軍の遠征中に攻略に赴いた城の扱いについて王と対立したことで逆鱗に触れ、処刑を宣告されます。
しかし王はその城に残っていた老人が手で放ったスーパー投げ矢によって致命傷を受け、ご乱心の挙げ句崩御。死の間際に罪を許されたロビンは、同じく処刑を言い渡されていた相棒のリトル・ジョン(ニコール・ウィリアムソン)とともに故郷のシャーウッドの森へ帰ります。
故郷に戻った彼はかつての仲間であるウィル・スカーレット(デンホルム・エリオット)とタック(ロニー・バーカー)の2人と再会し、「マリアン綺麗だったよな〜マリアンに会いてぇ〜な〜あぁー!?」と歌まで歌って執拗にマリアン愛をこじらせ、彼女が暮らす修道院へ行きます。
ロビンが知らないうちに尼僧となっていたマリアン(オードリー・ヘプバーン)はかつて去って行ったロビンを冷たくあしらい、新たな王の元で発せられた聖職者追放令に従って出頭しようとしますが、ロビンはそれを阻止、強引に彼女をさらいます。
当地を治めるロビンの長年の宿敵、ノッティンガムの代官(ロバート・ショウ)は彼を追うことにしますが…あとはご覧ください。
ユルバトルとヘプバーン
事前情報まったくなしで「ショーン・コネリーとヘプバーンの共演」だけを目的で観始めたので、途中で「えっ、ロビン・フッドだったの!?」ってなったよね。ダメ of ダメ。
しかもロビン・フッド自体「名前は知ってるけど物語はよく知らない」という体たらくなので、「ロビンとマリアンの“その後”の物語」と言われてもその前も知らないんですごめんなさい、というとにかくまったく参考にならないひどい観客です。せめてリドリー・スコットの「ロビン・フッド」ぐらい観ておくんだった…。
まあ後悔しても今さらなので先に進めますけども、その(とにかく名前だけは)有名なロビン・フッドをショーン・コネリーが演じ、その恋人であるマリアンをオードリー・ヘプバーンが演じた一作ということでね。観ましたけども。
なんと(これも観てから知ったんですが)オードリー・ヘプバーンは「暗くなるまで待って」以降約10年間映画出演からは遠ざかっており、久々の映画復帰作となった作品だそうです。そもそもダメ元でお願いしたら通っちゃった系っぽいんですが。
「暗くなるまで待って」当時は30代後半、まだまだお美しいお姿でございましたが、今作では40代後半となってさすがに歳を取ったなぁと感じさせる面はありつつも、しかし相も変わらず歳を取ったなりの美しさがあり、「はぁ…ヘプバーンはどこまで行ってもヘプバーンね…」と感嘆の息が漏れる素晴らしさ。やっぱりこの人は唯一無二だねと再認識した次第です。
おまけにショーン・コネリー演じるロビン・フッドもそうですが、そもそも物語的に「一線から退いた年寄り」的な雰囲気を醸し出しており、「ピークを過ぎた2人が再会し、また惹かれ合う」姿は情熱ほとばしる恋愛映画とはだいぶ趣の異なる味わいを感じさせ、これはこれでなかなかいいぞと思わせてくれます。ただ当時のショーン・コネリーはちょうど今の自分と同じぐらいの歳なので、あんまり年寄り感出されてもこっちもしょげちゃうんですけど、みたいな余談もあります。まあこの頃の40代後半と今の40代後半はだいぶ印象が違うのも確かですが…。(自分がそれに含まれるかはまた別の話)
事あるごとに「俺ももう歳だからさ…」みたいな描写が登場し、戦いのシーンもまーキレがない。ヒーヒー言いながらノロノロ剣を交えるシュールさがおかしい。めっちゃわかるけど。
一騎打ちのシーンではもうそのものズバリ「疲れた」とか言っちゃうのが最高です。なんだこのユルい戦いは。マジで命の取り合いしてんのか。
とかく人間離れしたアクションばかり見せられている昨今なので、逆にこの等身大のアクションは新鮮でしたね。キレがない分リアルだな、っていう。もう若い者に任せちゃえよと思いますが、(相手となる代官も含め)名声もある彼らが戦うこと自体に意味があるのがよくわかる、なんとも不思議な味のあるバトルが観られる映画でした。
そんな感じであんまり命の危険を感じないユルい戦いで道中進むので、いいぞ面白いぞ! という感じにもならず、やはり「ヘプバーンが出てる(おまけに復帰作)」というポイント以上のものがあるかというとなかなか難しい気がするんですが、一方で終盤に向けて急にエモさを増して行くので最終的には「うわーそういう話だったのか〜…」とちょっとグッと来てしまい、なかなか悪くなかったなと。
そう思わせてくれたのは間違いなく終盤のヘプバーンの演技(と存在感)から来るものなのは間違いなく、やっぱりこの人は特別すぎるなと今さらながら思います。勝手にこっちでそう思ってるだけ…かもしれませんが、その可能性を割り引いてもやっぱり他の人には出せない何かがある気がするんですよね…。
10年近く半引退状態で世に出てなかった彼女が、復帰作でこんなエモい話を年相応の役で演じる、というところにかなり大きな価値があるように思われ、事実彼女も「いつも現実の私より若い役だったけど、いつかは本当の自分と同じ年頃の女性の役を自然に演じてみたいと思っていました」と語っていたそうで、なるほど確かにそういう役だな、と。そしてそこに込められた圧倒的な愛…𝑳𝒐𝒗𝒆…!
ヘプバーンはとかくその美貌に目を奪われがちですが、伝え聞くエピソードから察するに今の女優さんではなかなかいなさそうなぐらい献身的な性格も素晴らしく(事実後年は女優よりもユニセフでの仕事の方に力を入れていた)、その辺りの性格の良さが伺える役と演技になんだか感慨深いものがありましたね。
年相応の素晴らしさ
なにせロビン・フッドをイマイチ知らないこともあるし、古い映画特有のスピード感の無さも相まって「面白かった!」と言いたくなるようなものではありませんでしたが、しかしやっぱり今となっては貴重な2大スターの共演が観られただけでも良かったよ、と。
実はヘプバーンの方がショーン・コネリーよりも1歳年上というのも密かなマジカヨポイントであることも書いておきたいと思います。マジカヨ。
ちなみにお2人はこの共演を機に仲良くなり、以降友人関係が続いたんだとか。いい話ですね。
何はともあれ、40代でそれなりに歳を重ねた“妙齢”感を感じさせるヘプバーンの名演は、やはり若い頃のドヒロインっぽさとはだいぶ違うものがあるので、それだけでも一見の価値があるのではないかと思います。
歳をとっても素敵なままであることがわかって、それだけで僕は嬉しかったですね。
このシーンがイイ!
疲れちゃうバトルも良かったけど、まあやっぱりラストでしょうね…。ヘプバーンが本当に良い演技で。
ココが○
序盤からはまったく想像できなかったんですが、まーエモいお話でしたよ。
その展開自体は賛否両論ありそうなものの、舞台が古いだけにこれもまたアリかなと思わせるのもお上手。現代劇なら無しなんでしょうけどね。
ココが×
やっぱり最近の映画と比べると全体的にふわっとしてるんですよね…。
ふわっとしてるからこそ良い映画もありますが、この映画はそういう話でもないだけに…例えばもう少し悪役が悪役らしいキャラとして“立つ”ように描いてくれたりとかあってもよかったかなと。
MVA
なにげに悪役がロバート・ショウだったのも「スティング」ファンとしては嬉しかったんですが、それはそれとしてこればっかりはやっぱりこの人。
オードリー・ヘプバーン(マリアン/マザー・ジャネット役)
ヒロイン。
尼僧なので最後まで被り物のままなのか…? と思っていたんですが途中からさすがに映画らしく(?)髪の毛を露出するサービスもしっかり導入してくれました。
まあやっぱり繰り返しになりますが年相応の落ち着きと、それに相応しい美しさ、そして内面からあふれる慈愛の眼差しみたいなものが素晴らしいですね。さすがとしか言いようがありません。エマ・ストーンにこの味は出ない。(アカデミー賞以来悪い比喩として使いたくなるエマ・ストーン)
これ以降に彼女が出演する(テレビ映画を除く)映画は3本ありますがどれもあまりパッとしないらしく、事実上これが最後の代表作と言っても差し支えなさそうです。(40代で「最後の代表作」になってしまったのも悲しい話ではありますが)
そう考えるとラストシーンもそれに相応しいものでもあるし、やっぱりその歴史的なポジション含めてエモいな、と思いますね。