映画レビュー1403 『THE BATMAN -ザ・バットマン-』
ちょっと最近仕事が忙しい&家ではやることが多いのでレビューが書けず、更新ペースが遅れます。まあ見に来る人も大していないのでこの辺あんまり気後れすること無くサボれるのが人気なしブログのいいところです。
さて今回は公開当時から観たかったやつですが、ガイナーなので後回しにしてました。
THE BATMAN-ザ・バットマン-
マット・リーヴス
ピーター・クレイグ
『バットマン』
DCコミックス
2022年3月4日 アメリカ
176分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)
程よい独自路線感。
- いつもの設定のバットマン、今回はだいぶ若返り路線
- スーパーヒーロー感は薄く、ややスリラー傾向強め
- ノーラン版とはだいぶ違ってリブートに相応しい作り
- ただしかなり暗い
あらすじ
約3時間の長尺ですが、そんなに長さを感じることもなくちゃんと面白かったのでとりあえず一安心、といったところ。この先2本の続編といくつかのスピンオフも予定されているそうです。
市長選を間近に控えた「世界一住みたくない街」でおなじみのゴッサム・シティ。
圧勝と見られていた現職市長ドン・ミッチェル(ルパート・ペンリー=ジョーンズ)が新人候補に猛追される最中に殺害される事件が発生。
なぜか捜査中の現場にやってきたバットマン(ロバート・パティンソン)は犯行現場に残された彼宛の手紙を受け取り、その中身に記されたなぞなぞを即座に解くも現場にいたゴッサム市警本部長のピート・サベージ(アレックス・ファーンズ)に追い出されます。
しかし後日今度はその本部長も殺害される事件が起き、またもバットマン宛の手紙が残されておりまして…あとはご覧ください。
おなじみだけどいろいろ違うバットマン
ということで「TENET」で映画ファンの情緒を破壊したロバート・パティンソンによるリブート版バットマンですわよ。
バットマンはさして詳しくもないんですが、なんとなくメジャーなバットマンで言うとマイケル・キートン→チャンベ→ベンアフときて4人目、って感じでしょうか。
ただベンアフ版バットマンってバットマン単体では作られていないんですよね。どれもDCオールスター系の作品に出てくるだけで。だからか正直イマイチパッとしないというか印象が薄い。(ベンアフのバットマン自体は決して悪くなかったと思いますが作品があまり良くなかった印象)
んでやっぱり現代のバットマンと言えばチャンベの、言い換えればノーラン版のバットマンが一番のメルクマールってやつじゃないでしょうか。カタカナ語使ってカッコつけてんじゃねぇ、みたいな。
なにせチャンベバットマン3部作(ビギンズ→ダークナイト→ライジング)はもはや伝説級のバットマンなので、「バットマン映画として」とか「スーパーヒーロー映画として」以上に単純に「映画として」の評価が高すぎるだけに、あれのあとに(ベンアフがワンクッション的に犠牲になってくれているとは言え)リブートを作るのもしんどかっただろうと推測しますが、そのせいか確かにあの路線とは違った方向を模索していてそれが割と功を奏していた印象でした。
今作におけるバットマンは「バットマンとしての活動を開始してから2年目」というまだまだ新人バットマンという若い設定で、20年やってきて心身ともに疲労困憊(という設定)なベンアフ版からは一気にモードチェンジの様相を呈しております。
例によって両親は殺されてアルフレッドに育てられた孤児だったり、大金持ちだったりといった設定はいつも通り、市警の協力者のゴードン警部補も登場します。ただアルフレッドとの関係は若干複雑な関係(簡単に言えばチャンベ版のように信頼してないっぽい)だったり、ゴードンはジェフリー・ライトが演じているように黒人になっていたりといろいろ変えてきています。
また今作のブルース・ウェイン=バットマンはウェイン産業にも関わっていないようで、半ばニートのような生活を送っているかなりの陰キャっぽさが漂っております。マジで暗い。映画のトーンもブルース・ウェインも暗い。たまに人目に触れると周囲がざわつくぐらいの引きこもりっぷりです。
そしておなじみキャラの一人であるレイチェルも登場せず、今作のヒロインはキャットウーマンであるゾーイ・クラヴィッツ演じるセリーナになります。ゾーイは相変わらずめちゃくちゃ綺麗で素敵でしたが、いかんせんキャットウーマンのマスクが「泥棒かな?」と思うぐらいにクソダサい上にあまり隠れていないためにバレバレすぎるので「それでいいのかよ」と終始突っ込みたくもなりました。(ただあんまり隠してる風でもなかったのも事実)
あとはこれまたおなじみのヴィランであるペンギンも結構重要な役で出てくるんですが、コリン・ファレルと言われてもわからないぐらいに特殊メイクがすごくてすごい。これもまた見どころでしょう。
今作のメインヴィランはこれまた原作ではおなじみの「リドラー」なんですが、今作は実際に起きたゾディアック事件の犯人を参考に作られたキャラクターだそうで、それもあってか映画自体だいぶスリラーの色彩が強く、「金の力で作り上げたテクノロジーを使って悪い奴らをなぎ倒していくぜ」みたいないわゆるスーパーヒーロー的なバットマンとは一線を画しており、ヒーローよりも探偵に寄ったような雰囲気がありました。
活動開始から2年目というまだフレッシュなバットマンの割には警察にも割と自由に出入りしていておなじみ感を醸し出しており、事件現場にも普通に現れて勝手に一緒に捜査に参加するコスプレ野郎、みたいな感じが最高でしたね。勝手に証拠を触っては怒られるんだけど「手袋してるし」みたいな。暗いんだけどその辺ちょっとシュールでおかしいところもちらほらあります。
映画自体が長尺ということもあってか、事件と犯人、それを追う警察とバットマン…といった要素を組み合わせてきちんと「現実に起きた連続殺人事件」を観ているような面白さがあり、だいぶ現実路線感の強いバットマンだと思います。
ゴッサム・シティの雰囲気も今まで観てきた中では一番「こういう街なんだ」とその雰囲気が伝わってきた気がするし、ロバート・パティンソン演じるブルース・ウェインもすごくブルース・ウェインっぽいというか、「金持ち坊っちゃんこじらせ系」みたいな雰囲気が一番出ていて、なるほどこれはちゃんとバットマンだし今までとはちょっと違うねと興味を抱かせてくれて、それがまたすごく良かったと思います。
今後も期待
気付けばチャンベバットマン最終作の「ダークナイト・ライジング」から12年も経っていてマジカヨ感が拭えないわけですが、それ故にもはや「ビギンズ」なんて記憶の彼方で殆ど覚えておらず、これはもう一度チャンベバットマンを観直して改めてバトパティバットマンと比べてみたいところですね。バトパティって今作ったけど略称合ってるんでしょうか。
ライジング以降も順調にキャリアを積み、なんならアカデミー賞も獲って今がキャリアハイかもしれないノーランが残した3作はやはり別格にせざるを得ないとは思いますが、しかしなかなかどうしてこのザ・バシリーズ(って呼ぶのか?)も今後に期待できる良質な映画であることは間違いないところ。
密かにサースガード兄貴が出ているのもサースガードウォッチャーとしては見逃せないところです。死んだけど。
このシーンがイイ!
空飛んで逃げるシーンは撮り方含めてなんだかシュールで笑いました。この映画、ところどころ真顔でボケてくる妙な味があります。
ココが○
非常に暗いんですが、ただ上に書いた通り今までで一番ゴッサム・シティがゴッサム・シティっぽい気がしたし、ブルース・ウェインがブルース・ウェインっぽく見えました。印象の問題かもしれませんが、その雰囲気の作り方はなかなか巧みだったのではないかなと。
ココが×
繰り返しになりますがとにかく暗い。それが3時間あるのでなかなか観るのも腰が重くなります。次もどうせ暗いだろうけどもうちょっと短くなってくれると良いんですが…。
あとはキャットウーマンとの絡みはもっとあっさりで良いと思う。今どき珍しいぐらい(ロバート・パティンソンだからなのか?)わかりやすいキスシーンが入ってくるので「うわあ余計だなぁ」とゲンナリ。
MVA
そんなわけでロバート・パティンソンは非常に合ってましたね。すごくバットマンに向いてると思う。
その他皆さんとても良かったですが、今回は…この人かな。
ポール・ダノ(エドワード・ナッシュトン/リドラー役)
本作のメインヴィラン。
メガネで童顔、悪いことしなさそうだけどめっちゃ悪いこの感じ、いかにもだけど好きでした。ちょっと狂っちゃってる感じもすごく上手い。
スピンオフでは脚本と主演になるそうで、それもまた面白そう。
他の方も少し。
どうしてもゲイリー・オールドマンの印象が強いゴードン警部補を演じたジェフリー・ライトも良かったですね。印象をガラッと変えるにはいい人選だと思います。
ゴッサム・シティのボス的なジョン・タトゥーロもさすが。はよ「セヴェランス」のシーズン2お願いします。
アルフレッドを演じたアンディ・サーキスはまだなんとも言えず保留。出番も少なかった気がするし。次以降でもっと出番が増える…のかな?