映画レビュー0579 『ナイトクローラー』

これより5本ほど、遠い昔の三連休にレンタルしてきた映画が続きます。どれもとても観たかった映画なので非常に楽しみです。

まずは公開時に観たかったものの観に行けなかったこちらの映画から。

ナイトクローラー

Nightcrawler
監督
脚本
ダン・ギルロイ
音楽
公開
2014年10月31日 アメリカ
上映時間
118分
製作国
アメリカ

ナイトクローラー

盗品で糊口をしのぎながら生活しているルイスは、ある日事故現場を撮影するカメラマンを目撃、早速自分でも盗んだ自転車と交換した機材で撮影を始め、ローカル局に売り込むことに成功する。やがて彼は、テレビ局のディレクターが求めるもっと過激な映像を撮ろうと、現場の改ざん等、行動が徐々にエスカレートしていき…。

胸クソ悪いリアルさ。

9.0

ろくに働いたこともない男がフリーの報道カメラマンとして過激に成長していく様を描いた、いわゆるスリラー映画ってやつでしょうか。

一人の結構大きくネジが外れちゃっている男が、その性質に最も向いていてかつ最も醜い部分が表出してしまう仕事を選んでしまったがために、いろいろなものを狂わせていくお話です。

さて、「いろいろなものを狂わせていく」と書きましたが、これはネタバレ回避のためにあえてややピンと来ない表現にしてます。なんというか、そういう字面から受けるような不条理感みたいなものは強くありません。いや、とても不条理な話なんですが、ただそこに主眼が置かれた映画ではないです。ですが、実際に観れば、狂ってしまったものが結構あるのも事実だとわかると思います。

一番狂っている主人公のルイスは実はそんなに変化がない方で、どちらかと言うと彼の周りにいる人たちや、彼の影響下に置かれてしまった人たちのいろいろが狂ってしまうお話。

怖いです。

一応死体なんかは軽く出てきますが、映画としては特に凄惨ということもなく、この手の映像が苦手な人でも全然問題ない程度に観られるものだと思いますが、そういうビジュアル面ではない、精神的な怖さがすごくありました。一人の人間と職種の最も望ましくないマッチングが起きちゃった感じ。

さらにプラスでその彼と組ませてはいけないタイプのディレクターも出てきちゃう、と。

主人公のルイスは、定職につかずに(多分)それなりにいい歳になり、さらに性格的にも遠慮のない嫌な人間で、やや幼児性を感じるタイプ。単純にガキっぽいな~というわけではなく、根っこの方に「社会経験がない幼さが見える」感じでしょうか。ただ、それでも幸か不幸か要領の良さは持っているらしく、いきなり始めたカメラマンの仕事もかなり順調で、気付けば良い機材に高級車を乗り回すようになります。

彼の仕事は報道用の映像を撮影するフリーのカメラマンなので、当然事件や事故になるわけですが、この手のニュースはおそらくどこの国でも一緒なんでしょう、次第に過激さを、スクープを求めて、段々と映像も撮影方法も過激になっていくわけです。この映画ではその過激さを求める人物としてニュース番組のディレクターがその役割を担っていましたが、この人も結局は視聴者の代弁者でしか無く、「過激な映像のほうが視聴率が取れる=視聴者が求めている」という当たり前の関係性を表現していたに過ぎません。

そう、つまり普通のワレワレ一般市民様がこういうものを求めている、だからこそこういう男が出てくる、というお話で、結局主人公のルイスは一般市民の“悪の元気玉”を集めて行動していただけ、なんですよね。

このねー、胸クソ悪い主人公と地続きで自分がいる、その居心地の悪さのおかげでとても嫌な気持ちになるんですが、それがまたこの映画のよく出来ているポイントになっているのが素晴らしいんですよね。ただの「嫌なヤローがお金欲しさに道徳を捨てたよ」っていう話じゃないんですよ。「そいつが嫌なヤローになったのはお前たちのせいなんだからな?」っていう。

これが怖いし、胸クソ悪いし、この映画の面白さだな、と。

最終的にどういう話になるのかと思って観ていましたが、僕の鑑賞前の予想とはまったく違う方向へ。ただ、これまたネタバレになりかねないので、どう違うのかとかどう予想したのかとか書けないのがもどかしいんですが。

結論から言えば、とても素晴らしいラストだと思います。

好きか嫌いかも書けないですが、この映画としてこの終わり方は完璧だと思う。まあ本当に良く出来てましたよ。僕がよく書くような、「過激さで耳目を集める」ような内容でもなく、真っ当で。

もう一回観たいぜ、ってタイプの映画ではないですが、本当に端的にこの世の中の病理を描いている気がして、他人事ではない感じがとても刺さりました。

胸クソ悪い系の映画が好きな方にぜひオススメしたい!

このシーンがイイ!

ルイスが“交渉”するシーンはどれもふてぶてしくてよかったですねぇ。

特に良かったのはディレクターと食事してたシーンかな。普通の人間ならあそこまで攻められないと思うんですが、やっぱりネジが外れてると強い。それを受け入れる彼女も彼女でちょっとどうなんだとは思いますが。

ココが○

テレビの裏側にこう言う話、ありそうだよな~と嫌な気分になれること間違いありません。極端な人間のようでいて、実際いそうなリアル感がとても良かったです。

それとこれは余談ですが、主人公が最初に乗っていたボロ車、あれ多分古い方の86だと思うんですよね。トヨタの。むかーし僕が免許取りたての頃にバイト先の先輩が乗っていて、運転した時のことを思い出しました。今のエコ思考の車では考えられないほど加速が速くて、まさにこの映画にぴったりな感じで。そういうところも地味に良かったですね。

ココが×

全体的にリアルではあると思うんですが、初めての時も簡単にテレビ局に入れちゃったり、ディレクターとフリーランスの関係性だったり、少し違うんじゃないかな、と思う箇所はありました。テレビ局周りに関しては、ちょーっと主人公に有利な展開になりすぎかな、という気がします。

もっともアメリカの地方局ってこんな感じなのかもしれないですね。

MVA

これはもうこの人しかいないでしょうね。

ジェイク・ジレンホール(ルイス・ブルーム役)

主人公。

元々そんなに好きじゃない役者さんだったんですが、この役がまたすごく嫌でですね。ムカつくぐらい良かったです。すごいわ、この演技。恐ろしいぐらいなりきってましたね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA