映画レビュー1421 『鳥』
皆さんご存知、鳥。
アタック・オブ・ザ・キラートマトの冒頭でも触れられているだけに、キラートマターとしては観ておかなければ…と義務的に鑑賞しました。
鳥
エヴァン・ハンター
『鳥』
ダフニ・デュ・モーリエ
1963年3月28日 アメリカ
119分
アメリカ
BSプレミアム録画(TV)

そこはかとない面白みと最後のあっけなさ。
- サプライズ的に鳥を届けに女性来訪、直後に街の鳥たちは人を襲い始める
- 襲ってきたり襲ってこなかったり挙動がよくわからない鳥たち
- そこはかとなく漂うかわいさにどうしても笑ってしまう
- 最後はあっけなく終了
あらすじ
まーもう何度も書いていますがやっぱりヒッチコックの映画はイマイチピンと来ないなと改めて感じさせられました。面白くないわけじゃないんだけど…。(これもいつも思う)
ペットショップにやってきたメラニー(ティッピ・ヘドレン)は、後からやってきて店員を探している弁護士のミッチ(ロッド・テイラー)になぜか店員のフリをして近付き、籠の中の鳥を誤って逃がしてしまったりの一騒動を起こしますがミッチが無事捕らえてその場は終了。
彼が気になったメラニーは彼が買おうとしていたものの買えなかったラブバードを購入し、サプライズ的に彼の家へ届けてミッチを驚かせます。
その後彼の家のディナーに招かれたりと親しくなっていく2人ですが、一緒に参加していたミッチの妹のキャシー(ヴェロニカ・カートライト)の誕生パーティの最中に子どもたちがカモメの大群に攻撃される事件が発生、それから街では人が鳥に襲われる事件が立て続けに起きます。
なぜ鳥が人を襲うのか、他の街は無事なのか…深まる謎…! どうなる鳥 vs 人間…!
どうしても笑っちゃう
もう開幕の「店員のフリして対応する」時点でなんだコイツ意味わかんねーな状態だったんですが、そこでもそんなにいい感じだったわけでもないのにわざわざ自宅まで押しかけてサプライズする、って展開も輪をかけて理解できず、のっけから全然乗れない感じはありました。
よく見る「急にいい感じになったな」も大概ですが、それ以上にこの映画の「惹かれてるっぽい感じもないのに強引にカップル化が進む」展開もまったく意味がわからず、鳥云々始まる前に出鼻をくじかれた感があり、最初からイマイチ感が強く感じられる映画だったのが非常に残念。
そこから不穏さが高まってスリラーになっていく展開は悪くないんですが、それも結局理由はわからずじまいだし鳥のぬいぐるみでグワグワ突っついてるシーンなんかかわいくて笑っちゃうしでやっぱりちょっと公開当時の狙いとは違った楽しみ方になってしまってそれもまた残念だな、と。
なんなら「ゾンビーバー」のビーバーも実はこれが元になっていたのでは…? と思うぐらいにチープでちょっと笑っちゃったんですが、当然ヒッチコックはそんな意図で作ってはいないはずなのでなおさら楽しめないという。
さすがに時代もあるのでそこを突っ込むのは野暮(これもいつも言ってる気がする)なのは重々承知してはいますが、それでも笑っちゃったんだからしょうがない。
もっともそれこそ「アタック・オブ・ザ・キラートマト」のオープニングで「人々は笑っていた」と言っていたぐらいなので公開当時からちょっと笑っちゃう人もいたんでしょう。その意味では少し実験的というか意欲作というか…ちょっと「早かった」作品なのかもしれません。
これも以前書きましたが、ヒッチコックの映画はいつも当時の(おそらく)最新技術を意欲的に採り入れて演出に組み込んでいるように見えるんですが、そのせいで当時は斬新だったかもしれないものが今から観るとチープすぎてしまう面が多々あり、今作においても「鳥が襲ってくる」映像でぬいぐるみも使っちゃったもんだから今観るとアフラックかな? みたいな問題が起こってしまうという悲哀を抱いた作品になっているという。
「鳥が突如として襲ってくる」というコンセプト自体は今でもすごく怖いし良いアイデアだと思うんですが、それを描写するには時代が早すぎたのかもしれないというのと、やっぱり僕としてはもう少しその裏に隠された秘密みたいなものを知りたかった思いが強かったので、よくわからないまま襲われて終わっていくお話自体があんまり合わなかったなと思います。
アチーブメントみたいなもの
なんか割とネタバレ的なものに触れている気もするんですが、まあ超古典だし良いでしょとおざなりな感じでまとめますけども。
結局最後がもうちょっとピリッとしてれば「おおっ」となったんじゃないかと思うんですが、正直声に出して「えーここで終わりかー」って言っちゃったぐらいのガッカリエンドだったのでより印象が悪くなっちゃったかなというところ。
繰り返しになりますが設定自体は面白いし、なんなら現実でもちょっと鳥を見かけたら気持ち構えちゃうぐらいに影響力があるストーリーでもあるのでその辺はお見事ではあるんですが、やっぱり技術的に追いついていない点と最初から最後まで乗れなかった展開によって損しちゃったかな、というところです。
とは言えこれもまた映画好きにとっては避けて通れないアチーブメントみたいなものなので、一応観といて良かったかなと思います。
このシーンがイイ!
見に行ったら死んでた系はいいですね。ちょっとホラー感が増して。
ココが○
やっぱり設定の良さでしょうか。意思疎通が図れない存在が急に敵意を向けてくる感じ、コワイ。
ココが×
上記の通り、オープニングから主人公の行動(と感情)が意味不明だったのでまったく感情移入できず、おまけに(時代的に仕方がないものの)演出のアラも目立ってしまったので最後まで微妙なまま。おまけにラストの終わり方も微妙、と来ればもう評価しづらいのは仕方がない。
MVA
ちょっとびっくりしたこともあってこの方に。
ジェシカ・タンディ(リディア・ブレナー役)
メラニーがなぜか気になって追いかけた男、ミッチの母。
初登場時「ミッチのお姉さんかな?」と思ったんですがお母さんでした。それぐらいキリッとした美人だったんですが、鑑賞後に調べてジェシカ・タンディと知って超びっくり。
ジェシカ・タンディと言えばもうお婆ちゃんのイメージしかないので、昔は流石に美人だったんだな…と。これが一番印象的だったしおそらく将来的にこの映画のことは「ジェシカ・タンディが美人だった」ことしか覚えてない気がする。