映画レビュー1373 『アタック・オブ・ザ・キラートマト』
最近SNSは基本タイッツーで予備的にBluesky、って感じなんですが、そのタイッツーの相互さんがこの映画をかなり好きらしく、アマプラに来たのが確か年末近い頃だったんですが「お正月はキラートマト」と盛んに宣伝していまして、元々タイトルだけは知っていたB級映画だしそこまで言うなら、と観ることにしました。
アタック・オブ・ザ・キラートマト
コスタ・ディロン
ジョン・デ・ベロ
スティーヴン・ピース
コスタ・ディロン
デイヴィッド・ミラー
シャロン・テイラー
スティーヴン・ピース
ジャック・ライリー
エリック・クリスマス
アル・スクラー
ゲイリー・スミス
ジョージ・ウィルソン
ポール・サンドフォー
1978年10月4日 アメリカ
87分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)
完全に人をバカにしてる。だがそれがいい。
- 特に説明もなくいきなり人々を襲い始めるトマト
- しかしトマトの攻撃手段は明示されず、ただ被害が広がるのみ
- 徹頭徹尾くだらなく、ツッコミが追いつかない
- 後続のZ級映画たちにも影響を与えたであろうある意味金字塔
あらすじ
いやーすごかったですね。自分が想像していた以上にふざけてました。ちなみにすでに鑑賞から1か月以上経ってしまったんですが、昨日ウォッチパーティで2度目の鑑賞を終えたので記憶はバッチリです。現時点で今年一番観た映画、キラートマト。
ヒッチコックの「鳥」が公開された当時、人々は「鳥が人を襲うとかww」とバカにしていたもののその後笑う者はいなくなったんだぜ…と意味深(でもない)なオープニングが流れたあと、とある住宅で主婦が転がるトマトを見て絶叫、そしてなぜか死亡。
やがて軽快なテーマ曲(一生忘れられない)が流れたあと、農場でトマト vs 軍の死闘がすでに開始するも軍劣勢、無能の大統領(アーニー・マイヤーズ)は問題を秘密裏に解決するべく家庭菜園でトマトを育てるのが趣味のホワイトハウス報道官・リチャードソン(ジョージ・ウィルソン)に「対トマト特殊捜査チーム」の結成を指示します。
チームは変装の達人・サム(ゲイリー・スミス)、元オリンピックメダリストのグレタ(ベニータ・バートン)、潜水の名人グレッグ(スティーブ・ケイツ)+あとで出てくるパラシュートバカ・フィンレター(スティーヴン・ピース)の計4人に、指揮官としてFIA(FBIとCIAを足した架空の組織)の捜査官ディクスン(デイヴィッド・ミラー)が加わり、いざトマト対策に行くぞ、ってことでね、やいのやいのやってますけども。
客を信頼した笑い
いわゆるZ級映画のハシリ…になるんでしょうか。きっと僕のようにタイトルだけは知っている人も多いと思いますが、しかしその「トマトが襲ってくるなんかバカバカしいチープな映画があるらしい」という想像を遥かに超えるふざけた映画でした。
僕も詳しくはないんですが、いわゆるZ級映画には大きく分けて2種類あると思っていて、1つは「プラン9・フロム・アウタースペース」のような「大真面目に作ったのにひどすぎる」タイプ。ただこれはもはや今の時代世に出てくる可能性も低く、実は相当にレアなケースだと思われます。その分価値も高いと言われています。(知らないけど)
もう1つは「必殺!恐竜神父」のように「狙ってひどく作った」タイプ。これは狙ってやるだけにかなり作り手のセンスに左右される映画と言えるでしょう。
僕はこの映画はてっきり前者のケースだろうと思っていたんですが、蓋を開けてみると後者のケースで、なんなら「恐竜神父」にも脈々と受け継がれていると思われるような“色”が感じられて、なるほどZ級映画も奥が深いなと思ったとか思わなかったとかです。
時代が時代なので「ちゃんと作ったけどひどかった」ケースなんだろうと想像していたわけですがまったくそんなことはなく、逆にこの時代にこんなふざけた映画を狙って作るメンタリティもレアな気がしてなんかもういろいろすごい。だって絶対儲からないじゃん。
まーとにかく人を食ったような展開に終止する映画で、のっけから会議室が狭すぎて爆笑、対策チームメンバーのボンクラっぷりに爆笑、いきなり始まるミュージカルシーンに爆笑…と休む暇を与えずに笑わせてくれます。しっかり観れば観るほどいろいろおかしい。
おまけにどうやら風刺もいろいろ込められているらしく、「徹底的にふざけた内容なのにちょっと社会性をまとっている」辺りが本当に人をバカにしていて好きですね。印象操作の一環で「トマトの方が原発より安全!」とかクリティカルすぎるでしょ。
そういうのも含めて考えると、実は「ただバカなことして笑わせに行ってる低レベル映画」ではなく、それなりに知的な笑いの側面も込められてたりするんですよね。ある程度観客を信頼した上での笑いというか。
その辺りもすごく好きですね。ただ悪ふざけしているだけなら好きになれませんが、きちんと客を信頼して笑いを作っている感じ。この辺もまた「恐竜神父」に受け継がれているとかいないとかいう噂です。
主題歌に注意
あんまりここがいいだのなんだの語るものでもなく、ただ「好きそうなら観るべき」という映画でしかないのでこの辺にしておきましょう。
肝心のトマトはただ飛び跳ねているだけの「そのまんまトマト」でしかなく、また序盤唐突にやってきて事故るヘリはリアル事故(死者ゼロ)だったのをそのまま使ったりとまー本当に人を食ったような内容なんですが、そこが好きな人にはたまらないと思います。吹き替えの日系研究者とかね。今やったら絶対怒られるやつ。
そういったこの時代ならではのゆるさも絶妙に味わえるし、文字通り今となっては作れないふざけた映画と言えるでしょう。
これで笑えない人はちょっと心が狭すぎるというか、なんなら悲しくて気の毒な気もします。
とは言え向き不向きもあるとは思うので「みんな観ろ」とは言えないんですが、ただこの手のふざけた映画が好きな人は楽しめると思うのでぜひ一度観てみてほしいところ。
ただ主題歌はマジで頭から離れなくなるので危険です。トマト見るたびに浮かんでくるよ。
ちなみに余談ですが続編もあり、なんと下積み時代のジョージ・クルーニーが主演だそうです。すげー観たい。観たいけど手段が無い。アマプラ頼むよ…。
ジョージ・クルーニーが黒歴史的に手を回して配信させなさそうだけど。
このシーンがイイ!
一番衝撃を受けたのは広告代理店の社長が出てくるシーンですね。もうボケが渋滞していてツッコミが追いつかない。最高。
あと地味にラジオのニュース番組のシーンも好き。内容がなさすぎて最高。
ココが○
古い映画の割にテンポも良く、終始ツッコミ待ちなところがあるので大変楽しめます。いちいち「なんでだよwww」とか「なんの時間だよこれwww」とか言いながら観ましょう。
ココが×
とは言え若干ですが中盤は中だるみもしていた気もします。少しだけ。それでも面白いんだけど。
MVA
結構悩む(誰でもいい)ところなんですが…この人にしましょう。
サム・スミス(ゲイリー・スミス役)
対トマト特殊捜査チームの1人。黒人で変装の名人。
変装というかコスプレで、まったく似てないし演技もひどいんですがそのひどさが最高なんですよ。笑っちゃってしょうがない。
消え方も他のメンバーと違ってちゃんとした(?)理由を感じさせるし、そこも含めてバカにしてる感じが最高でした。