映画レビュー1420 『トップガン マーヴェリック』

せっかく前作観たんだし、ということで早速鑑賞です。

トップガン マーヴェリック

Top Gun: Maverick
監督
脚本
原案

ピーター・クレイグ
ジャスティン・マークス

出演
音楽
主題歌

『Hold My Hand』
レディー・ガガ

公開

2022年5月27日 アメリカ

上映時間

131分

製作国

アメリカ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

トップガン マーヴェリック

むしろこっちが本編だった。

9.5
“不可能ミッション”実現のため、教官としてトップガンに舞い戻る
  • かつて通ったトップガンに教官として戻り、後進のエリートたちを鍛える
  • しかしそのメンバーにはかつての相棒の息子もいて…
  • 前作の資産を活かしつつ、今作が本編と思えるレベルの見事な娯楽映画っぷり
  • この歳で現役感を出せるトム・クルーズならではの一作

あらすじ

公開当時からかなりの評判で繰り返し観に行く人も多かったので、ちょっとハードル上がった状態で危ないかな〜と不安だったんですがまったく杞憂に終わりました。超面白かったです。

ピート・ミッチェル海軍大佐(トム・クルーズ)はいろいろあって今は最先端テスト機のテストパイロットになっております。
しかし時代故か無人機の方に力を入れたい上層部の意向もあり、この計画は凍結…になりそうな状況だったため(歳をとっても)無茶して結果を出そうとした結果、スーパーお高いであろうテスト機はグッバイ。
すでに申し開きのできない状況となってしまったマーヴェリック(改めて書いておきますがマーヴェリックはピートのコードネームです)は飛行禁止を言い渡されてもおかしくない立場となりましたが、このタイミングでかつて「トップガン」でともに研鑽し、今は海軍大将(海軍のトップ)となったアイスマン(ヴァル・キルマー)の強い要望でトップガンの教官職に就くよう要請があり、受諾。
三十数年ぶりに戻ったトップガンでは「某ならず者国家が稼働を目指すウラン濃縮プラント」の破壊作戦が計画されていて、そのミッションに参加する候補としてトップガン卒業生から選りすぐりの精鋭パイロットたちが集められておりまして、その選抜及び訓練の担当としてマーヴェリックが抜擢されましたよ、と。
集められた若手精鋭パイロットの中にはかつてのマーヴェリックの相棒で事故死してしまったグースの息子・ルースター(マイルズ・テラー)もいましたが、彼は父の死の原因であり、訳あって自身の入隊を裏から阻止していたマーヴェリックを恨んでいたため、事あるごとに反発してきて大変ったらありません。
そうこうしているうちに候補者たちもいがみ合ったりとうまく行かない状況の中、刻々と迫る期日。こんなの絶対不可能な作戦、まさにミッション:インポッシブルやで…! とハラハラドキドキの中、果たしてどうなるんでしょうか乞うご期待、ってなもんですよ。

まんまエースコンバット

かつてのエースパイロットが母校に舞い戻って若い連中に教えを説き、ロートル扱いされるが…? 的な王道ストーリーですが、その王道感も含めて最高に娯楽映画していてめちゃくちゃ面白かったですね。もう文句なしです。
メインとなるミッションが「ゲームじゃないんだからこれ絶対無理でしょ」的なミッションなんですが、そのブリーフィングの映像も去ることながら内容がもうめちゃくちゃエースコンバットっぽいんですよ。「ゲームじゃないんだからそこまで不可能でもないんでしょ?」と思って観てたらマジでゲームみたいなミッションだった、っていう。映画「グランツーリスモ」以上に原作ゲーム感すごいじゃん、みたいな。まだ観てないのに適当なことを言っております。
峡谷から上に出ちゃうとミサイルが飛んでくるから谷の間を飛んでね、なんて全作で登場するような恒例ミッションなので「超エーコンじゃん!」と興奮しました。全然こういう話だと思ってなかったので余計に。
そもそもエースコンバット自体、ある程度トップガンから影響も受けてそうなのでパイロット輪廻的な感じでしょうか。パイロット輪廻とは。

一応36年ぶりとは言え続編なのでそれなりに前作の要素が入ってきてはいますが、かなり間が空いたこともあってかその色はだいぶ控え目に感じられます。当然大きな要素となるだろうと思っていた相棒グースの死とその息子の話はメインとして登場しますが、あとは「アイスマン」との関わりだったりセリフだけ登場していた女性が今作のヒロインに抜擢されたり、ぐらいの感じで今作から観てもあまり問題がないレベル。
一方で「あれ間違ってトップガン再生した?」と思っちゃうぐらいにそっくりそのままなオープニングだったり、ところどころ前作のオマージュが登場するのは前作ファンにも嬉しいところでしょう。おそらく一番ニヤッとしちゃうのは終盤の展開なんですが、そこは観てのお楽しみってことでここでは書かないでおきます。

正直お話としてはなかなかあり得ない(そもそも上記の通りミッション自体が嘘くさい)話だし、おそらく戦闘機の挙動等についても現実的ではないんだろうと推測しますが、「うるせえそんなのどうでもいいから食え!」と開いた口に勢いよく娯楽というサンドイッチをねじ込まれたかのようなドストレートな娯楽映画っぷりは久しぶりに「ハリウッドに思いっきり殴られた」感じがして大変気持ちよかったですね。「これだよこれ」感がすごい。映画なんて面白ければリアリティは気にならないんだよの好例すぎる。
同時にいつもであれば「恋愛いらねぇな〜」と思いがちな恋愛フェーズも、80年代のヒット作の続編だからこそアリだな、むしろこれでこそ“あの頃の映画の良さ”にリスペクトしているような雰囲気も感じられて逆に良かったのが自分でも意外でした。
前作で年上相手にヤンチャな恋愛をこなしたマーヴェリックもいいお年、今度こそ本当の幸せを…的なストーリーはこれまた王道ではありますが、いわゆる「中年の星」的な、かつて前作に熱狂した人たちに向けての応援歌のような様相も呈していて、これはこれで“優しい”物語だなと思います。
もちろん「お前はトム・クルーズじゃねーだろ」という無粋なツッコミも世界中で飛び交っているかと思いますが、それはそれ、これはこれなんですよ。こういうのはね。
その人たちの相手だってジェニファー・コネリーじゃないわけで、みんなが等身大の“今”を頑張るためにこの映画に少し背中を押してもらって、歳は取ったけど今は今なりの幸せがあるんだよ、みたいなメッセージを受け取る。そこもまた良いなぁと思いましたね。
もちろんこれはもう制作側の狙いにドンピシャでハマっちゃってるいいお客さんであることは間違いないし、普通に用意された落とし穴に落とされているだけと言えるんですが、でも落とされた人も「落ちちゃったな〜」って言いつつ笑顔なんですよ。もうそれでいいじゃない、っていうね。(何の話)
所詮娯楽映画なんだから一時でもちょっと希望を感じたり夢を見たりして、日常からほんの少しでも浮上できればもうそれはその映画の偉大な価値ですからね。「またドラクエリメイクかよ」みたいな懐古趣味なんかにも近い、あからさまなターゲットに向けたわかりやすいメッセージかもしれませんが、それでもこれだけしっかり作られて楽しめつつちょっと前向きにさせてくれるなら、それはもう最高の一本だと思いますよ。僕はね。
ちょっと嫌な気持ちにされて終わるより良いじゃないですか。明日からもう少し頑張ろうかな、って思わせてくれるなら。もちろんちょっと嫌な気持ちにさせてくれる映画も面白いんですが、でも「ちょっと嫌な気持ちの映画の面白さ」はつまり「ちょっといい気持ちにさせてくれる映画の面白さ」と表裏一体ですからね。どっちもあっていいんじゃないかなと。
くだらない、王道すぎる、こんな出来すぎた話はない…とどれも理解できますが、一方でやっぱりこういう映画もないと世の中味気なさすぎるんじゃないかなとも思うんですよ。
きっとこの映画が刺さらなかったら僕もそう言っていたと思います。ただそれが刺さるぐらいしっかり作ってくれたので、もうそれだけで良かったなと。

結局トム・クルーズのスター性

じゃあなんで“刺さる”ように作れたのかというと…これはもうやっぱりどこまで行ってもトム・クルーズその人のスター性にあるんだと思います。
コロナその他の影響で公開が3年ほど遅れたようですが、当時トム・クルーズは57歳ぐらい。もう昔の映画なら爺の歳ですよ。完全に。
今作では「昇進を拒んで現役にこだわるパイロット」という設定なんですが、まあ相変わらず現役感がすごい。イーサンじゃなくてもすごい。
まあ「トム・クルーズの現役感がすごい」っていうのはもはやお家芸みたいなものなので今さらなんですが、なんで今作においてそれが重要かと言うとこれはもう単純に「前作の主人公を演じた俳優が今も現役バリバリの超一流スターである」というところですよ。つまりは息の長さ。
仮に前作は別の人でもうあまり売れておらず、今作その役をトム・クルーズが引き継いだ…とかだとだいぶ話は変わってくると思うんですよね。「いいけど…うーん」っていう。安直だなぁって思いそう。
ところがご存知の通り、トムクルさんはしっかり前作から今作までの36年間ずっと一線級で活躍している大スターのままなんですよね。だから物語の途切れていた36年間、「マーヴェリックも一線級だった」と言われてもそうとしか思えない、演者と役の一体感が凄まじいんですよ。
やっぱりこの説得力を持たせられる人というのは一握りしかいないし、だからこそ傑作になったんじゃないかなと思うわけです。
比べるのもなんですが、「アイスマン」役のヴァル・キルマーとの差を見てくださいよ。(アイスマン自体はとてもいい役だったけど)
これ前作の主人公がヴァル・キルマーで、そのまま今作も…だったらやっぱりかなり違ったと思うんですよね。っていうかそもそもこの企画自体通っていたのかも怪しい。
長い年月を経て作られた続編に、役そのままのかっこよさで体型も維持しつつ同じ役を演じられるのはやっぱりスター以外の何物でもないなと思うわけです。ほんとに。いやほんと。スターという概念で殴られる映画というか。
なんか彼の映画は毎回そうですが、「いやーやっぱりトム・クルーズ、スターだなぁ…」って感心しちゃうんですよね。この感慨を作り出せる人はそうそういないので、やっぱり大したもんだなと改めて舌を巻きました。

そんなわけでね。
トム・クルーズのかっこよさを改めて見直した映画でした。すげーよほんと。うっかりサイエントロジー入っちゃいそうだよ。絶対入んないけどさ。

このシーンがイイ!

ん〜やっぱり「いくらなんでも出来すぎでしょ〜」と思うんですが…マーヴェリックが1人で飛ぶシーンですね。かっこよすぎるよあれは…。
あと「ここは喋らない方が」的なシーンも良かった。まったく同じこと思ってた。

ココが○

正直前作が(今観ると)イマイチだっただけに、あんまり前作に縛られすぎるとよくないのでは…と思っていたところに「前作要素は極力控え目、でもちゃんと続編」のバランスの良さ。
やっぱり結局「トム・クルーズが引き続き主人公を演じる」以上の続編要素はないわけで、その物語外での説得力を最大限活かした作りはお見事と言う他ありません。

ココが×

やっぱり物語のリアリティだけは欠ける面はあると思います。ミッションもそうだし、ミッションの後もそうだし。
でもそれはそれで娯楽映画としては間違ってないとも思いますね。仮にリアリティのあるミッションにしちゃったらやっぱり地味だろうし面白みに欠けた気がする。

MVA

もはや若手の名優と言ってもいいマイルズ・テラーですが、思いの外グースっぽくてびっくり。いい息子役選びましたね。
ルースター役でオーディションを受けたもののクソ生意気なハングマン役に回ったグレン・パウエルもとても良かった。クソ生意気で。いい場面のはずのドヤ顔まで苛つかせてくれます。
でも結局この人かな…。

トム・クルーズ(ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル海軍大佐役)

トップガンに戻ってきた主人公。
上に書いた通りなんですが、やっぱり「いまだ現役」感の説得力がすべてですね。めちゃくちゃかっこいいし「そりゃマーヴェリックならやりかねないな」と思わせる無茶感もこれ以上無くお見事でした。最初の試験で笑いながらことごとく“生徒”たちを撃ち落としていくかっこよさよ…。
「ただの伝説」であれば対最新機でのドッグファイトで強いのはどうなんだろうと思わせるところですが、ここで効いてくるのがオープニングの「最新機のテストパイロット」という仕事なのかなという気がします。最新情報にも詳しいぜ、っていう。
ただ実際のところパイロットにとって加齢がどのような影響を与えるのかよくわかっていないからこそ納得できた面もありそう。おそらくは体力や動体視力の衰え等で若いパイロットには勝てなくてもおかしくない気もするし…その辺どうなんでしょうね。
まあそういう細かいことを抜きにして「トム・クルーズならやりかねない」感じがやっぱりアッパレだな、って話です。

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