映画レビュー1529 『グランツーリスモ』

この日は特に配信終了が迫っている観たい映画もなかったので、一応観ておきたいと思いつつ様々な理由によって正直あんまり乗り気ではなかったこちらの映画を観ることに。

グランツーリスモ

Gran Turismo
監督
脚本

ジェイソン・ホール
ザック・ベイリン

原作

『グランツーリスモ』
PlayStation Studios

出演

デヴィッド・ハーバー
オーランド・ブルーム
アーチー・マデクウィ
ダレン・バーネット
ジェリ・ハリウェル=ホーナー
ジャイモン・フンスー
メイヴ・コーティエ=リリー

音楽
日本版主題歌

『CLIMAX』
T-SQUARE

公開

2023年8月25日 アメリカ

上映時間

134分

製作国

アメリカ

視聴環境

Netflix(Fire TV Stick・TV)

グランツーリスモ

事実の面白さと映画の出来は別物。

7.0
「グランツーリスモ」激ウマくんが本物のレーサーとして活躍するまでの実話系
  • 日産の「ゲーマーからプロレーサーを作ろうプロジェクト」で採用されたゲーマーの話
  • プロジェクトの選抜過程からレーサーとしてデビュー、結果を残すまでを描く
  • 話自体は面白いものの、映画の作りがあまりにもハリウッド構文すぎてベッタベタ
  • 主人公の存在感が今ひとつ弱いのもネック

あらすじ

まあ予想はしていましたが…「F1/エフワン」を観たあとだとどうしてもね…比べちゃいけないことはわかってはいるんですが。

ウェールズに住むイギリス人青年ヤン・マーデンボロー(アーチー・マデクウィ)は「グランツーリスモ」大好き人間としてバイト代を注ぎ込んでステアリングコントローラを購入、かなりの“上位勢”として周りでは有名なようですが、元プロサッカー選手の父スティーブ(ジャイモン・フンスー)は当然いい顔をせず、ちゃんと将来を考えなさいと心配顔です。
一方日産ではマーケティング担当のダニー・ムーア(オーランド・ブルーム)が「本物志向の強いゲーム“グランツーリスモ”が上手いドライバーたちを集め、優秀な人物をプロレーサーとしてデビューさせる」企画をお偉方にプレゼン。半信半疑ながら「チーフエンジニアを加えること」を条件に承諾され、企画をスタートさせます。
問題のチーフエンジニアは何人もの候補に断られ続けた結果、現在はしがないメカニックとして活動している“元天才レーサー”のジャック・ソルター(デヴィッド・ハーバー)に依頼。当初は他の候補同様にまったく相手にされませんでしたが、彼は所属するチームでの扱いに嫌気が差し一転して承諾。
やがて行われたオンライン予選会的なレースで優秀な成績を修めたヤンを始めとした数人が「GTアカデミー」の門をくぐり、ジャックの厳しいシゴキに耐えながらプロのレーサーになるべくトレーニングを開始しますが…あとはご覧くださいませよと。

ハリウッド構文に襲われる悲しみ

ご存知の方も多いかと思いますが一応ご説明しますと、「グランツーリスモ」というゲームは歴代のプレイステーションで発売され続けている、リアルな挙動とマニアックかつ詳細なカスタマイズがウリのレースゲームです。発売元はPS本体と同じくソニー。最新作はPS5の「グランツーリスモ7」です。ちなみにオープニングでヤンも7をやっていて「おい時代が違うだろ」と野暮なことを思いましたが気にしないで観ましょう。
「グランツーリスモ」というゲームはゲームの歴史においてもかなり革新的なゲームだったと言われていて、それまでのレースゲームと言えば「マリオカート」とか「リッジレーサー」のような、リアルさとは程遠い「ゲームらしいレースゲーム」が主流だったところに超リアル志向を持ち込んでヒットしたものです。
僕は完全に「リッジレーサー」派(いい加減新しいリッジレーサー出しやがれバンナムのクソヤロウが)なので、グランツーリスモは初代と3と7を買いましたがどれもハマる前に投げてます。なぜハマらないのに買っているのか自分でもよくわからないんですが、「今度こそやるか」と買うものの結局やらない、みたいな。
なにせリアル挙動がウリなので高速でコーナーに入ってきてドリフトで抜ける、みたいな現実味のないプレイは許されず、しっかりブレーキを踏んでアウトインアウトで出ていってね、というゲームなのでイマイチ爽快感がないというかストレスが溜まるというか…そんな感じであんまりやってきていません。
が、当然それだけ「リアルであること」を売りにしているゲームだけに、「このゲームがうまければ実際の車の運転も上手いでしょ」という単純な考えでプロレーサーにするプロジェクトが出てきたよ、と。(おそらく実際はもっと深い深謀遠慮があったと思われますが映画では触れられていません)
まあ実際音ゲーが上手ければリズム感はあるはずで、例えばドラムマニアが上手い人にドラムを教えたら上手くなるでしょ…というのは想像がつきます。実際グランツーリスモが上手ければ様々な“勘所”はおさえているでしょう。
が、しかし劇中で描かれるように、実際のレースとなると肉体面もかなり過酷な上に“死に直面する”恐怖を克服しなければならないので、「ドラムマニアからプロドラマー」よりも全然難易度が違うのは明らかです。
ところがそんなウソのような話が本当にあったよすごいよね、というのがこの映画の面白さ。
これ実話でなければ完全に「くだらねえソニーのプロモーションだな」で終わる話なので、やはり実話の強さを感じずにはいられません。
劇中では割とさっくり上手く行っちゃう感じに見えるんですが、やはりこんな「ウソのような本当の話」を実現するには相当な努力があったはずで、ヤン・マーデンボローご本人のすごさ、そしてそのエピソードの面白さは映画化するに相応しいものだと思います。

だが…!
せっかくこんな美味しいストーリーを、いかにもなフォーマットに載せて仕立て上げちゃうハリウッドシステムの残念さが際立つ映画でもありました。
「多分そうだろうな」という気もしていたのが「あんまり乗り気ではない」理由の一つでもあったんですが、一方で監督がニール・ブロムカンプだと知って「じゃあ悪くないかも?」と観たのも事実なんですよね。
ニール・ブロムカンプは割と(期待を込めて)ちょっとひねった映画を撮る人だと認識していたので。
しかし今回はテーマが全年齢対応的な幅広いものにする必要があったためか…はわかりませんが、全体的にベタもベタでガッカリ感が強い作り。
おそらく順位やら個々のエピソードやらはかなり脚色が入っているものと思われますが、その脚色部分が“いかにも”なので全然ノレませんでした。
もちろんこの「ゲームからプロレーサーに」という実話の強さを邪魔するのは本末転倒なので、あまり奇をてらった作りにするのも頂けないとは思いますが…それにしてもあまりにもありきたりな流れすぎてやっぱりイマイチ感は拭えないなというのが正直なところです。
例として若干ネタバレになりますが…彼が事故を起こすレース、もう最初から家族が出てきて「良かったわ〜」みたいなフリをこれみよがしにしてくるので、「このレースで事故りますよ」感満載なんですよ。いわゆるフラグが立ちすぎているレースになっていて。
そしたら案の定事故っちゃってもう目も当てられない。事故にではなく映画に。「はいはい、知ってました」っていう。
そんな感じで様々な部分でハリウッド構文を見せつけてくるので、ある程度ハリウッド映画を観て飽きてしまっている人(おれだぜ)にはなかなかつらいものがありました。もっと面白くできるんじゃないの、っていう。

それともう一点、最初に書いた通り比べたらいけないのはわかってるしこればっかりはこの作品のせいではないものの、どうしても「うおおおおおF1サイコー!!」となった後に観るには純粋に力負けしているだけにつらい。
「実話」という一点を除いて何から何まで負けてる。ブラピも出てない。(当然)
同じレースとは言え世界が違うのでこれまた比べたらいけないのもわかるんですが、それにしてもやっぱり…どうしても比べてしまうのは人の性。
結局「…もう一回F1観てえな…」となるわけです。それだけあっちが良かったということなんですが。
ストーリー的には「F1」もド王道なんですけどね。やっぱり力の入れ方が違うからか…比にならないぐらい迫力もありましたね…。
思うに(F1の方が後発なのでこれもまたフェアではないですが)こっちはもっとゲームとのシンクロを強調した方がオリジナリティが出て良かったのではないかと思いますね。
時折「グランツーリスモの表示が現実に投影される」みたいなシンクロはありましたが、その程度ではなくてもっとゲームからのリソースを活用して活躍しました、みたいな形にするとか。
ただそれはそれで「ゲームに依存」しすぎている感じがして本人も嫌だろうし作りづらいんでしょうが…難しいところですね。

レース映画として今ひとつ

事実として知るには非常に面白い話なので作られた意味はあると思いますが、一方で作られて公開された時点でもう「ゲームのグランツーリスモからプロレーサーになった人がいる」という情報は入ってきてしまうので、悲しいかな映画自体を観なくても作られただけで役割が終わってしまった映画なのかもしれません。言い過ぎだと思いますけどね…。
結局「F1」を観る前に観ろよ、って話なのかもしれません。
ただ「F1」を観たあとでも「フォードvsフェラーリ」は面白いと思うし、やっぱりレース部分以外の、この物語で最も美味しい場所であるはずの「グランツーリスモからレーサーへ」のエピソードの描き方が物足りないのが一番の理由なのかなと思います。
あまりにもこの映画が面白かったらいよいよ「グランツーリスモ7」も本気でやったと思うんですけどね…ステアリングコントローラ買ってね…。
でもあれ、7万とかするんだよね…。ふざけてるよね…。

このシーンがイイ!

やっぱり由来が由来なだけに、ゲームをトレースした演出・シーンはいいと思います。ライン取りが出たりとか。効果音もところどころグランツーリスモだったりしてね。この辺もっとあると良かったね、って。
あと映画でPSのロゴが出てくるのは初めて観ました。

ココが○

エピソードとしては本当に面白いものだし、そういう人がいると知らしめた意味は大きいと思います。

ココが×

映画としてイマイチ…とまで言うと言い過ぎかもしれませんが、要は事実の面白さを差し置いて「よくある映画」の範疇にとどまっちゃってるのが非常に残念。

もう一つ、これは完全に映画のせいではないただの愚痴なんですが…「グランツーリスモ」と言えばやっぱりテーマ曲の「MOON OVER THE CASTLE」だと思うんですよ!? そうでしょ!?
どっかで、最悪エンドロールで流れるはずだと期待していたのにまったく出てこなくて超ガッカリしました。
単純に僕が「MOON OVER THE CASTLE」を作った安藤まさひろのファンというだけなんですけどね…それにしてもね…。
ちなみに日本版主題歌のみ安藤まさひろが“いた”T-SQUAREを起用しているらしいんですが、その辺も中途半端なんですよね…日本限定だし…もう安藤さん脱退してるからね、SQUARE…。おまけにその曲のギターは安藤さんじゃないし。
どうせなら「MOON OVER THE CASTLE」を使えよ、って話です。言うまでもなく「グランツーリスモ」では世界共通で使われてますからね。国ごとに分けなくてもみんなに伝わる、という意味でこれほどまで使われるべき曲も無いと思うんですが。もうそこの時点でセンスがない。

MVA

主人公が主人公の割にどうにも影が薄いというか…これも描き方なんでしょうね、きっと。
ということでこちらの方に。

デヴィッド・ハーバー(ジャック・ソルター役)

チーフエンジニア。鬼教官かつヤンの師匠。
エンディングで最初に名前が出てきたので「えっ、実はジャックが主人公だったの!?」と思ったんですがどうなんでしょうね。それはそれで話がブレるとは思うんですが…。
その辺置いといてさすがに安定感のある演技でお見事でした。デヴィッド・ハーバー結構好き。
あとオーランド・ブルームがあんまり見たこと無いちょっと安い感じの人間でこちらも良かったですね。綺麗さがないオーランド・ブルームって感じで。

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