映画レビュー0347 『フロント・ページ』

久々にBS録画分より。

もはや映画ファンには語る必要もないと言える名コンビ、ビリー・ワイルダー×I・A・L・ダイアモンドコンビの映画ですが、個人的にはこのコンビの映画を観るのは初めてです。

フロント・ページ

The Front Page
監督
脚本
ビリー・ワイルダー
原作
『フロント・ページ』
ベン・ヘクト
チャールズ・マッカーサー
ビリー・メイ
公開
1974年12月17日 アメリカ
上映時間
105分
製作国
アメリカ
視聴環境
BSプレミアム録画(TV)

フロント・ページ

エグザミナー紙の敏腕記者・ヒルディは、恋人であるペギーとの結婚を機に新聞記者を退職しようと考えていたが、編集長のウォルターがそれを許さず、あの手この手で引き止めようとする。そうこうしているうちにある死刑囚が脱走、ヒルディはその現場に居合わせて…。

皮肉たっぷり、名作コメディ。

9.0

なんともこの時代らしい雰囲気で、怒鳴り散らす人たちが主役の暑苦しいコメディですが、皮肉たっぷりなブラック感、結末まで終始ニヤリとさせてくれる脚本のうまさは唸りましたねー。

主人公のヒルディはエグザミナー紙という新聞の敏腕記者で、いわゆる「エース記者」という感じ。でも新聞記者の生活に嫌気が差していて、結婚を機に退職、奥さんの叔父が経営する広告代理店で悠々自適に暮らす予定。

彼はメイン職場だったと思しき記者クラブの仲間たちに別れを告げようと刑務所(?)に併設されている記者クラブへ行きますが、そこで突如銃声が聞こえ、世間を賑わしている死刑囚が脱走。たまたまそこに居合わせたヒルディは、記者根性を捨てきれずに記事を書き始め…というお話。

まずまあとにかく徹頭徹尾、皮肉がきいています。記者クラブの記者たちはずっとポーカーに夢中で他所のネタをパクリ、おまけに平気で脚色してウソを本社に流す始末。市長も署長も選挙目当ての行動原理がバレバレ。

今の時代でもさして変わってない世の中にウンザリもしますが、それはさておき、あちこちでそういう皮肉が出てくるので、割とその手の話題に敏感な人のほうが楽しめるんじゃないかと思います。細かいセリフでもニヤリとさせられるポイントが多く、サービス精神旺盛な“知的コメディ”という感じ。

もちろん普通に楽しめる映画だとは思いますが、「ハングオーバー!」的なコメディではなく、ある程度社会派要素を含んだコメディ映画と言えるでしょう。

物語は「主人公ヒルディが編集長の妨害にもめげず、無事結婚できるのか」というのと、「脱走した死刑囚の末路」の2つを軸に展開します。こういう映画はやっぱりどういうオチで締めるのかな、というのが気になって観ていましたが、最後がもう抜群に良かった。エンドロールで若干「登場人物のその後」みたいなものを語る、昔よくあったパターンの映画なんですが、その後味込みでスバラシイ。

いかにも映画が愛されていた時代の作品といった雰囲気で、いつものパターンで恐縮ですが、個人的にこういう映画は“タマラン”ぞ、と。

舞台はいくつか登場するものの、大部分は記者クラブ内で話が進みます。言ってみれば“ほぼワンシチュエーションコメディ”。前に三谷幸喜がビリー・ワイルダーを敬愛していた的な話を見た記憶がありますが、確かに三谷幸喜の、特に初期作品に観られる印象に近いものがありました。なのでああいう作品が好きな人には馴染みやすいんじゃないかと思います。

ただ、当然ながら世界的名監督ビリー・ワイルダーだけあって、三谷作品よりも知的で完成度が高い印象。(ただしこれは両者の才能の差もあるんでしょうが、それよりもターゲットとする市場の違いの方が大きいような気もします)

もう40年近い前の作品ではありますが、今観ても全然色褪せていないので、コメディが観たいぜ、なんて時にはぜひ。ラストの「そう来たかー!」感を久々に味わえた気がして、ひじょーに満足しました。

このシーンがイイ!

結構いろいろありましたが、一番はやっぱりエンディングでしょうか。ああいうエンディング、好きなんですよねぇ。

ココが○

全体的に非常にスピーディで、まあ本当に飽きさせません。かと言って凝視しすぎて疲れるような内容でもないし、かなりバランスのいい映画のように感じました。観るときの精神状態を選ばないというか。

気合いがいらない、でもそれなりに満腹感のある映画ってなかなか無いので、その辺りの見えないバランスのうまさっていうのはすごいなぁと思います。

ココが×

特にコレと言って思い浮かびませんねぇ。やー、かなりよくできてましたよ。

MVA

ジャック・レモンはさすがですねー。時代的にも役柄的にも、日本で言う植木等のような味がある気がします。ですが、今回はこの人かなぁ。

ウォルター・マッソー(ウォルター・バーンズ役)

ヒルディを引き止めようとする編集長。かなりのクセモノ。存在感もすごくあったし、ジャック・レモンとのコンビも抜群でした。

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